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女性の脳卒中を減らす5カ条(大西睦子)

2014年10月17日 00時09分 JST | 更新 2014年10月17日 00時09分 JST
Yagi Studio via Getty Images

健康的な食事やライフスタイルを心がける女性は、脳卒中リスクを半分以下まで抑えられる可能性が示されました。2014年10月8日、医学雑誌「Neurology」にスウェーデンの研究者らが発表しました。禁煙や体重管理などを複合的に実践していくことがポイントです。寿命を伸ばす効果が数字で示されると、ただなんとなくやるより続けられる気がしてきますね。

女性の死亡原因第3位

脳卒中には、脳の血管が詰まって起こる脳梗塞と、脳の血管が破れて起こる脳出血があります。かつては高血圧に合併する脳出血が多く見られましたが、最近は降圧剤の普及もあって減少し、他方、脂質異常や糖尿病から引き起こされる脳梗塞が増加。国内でも脳卒中の死亡のうち、60%以上を脳梗塞が占めていると言います。

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/seikatu/nousottyu/about.html

厚生労働省のデータによると、脳卒中は1951年から1980年の間は死因のトップでしたが、最近は死亡率が減少。2013年には、がん、心疾患、肺炎に次いで死因第4位でした。ただ、女性だけで見ると、がん、心疾患に続く死因第3位ですし、保健統計を見ても、総患者数は2011年に約124万人(男性62万人、女性62万人)と、心疾患、がんに続く第3位となっています。女性は閉経後、動脈硬化を防ぐ働きのある女性ホルモンが減少して脳卒中リスクが上がるという報告もあります。

http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei13/dl/11_h7.pdf

http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai12/dl/gaikyou24.pdf

http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/11/dl/04.pdf

食事・飲酒・喫煙歴・運動・体重管理がポイント

今回の研究では、スウェーデンの疫学研究に参加した平均年齢約60歳(49〜83歳)の女性3万1696人を対象に、1998年1月1日から平均10.4年間、追跡調査が行われました。

C. Larsson, Agneta Åkesson and Alicja Wolk.

Healthy diet and lifestyle and risk of stroke in a prospective cohort of women.

Neurology, published online October 8, 2014.

DOI 10.1212/WNL.0000000000000954.

参加者は前年に、▽学歴▽体重▽身長▽喫煙歴▽運動▽アスピリン鎮痛剤の使用▽高血圧と糖尿病の病歴▽60歳未満での心筋梗塞の家族歴▽飲酒歴▽食生活、などの350項目にわたるアンケートに回答。その結果が統計的に解析され、健康的な、つまり低リスクのライフスタイルを構成する5つの要素が抽出されました。

1.健康的な食品の摂取:

96種類の食品の摂取頻度を尋ね、各食品について「健康的」から「不健康」までの評価分類ごとに割り振られた点数をもとに「推奨食品スコア」(RFS)を算定。研究者らの脳卒中リスク研究に基づき、RFSが上位50%以内に入っている参加者を、低リスクの「健康的な食事」を摂っているとみなしました。心血管の健康維持によいとされる様々な果物、野菜、全粒穀物、ナッツ類、豆類、低脂肪乳製品、魚が含まれます。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10791502

2.適度なアルコール摂取:

アルコールの種類、摂取頻度、それぞれの摂取量から、年間摂取量を計算。適度な摂取量は、アルコール換算で一日5〜15gとしました。350mlのビールにはおおよそ16.8gのアルコールが含まれていますから、小さい缶でも毎日1缶飲むのは、脳卒中予防の観点からは飲み過ぎの計算です。

http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-02-001.html

3.喫煙歴なし:

低リスクと言えるためには、喫煙歴は皆無であることとされました。

4.運動:

前年の運動歴と心筋梗塞の発生との関連性をあらかじめ分析し、低リスクと言えるためには、一日40分以上のウォーキングやサイクリングに加え、高強度の運動を週に1時間以上、と定義しました。

5.適切な体重指数(BMI):

BMIが25未満であれば低リスクとしました。

BMI=(体重[㎏])÷(身長[m]の2乗)

参加女性のほとんどは、2つないし3つの要素にあてはまりました。また、5つの要素すべてに当てはまったのは589人だけで、一方、一つも当てはまらない人も1535人いました。論文の著者らは、これまで脳卒中のリスクを下げるライフスタイルの個々の要素についての研究は多く行われてきたものの、複数要素の複合的な効果を検証する研究は今回が初めてだとしています。

5カ条そろえば54%リスク減

10.4年間の追跡期間中、1554人に脳卒中が発症しました。そのうち1155人は脳梗塞で、246人が脳出血、153人は未判別でした。5つの要素すべてに該当する女性は、どれにも当てはまらない女性と比較して、脳卒中のリスクが54%も低下しました。脳梗塞の発症リスクだけで見ると62%も低下し、当てはまる要素が多いほど着実に減少しました。一方、脳出血のリスクと5つの要素には特段の関係は認められませんでしたが、研究者らは、潜在的な関連性は否定できないと考察しています。

要素ごとに見た場合は、脳卒中リスクを最も高めるのは喫煙でした。特に喫煙歴のない女性の脳梗塞リスクは、喫煙歴のある女性に比べて17%も低くなりました。また健康的な体重の女性は、過体重や肥満の女性と比較して、脳梗塞リスクが13%以上低くなりました。健康的な食生活の女性も、健康的でない食生活の女性と比べて脳梗塞リスクが13%低下しました。

例外はアルコール摂取と運動です。一日あたりアルコール摂取量が5〜15gの女性は脳卒中リスクが低下する傾向にありましたが、それ以上の摂取量ではリスクが上昇するのはもちろん、それ以下でもリスクはやや高くなることが示されたのです。運動については、「運動が増えるほど脳梗塞が減る」という傾向もやや認められましたが、統計学的には重要な数字とは言えませんでした。

自己管理が大事

ところで先日、約1年ぶりに一時帰国しました。今回は米国の医師らも一緒でしたが、彼らは日本の公衆衛生について非常に驚いていました。というのも、日本は長寿国、ヘルシー大国というイメージだったのが、実際に訪れてみると、タバコの自動販売機、コンビニや駅などで購入可能なアルコール、公共の場での飲酒、ファーストフードや加工食品の普及、痩せ過ぎの女性などを目にしたためです。

日本は、米国と比べて安全で、タバコやアルコールなどの規制も非常に緩く、様々な食品が簡単に手に入る文化です。ですから、自己管理がとても重要となります。是非、低リスクのライフスタイルの5要素を"5カ条"として心に留め、実践をお願いします!

大西睦子
内科医師、ボストン在住。医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月から7年間、ハーバード大学リサーチフェローとして研究に従事。著書に「カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側 」(ダイヤモンド社)。

(2014年10月16日「ロバスト・ヘルス」より転載)