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がんと共に生きる そんな時代の教育

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 がん対策推進基本計画に、第2期から「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」が目標として加わり、「子どもに対するがん教育のあり方を検討し、健康教育の中でがん教育を推進する」となりました。次の学習指導要領の改訂時に、がん教育を取り入れようとする動きもあります。

がん=死は古い

 これまでも一部の学校現場では、がんの教育が行われてきました。かつて私が見学させていただいた時は、小学高学年や中学生を対象に、土曜日の特別授業として、医師がパワーポイントを使って体育館で説明をし、子どもたちからの質問に答えるという形式でした。

 こういった活動は、一見、がんの知識を専門家が子どもたちに解説するためのものとして捉えられがちですが、本質はそこにはありません。

 今の多くの子どもたちは、ネットで検索すればいくらでもがんの情報を得ることができます。しかし情報量が多過ぎ、読解力や洞察力が未熟なうちに情報に触れることで、時に断片的な知識だけ印象に残ってしまいがちです。また、テレビなどで取り上げられる際は、がん=死という設定になっていることが多くあります。がんと共に生きるという視座を得にくいのです。

 一方、医師をはじめとする医療関係者は現在、がん=死とは考えていません。がんと共にどうこれからどう生きるか、その人らしい生き方とは何か考えて治療に取り組んでいます。

 だからこそ、子どもたちが現役の専門家から話を聴くということは、がんに対して広い視野を持ち、バランスの良い考え方をできるきっかけとなります。これからがんに向き合っていく世代にとって、とても重要なスタートになることでしょう。

患者さんの参加も

 最近では、がん患者さんも参加して行われる授業が増えているようです。

 告知すらためらわれていた時代からは到底考えられないことですが、今は、自らがんであることを話される患者さんも増え、がんに対する考え方が変わってきました。がん患者さんこそ、がんと向き合う専門家といえるでしょう。しかし、そうした変化を知らない大人も多くいます。そのため、本当の意味で患者さんの気持ちを汲み取ることができません。また、どう接したらよいのか分からないため、気持ちだけが空回りをしてしまうことがあります。

 ですから、がん教育は子どもだけでなく、大人も一緒に受けるのがよいのではないかと思います。学校で行われるがん教育が基盤となって、まずは保護者に、そして地域の人々にも広く開かれるようになっていくことを期待します。

感情と知識のバランス

 がん教育では、がんとは何かという解説が必須です。そのためには、基礎的な科学知識が必要となります。

 例えば、体は細胞で出来ていて、細胞は分裂して増えるということです。そして、その分裂には遺伝子が関わっていて、遺伝子がコピーされて同じ細胞が出来る、といったことです。さらには、そのコピーの過程でコピーミスが絶えず起こっており、通常ではミスはすぐに修復される、といったことです。

 それらを知った上で、仕組みに何らかの異変があり、がんになっていくということを理解する必要があります。自分で異変を知ることができないと分かってこそ、早期発見のために検診を受けることの必要性も納得がいきます。

 しかし、これらの仕組み自体を学習するのは保健ではなく理科で、しかも中学で学習することになっています。基本的に学校教育というのは、その学年までに学習していない分野だと、総合学習でも取り上げられないのが普通です。がん教育も同じように考えると中学生まで取り上げられないことになります。

 それでは遅いということで、小学生からがん教育を始めた場合、がん教育においては、先に学んだ科学知識が後ほどの理科の授業で出てくることになります。私はそれでもよいと思います。先に知っていた断片的な知識が、授業をきっかけに自分の頭の中でつながって取捨選択されていくことこそ、本当の学習ではないかと考えます。そして、患者さんへの配慮といった感情を先に学ぶことで、科学知識とバランスの取れた理解や行動へつながっていくのではないでしょうか。

 これは、がんに限らず、健康や医療全般に言えるのですが、大人にも必要なことです。断片的な新旧の知識を時には整理し、きちんとつなぎ合わせる機会を持ちましょう。

 そして、科学知識だけでは生き方を決定できません。そこに個々の感情をうまく融合させることで、病気と向き合った生き方を考え、病気になっても生きやすい社会を、みんなでつくっていきたいものです。

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(2014年11月号「ロバスト・ヘルス」より転載)

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