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新年の抱負、"実現させる秘訣"は?(大西睦子)

2014年01月09日 00時46分 JST | 更新 2014年03月10日 18時12分 JST

「今年こそ痩せる」「禁煙」など、新たな目標とともに新年を迎えた方も多いのではないでしょうか。「言うは易し、行うは難し」は世の常。それでも目標達成の"秘訣"があるとしたら・・・? 抱負にちょっとした修正を加えるだけのようですから、今からでも間に合います。今年こそ自分の殻を打ち破りましょう!

あけましておめでとうございます!今年もどうぞよろしくお願い致します。2014年という新たな年を迎えて、多くの方が新年の抱負を立てられたことと思います。でも抱負を達成することって、結構大変ですよね。米国のニュース雑誌『Time』によると、「もっとも挫折する新年の抱負」ランキングは以下のとおりです。

1. 減量して健康的になる

2. 禁煙

3. 何か新しいことを学ぶ

4. ヘルシーな食事にして、ダイエットをする

5. 借金から抜け出し、節約する

6. 家族と過ごす時間を増やす

7. 新しい場所に旅行をする

8. ストレスを減らす

9. ボランティア活動をする

10. アルコールの量を減らす

いかがでしょうか?昨年のみなさんの抱負が、このリストの中にありませんか?そこで、"今年こそ抱負を実現させるための秘訣"を伝授させて頂きます。それは、

「具体的に限定した目標より、漠然とした目標を設定した方がいい」

というもの。米国スタンフォード大学経営大学院のババ・シフ教授らが、雑誌『Psychological Science」に、成功の秘訣として報告したものです。意外に思われた方も多いでしょうか? 詳細を見てみましょう!

Himanshu Mishra, Arul Mishra and Baba Shiv

In Praise of Vagueness: Malleability of Vague Information as a Performance Booster

Himanshu Mishra, Arul Mishra and Baba Shiv

doi: 10.1177/0956797611407208 Psychological Science April 2011

多くの人は、「具体的な情報を知れば、パフォーマンス※1が向上し、目標が達成できる」と信じています。近頃では実際、様々なテクノロジーの進歩のおかげで、私たちは高精度の情報をすぐに知ることができます。例えば、新しい体組成計(体脂肪計)は、体脂肪率※2、内臓脂肪※3や筋肉量などを測定できますし、他にも摂取カロリー、万歩計など、様々なデータをすぐに数値化できます。ところが、ババ•シフ教授らは、3つの研究の結果、「目標に向かってモチベーション※4が活性化されているときは、正確な情報よりも、柔軟性のある曖昧な情報の方が、よい結果を生み出す」と論じています。教授らの3つの研究(知力、体力、減量)とはどのようなものだったのでしょうか?

研究1:知力

まずプレ実験として、38人の参加者に同じサイズのチョコレートを与え、「1gのココアは知力を向上させるのに十分なフラバノール※5が含まれている」という情報を伝えます。参加者を2つのグループに分け、グループ1の参加者には、「あなたたちが受け取ったチョコレートは、ココアが正確に1g含まれている」と伝えます。一方、グループ2の参加者には、「ココアが0.5−1.5gの範囲で含まれている」と伝えます。その上で、各参加者が「チョコレートの摂取からどれだけ知力向上を期待するか」を評価します。その結果、グループ2の参加者の方が、グループ1より期待度が強いことが示されました。

次にいよいよ本実験として、106人の参加者をランダムに2グループ(ココア含有量が「正確に1g」と「0.5−1.5g」)に分け、その情報とともにチョコレートを摂取してもらいます。その後、ニンテンドーDSの脳年齢ゲームをプレイしてもらい、チョコレートでどれだけ知力が改善するか調べました。その結果、グループ2の参加者は、より知力テスト向上を認めました。

研究2:体力

研究1と同じような手法を用いた、体力に関する調査が行われました。参加者は、ケンフェロール※6と呼ばれる天然の栄養素が含まれているフルーツジュースを摂取します。ケンフェロールは、筋力や身体能力を高めると言われています。

まず参加者137人を2つのグループに分け、グループ1の参加者に、「ジュースにはケンフェロールが正確に1g含まれている」と伝えます。一方、グループ2の参加者には、「ジュースにはケンフェロールが0.5−1.5gの範囲で含まれている」と伝え、飲んでもらいます。その後、137人の参加者全員の握力を測定しました。握力測定器に加えられた力の大きさと持続時間は、接続されたコンピューターに記録されます。そうしたところ、グループ2の参加者は、より多くの力を発揮しようと頑張りましたが、結果は両グループで変わりはありませんでした。

研究3:減量

研究3は、漠然とした情報が、食べ物などの外的要因よりも、健康・身体測定結果など内的要因に関するものであっても、同じくパフォーマンスに影響するかをテストするために行われました。

参加者41人は3週間、週に1回の健康測定に参加し、研究者らは、その結果を「BMI※7をベースに計算されるホリスティックヘルス指数」という値に置き換えます。毎回、41人の体重や体内水分量などの測定値がコンピューター入力され、個別の指数結果を得ます。参加者は、「ホリスティックヘルス指数は近年、BMIに代わって提唱されている指数で、個々のライフスタイルの健康度を測るものであること、今回はその妥当性をテストする研究だ」と告げられています。毎回、グループ1の参加者には正確な値を、グループ2の参加者には±3%の範囲の値が告げられ、。加えて、最も理想的なホリスティックヘルス指数の値(グループ2には±3%調整したもの)との比較も報告されました。

3週間後、グループ2の参加者は、モチベーションが最大に活性化され、グループ1の参加者に比べて体重が減りました。ただし、すでに健全なホリスティックヘルス指数の参加者では、両グループに減量効果の差はありませんでした。

以上、この3つの研究を通し、数値にこだわるよりも、漠然とした目標を立て、柔軟性や適応性を備える方が、モチベーションも上がって結果に結びつくことが示されました。摂取カロリーの計算や徹底した体重管理は、健康的なライフスタイルあるいはダイエットにとって、必ずしも得策ではないようですね。

ですから、例えば「2月末までに体重を3キロ減らす」という目標より、日々の食生活や身体活動の問題点を考え、ライフスタイルを改善して、「夏頃には体重が2キロから3キロくらい減ったらな」という方が、より実現しやすい方策というわけです。その方が、途中で失敗した場合にも失望してやる気をなくすこともなく、原因を考えて試行錯誤しつつ、再挑戦できますよね。

まだまだ2014年は始まったばかりです。今からでも新年の抱負を修整するのは遅くありませんよ!

※1...能力。機能。性能。

※2...体内に含まれる脂肪の重量の割合。

※3...腹筋の内側、腹腔内の内臓の隙間に付いた脂肪のこと。血管に入り込みやすく、生活習慣病の危険因子により強い関係があるとされる。ホルモンの関係で女性よりも男性に蓄積しやすく、加齢とともに、より蓄積しやすくなる。

※4...動機づけ、やる気。人が一定の方向や目標に向かって行動し、それを維持する働き。

※5...フラボノイドの一種である天然フラボノールの一つで、お茶・ブドウ・赤ワイン・リンゴ・ココア製品などに含まれる抗酸化物質。認知症のリスク軽減との関係が示唆されている。脳の神経細胞を損傷から保護し、脳の血流や代謝を改善するなど、脳の組織と機能に作用している可能性が言われている。

※6...フラボノイドの一種である天然フラボノールの一つで、茶、ブロッコリー、グレープフルーツ、キャベツ、ケール、豆類、トマト、イチゴ、ブドウ、メキャベツ、リンゴ、その他の植物から抽出される。疫学研究ではケンフェロールを含む食品の摂取とがん、心血管疾患といった疾患の発生リスクの低減に関係することが報告され、多くの前臨床研究で、抗酸化、抗炎症、抗微生物、抗がん、心保護、神経保護、抗糖尿病、抗骨粗鬆症、エストロゲン/抗エストロゲン作用、抗不安、鎮痛、抗アレルギー活性などが示されている。

※7...・Body Mass Index。身長からみた体重の割合を示す体格指数で、「体重(kg)÷身長(m)の2乗」で求められる。ただ、WHOでは25以上を「overweight」、30以上を「obese(肥満)」としているのに対し、日本肥満学会ではBMI=22の場合を標準体重としており、25以上を肥満、18.5未満を低体重としている。

大西睦子
ハーバード大学リサーチフェロー。医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月からボストンにて研究に従事。

(2014年1月9日ロバスト・ヘルス「新年の抱負、"実現させる秘訣"は?」より転載)