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昔ながらの食育が子どもの健康を支える!

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お子さんに「食育」を実践されている方は多いと思います。カリフォルニア州立大学と新潟大学の研究者らはこのほど、家族と食卓を囲む昔ながらの日本の食事が子どもの健康につながっているのではないか、と医学雑誌「Global Health Promotion」に報告しました。地域あるいは日本の伝統的な食事、家族やお祝いの食事、そして食に対する感謝の念は、グローバル社会においても子どもの健康を支える大切な文化と言えそうです。

子どもの肥満率低い日本

2010年、5歳以下の子どもの肥満人口が世界で4200万人を超えました。いわば子どもの肥満のグローバル化であり、食品産業システムの欧米化や、社会およびライフスタイルの変化が背景にあると考えられています。その中にあって、日本は子どもの肥満の予防に成功している国の一つです。WHO(世界保健機関)の基準によると、OECD(経済協力開発機構)加盟の先進国の平均では子どもの体重過多や肥満の割合が男子22.9%、女子21.4%なのに対し、日本では男子16.6%、女子14.4%にとどまっています。
http://www.oecd.org/health/health-systems/49716427.pdf

一般に社会・文化資源を理解することは健康にプラスの影響を与えるだろうと言われており、地域の文化や社会の特徴を知ることで子どもの肥満につながる要因を減らそうという取り組みも提唱されています。
http://www.abcdinstitute.org/publications/basicmanual/
http://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/15575330903001430#.VCocqjpxnmQ

子どもの肥満予防につながる日本の社会・文化資源について理解することは、他の国においても健康的な食事を推進する政策やプログラムの参考になりそうです。

農業地帯の母親に意識調査

今回の調査では、三重県の農業地帯に住む3歳から5歳の子どもの母親15人に対し、健康的な子どもの食事と生活に対する考え方と、グローバル社会の中で食育を実践していくことへの認識が調査・検証されました。

Keiko Goto, Chihiro Ominami, Chunyan Song, Nobuko Murayama and Cindy Wolff.
Globalization, localization and food culture: perceived roles of social and cultural capitals in healthy child feeding practices in Japan.
Global Health Promotion 2014 21:50.
DOI: 10.1177/1757975913511133.

対象地域は天候が穏やかで平地が多く、人々は米や野菜、果物、畜産、花などバラエティ豊かな農業を営み、主な収入源としています。以前の調査で、日本の地方に住む人々は食文化の継承を非常に重要視しているとの推察を得ていたことから、都市部でなく農業地帯の町が選ばれました。母親たちの年齢は22歳から39歳で平均33歳、学歴は中卒から大卒までまちまちで、5人が専業主婦、残る10人はパートタイムもしくはフルタイムで働いていました。3家族が子どもは1人で、残る12家族は子どもが2人以上、また9家族が核家族で、6家族が大家族でした。

対象者には30分の自由回答インタビューが行われました。グローバル化や食文化、食育に関して、▽子どもに食べさせたい食品・避けたい食品▽食育の情報源▽食育の実践▽地元食材・輸入食材に関する認識、などの質問が文献を元に作成され、事前に栄養学と子どもの発達に関する専門家の監修を受けています。

調査の結果、日本あるいは地域で受け継がれた食文化と、家族等のサポートを始めとする子育て環境が、食育に大きく影響を与えていることがわかりました。

地元食材の和食にプライド

母親たちが子どもに食べさせたいのは、米を中心とした一汁三菜、肉より魚の多い昔ながらの食事で、特に、地元の旬食材を活かしたシンプルな「粗食」を良しとしていました。伝統的な和食こそ健康食と考え、文化的アイデンティティを見出し、プライドを持っていることも分かりました。

日本の伝統的な和食が健康に良いことは、これまでの数々の研究からある程度示唆されています。例えば野菜が多く、総じて低脂肪です。とりわけ動物性脂肪が少なく、逆に青魚に多く含まれるオメガ3系不飽和脂肪酸に富んでいます。ただ、研究者らは、和食の健康効果を明らかにするには、特定の食品や別の食品との組み合わせの影響などさらなる詳細な研究が必要である、とも言及しています。

一方、大半の参加者が「グローバル化」という言葉には馴染みがなかったものの、輸入食品は健康的でなく子供に適していないと考えていました。ファーストフードや脂肪分・糖分の多いスナックに加え、輸入食品には食品添加物が多く含まれるイメージがあるためです。添加物を気にかける傾向は、参加者の母親世代よりも強まっていました。対比的に、国産の農作物や国内製造の加工品をより好ましく感じており、食品表示に注意を払い、原材料や産地を確認するという人も多く見られました。

家族やコミュニティーがサポート

料理の内容のみならず食文化も母親・父親の両親から代々受け継いでいくことが重視されていました。子どもたちは、食事中は食事に集中し、テレビを見ずに食事と会話を楽しむ、姿勢良く座る、途中で立ち歩かない、肘をつかない、といったテーブルマナーや、食べ物あるいは作ってくれた人への「いただきます」という感謝の気持ち、お米など食べ物を残さないことを教わります。そうした食事中のしつけを通じて子どもたちの社会性を伸ばすにあたっては、祖父母と食卓を囲むことも重要と考えられていました。

母親たちは、自分や夫の両親からの情報を最も信頼し、家庭菜園による新鮮な野菜・米の提供、食事の準備、子どもたちへの食材教育、共生といった実質的な部分でも、家族のサポートを重視し、感謝しています。また、両親が夕食やおやつの用意をしてくれるおかげで、子どもたちが加工食品でなく手作りの料理を口にでき、ファーストフードやスナック菓子ではなく、大学芋など自然なおやつを食べられるとしています。

一方、自分や夫の両親と離れて暮らす母親たちは、近所の仲間と新鮮な素材を共有しあうなど、地元コミュニティーのサポートを得ていました。人気のスーパーマーケットには地元野菜コーナーも設置されていると言います。

保育園・幼稚園の給食も、食育に貢献していると認識されています。子どもが新しい食べ物に挑戦する機会を与えてくれ、加えて子ども同士が影響を与え合うことも、食習慣を形成する重要な要素だとしています。

心通う食卓にしよう!

今回、母親たちからは食品の栄養価やヘルシーさについてのコメントは少なく、研究者らは、食育においては社会性の育成や食への感謝といった社会・文化的価値観を反映した食卓マナーが重視されている、と考察しています。 これは、欧米の「マインドフル・イーティング」の考え方にも通じるところがあります。食べ物に正面から向き合い、五感をフルに働かせて心から堪能する、ということです。最近の研究では、マインドフル・イーティングの実践が、肥満の治療や予防につながると報告されています。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21130363
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22243980

一人きりでなく誰かと一緒に食事をすることは自ずと、栄養の偏りを防ぎ、早食いを避けることにつながります。それが肥満や不健康な食事・行動を防ぐ、との研究報告もあります。
http://www.nara-edu.ac.jp/CERT/bulletin2007/b2007-R18.pdf
http://jag.sagepub.com/content/19/4/405.abstract
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14550316

ただ現実には、今日の日本で昔ながらの食育を徹底するのは大変です。特に都市部では、大家族でテーブルを囲む機会は多くありません。食糧自給率も低下していますから、輸入食品を完全に避けるのは困難ですし、それらすべてが悪いわけでもありません。問題は、輸入であろうと国産であろうと、加工食品やファーストフードなどに依存しすぎることです。ぜひ栄養バランスを考えて、新鮮な食材を取り入れつつ、料理を楽しんでみてください。もし忙しくて加工食品やファーストフードを利用する場合も、お子さんと心を通わせながら感謝とともに食事をいただく姿勢を、どうか忘れないでくださいね。

大西睦子 内科医師、ボストン在住。医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月から7年間、ハーバード大学リサーチフェローとして研究に従事。著書に「カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側 」(ダイヤモンド社)。

(2014年10月3日「ロバスト・ヘルス」より転載)

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