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日本の若者は海外移住すべきか?/ベトナム訪問記(2)

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炎上して手がつけられなくなったプロジェクトに送り込まれた。転職を考えたけれど、3年間ずっと入りたかった会社にはお祈りされた。だから会社をやめて、世界を旅することにした。

こうして水嶋健(みずしま たける)さんは日本を飛び出した。現在は「ネルソン」というハンドルネームでWEBマガジンを主宰している。取材と執筆で多忙をきわめるネルソンさんと、今回の旅でお会いすることができた。

     ◆

ネルソンさんが運営しているのは『べとまる』というサイトだ。

ベトナムの「現在(いま)」を面白おかしく紹介するWEBマガジンで、ホーチミン在住の日本人の間ではよく知られている。最近では、街を歩くと「ネルソンさんですよね?」と声をかけられることも珍しくなくなったそうだ。

記事の内容はベトナム文化を伝えるマジメなものから、カラダを張ったネタまで幅広い。ネルソンさんの体当たりな取材が魅力的なサイトだ。

たとえば、こちらの記事:

テト(旧正月前)、道端に出没する書道家に、べとまるの新ロゴを書いてもらった。

ベトナムは、中国、日本、韓国と並ぶ「漢字文化圏」だ。古くは漢文で記録を残していたし、現在でもベトナム語の7割は漢字表記が可能だという。日本に和製漢字があるように、ベトナムにも「チュノム」という独自の文字が編み出された。

しかしチュノムには、一つだけ重大な問題があった。

難しすぎたのだ。

日本の仮名文字や韓国のハングルのような表音文字は、ベトナムでは発明されなかったらしい。チュノムは一般庶民には普及せず、現在使われている文字体系は18世紀の植民地時代にフランス人が発明したものだ。アルファベットを(単語ではなく)音節ごとに分かち書きする表記法は、ベトナム語の特徴によく適しているという。日常生活で漢字を使うことは無くなった。

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しかし、テト(旧正月)は別だ。

毎年盛大に祝われるテトでは、漢字を使った掛け軸や絵画が家々を飾る。ベトナムには今でも書道家がいて、そういう縁起物を作っているのだ。男たちが筆と墨を手に道端にずらりと並ぶ姿は壮観である。ベトナム語を──つまりアルファベットを毛筆で書いたものも多い。

で、彼らベトナムの書道家に「べとまる」のロゴを書いてもらったレポートが上掲の記事。ベトナム人読者を増やすためにベトナム語のロゴを作る──はずが、いつの間にか脱線していき、なぜか日本のひらがなをベトナム人書道家に書いてもらうというおかしな状況に。さて、その結果は……?

もう一つ記事を紹介しておこう:

ベトナムでダチョウに絶対乗る方法

ホーチミン郊外の公園でダチョウに乗れるという情報を仕入れたネルソンさん。さっそく仲間を集めて乗馬ならぬ「乗ダ」に出かけるのだが……。

この記事は私が説明するより、直接読んだほうが面白さが伝わると思う。前述の「書道家」の記事がベトナムの文化を伝えるものだとしたら、こちらの記事は思いっきりカラダを張ったネタ記事だ。爆笑必至。

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日本脱出以前、ネルソンさんはTwitterで大喜利を主催していたそうだ。まだ日本語のハッシュタグが使えなかった時代に、である。Twitter大喜利の歴史には、黎明期を支えた人間として名前が刻まれている。

ツイッターにおける大喜利アカウント発展の歴史(暫定版)─NAVERまとめ

「なんでやねん」に次ぐ2080年のツッコミをTwitterで考える─週刊ASCIIデジタル

最終的にはネルソンさんのニセモノの「ネリソン」さんや「ネレソン」さんまで登場する事態になった。このTwitter大喜利時代にネットを通じて知人が増えていき、日本脱出後はまず、そうやって知りあった人々に会いに行ったという。

中国では大喜利の仲間と顔を合わせ、ロンドンでは現地の大学生にガイドをしてもらった。地球を半周ほどしたあと、ベトナム・ホーチミンにたどり着いた。「ここで働かないか」と誘われ、ベトナムへの居住が決まった。

紆余曲折あって、現在では誘われた仕事はしていない。が、経済発展の華々しいこの国で、ネルソンさんは様々な商売に挑戦している。直近では、クラウドファンディングのCAMP FIREを利用して「べとまる」のベトナム語化&リニューアル資金を募る予定だそうだ。短いインタビューのなかでいくつかのアイディアを拝聴したが、いずれも一言聞くだけで「面白そう!」と感じさせるものだった。

「最後に、日本の同世代や若者に向けて何かメッセージはありますか?」

「日本の、ですか?」

ネルソンさんは面食らったように首をかしげた。

「たとえば海外に移住したほうがいいとか、そういうお考えはお持ちですか」

前日にお会いした川村泰裕さんは、ベトナムに来て視野が開けたとおっしゃっていた。きっとネルソンさんも同じようなことを感じていらっしゃるに違いない。もしかしたら「日本の若者よ国外脱出せよ!」みたいな刺激的なセリフを聞かせてもらえるかもしれない。山っ気たっぷりに私が訊くと、相手は苦笑した。

「いいえ、みんなが国外移住すべきだなんて思いませんよ」

ネルソンさんが聞かせてくれた商売のアイディアのいくつかは、ベトナムでなくてもできるものだった。むしろ日本でしかできない、日本も捨てたもんじゃないと思わせてくれるアイディアも混ざってた。

「大切なことは」ネルソンさんの口調は穏やかだった。「海外に出るかどうかじゃない、視点を切り替えられるかどうかだと思います」

※あわせて読みたい
テトを暇つぶせ!べとまる厳選記事・ネルソン身体張り過ぎ編─べとまる
CAMP FIRE Crowdfunding Platform

(2014年2月4日「デマこいてんじゃねえ!」より転載)

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