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「おっぱい100日戦争」ぼっ発! 出産直後、母には新たな戦いが待っていた

生まれたばかりの我が子に「おっぱい拒否」された私。どうしたらいいの……

2018年01月15日 16時19分 JST | 更新 2018年01月15日 16時38分 JST
徳 瑠里香

子育てには悩みが尽きないと言うけれど、母になって私が一番に直面したのは「おっぱい拒否」だった。

前回の記事:どんなお産も命がけ。私は帝王切開で、我が子と出会うことを選んだ。

帝王切開で出産を終えた翌日、ふにゃふにゃ柔らかくて驚くほど小さな赤ちゃんは、まだ目も見えないのにおっぱいをぱくっと咥え吸い付いた。生存本能なのか、一生懸命母乳を吸う姿に感動さえ覚えた。

授乳を終えた後は満たされて頬の筋肉がゆるみ一瞬だけ微笑みを浮かべ、眠りにつく。なんともかわいくて愛おしい。帝王切開での産後の痛みが押し寄せるなか、我が子と触れ合える授乳の時間だけが至福のときだった。

ところが術後3日目、麻酔を打った穴から髄液が漏れ出るという事態が起こり、激しい頭痛に襲われ、赤ちゃんのお世話もままならなくなってしまった。助産師さんに我が子のお世話を任せ私はできる限り安静にすることに。

術後5日目になって穴も塞がったのか頭痛も治まってきたので、母児同室となり本格的に赤ちゃんのお世話が始まった。しかし戻ってきた我が子は、かつてのようにおっぱいを吸ってくれない。首を横に振り、乳首をくわえようとしない。え、拒否してる!? 動揺した。

様子を見に来てくれた助産師さんが我が子の頭をがっしり持っておっぱいに突っ込んだり姿勢を整えてくれたり、サポートを得てなんとか授乳。その間我が子は気の毒になるほど泣き叫んでいた。3時間ごとの授乳の度にギャン泣きして拒否するので、私も泣きたくなった。

なぜこんなことに......。髄液が漏れ出る頭痛に悩まされている間、可能な限り授乳はしていたものの、我が子はほとんど哺乳瓶のミルクで過ごしていた。母乳より出もよく楽な姿勢で飲めるミルクに慣れ、「乳頭混乱」を起こしてしまったようなのだ。

初乳では助産師さんに「赤ちゃんも上手に吸ってくれるし、お母さんのおっぱいも出るし、優秀だね〜。いい感じ」と言われていたというのに。母乳は出るのに飲んでくれないことがあるなんて。妊娠・出産に続き、子育ても想定外の連続だ。

この「おっぱい拒否」は退院後さらにエスカレートする。授乳の時間、乳を差し出してもくわえようとしてくれず、身体を反って真っ赤な顔でギャン泣きし、首を横に振って明らかに拒否。小さな怪獣が現れる。

徳 瑠里香

乳は準備万端でポタポタ滴り落ちてくるので、なんとか飲ませようと嫌がる我が子の小さな口に乳首を突っ込み、1時間ほど格闘するも心が折れて、ミルクを調乳するとすごい勢いで吸いつき、次第に穏やかになり満たされた顔をする。ミルク仏様に変身。

徳 瑠里香

ミルクに敗北し、行き場を失くした我がおっぱいはパンパンに張って痛む。母としての存在を否定されたような気がして心も傷つく。産後の回復もままならない状態での眠れない日々は身体に響く。

昼夜関係なく2〜3時間ごとの授乳が毎回、乳を差し出す ⇒ 泣き叫ぶ ⇒ 搾乳して哺乳瓶で母乳を与える ⇒ 泣き止まない ⇒ ミルクを調乳する ⇒ 唄いながら歩き回ってあやして腕の中で寝かしつける ⇒ 完全に寝たらそっと腕を抜き搾乳器と哺乳瓶の煮沸(当時は鍋でお湯を沸かしていた)...という塩梅。

授乳前に替えたオムツをまた替えなきゃいけないこともあるし、尿や便が漏れて肌着やシーツを洗わなきゃいけないときもある。驚くほどあっという間に3時間が過ぎ、うとうとしたところで、次の授乳の時間がやってくる。毎日ほとんど眠ることができなかった。

1週間も過ぎる頃にはさすがに限界がきて、おかしくなりそうだった。ホルモンの崩れもあるのかもしれないけど、リアルに眠れない日々は心と身体を蝕む。 

里帰り出産だったため実家で、沐浴や寝かしつけを交代してくれるなど、家族はサポートしてくれていたけれど、問題の元凶である乳は私にしかなく代わってもらうことはできない。

それでも、我が子が泣き叫んで途方に暮れていた夜中に、隣の部屋に寝ていたおばあちゃんが起きてきて、「まあ、元気な子だ!」と笑ってくれた時には救われた。おかげで一緒に笑うことができた。

離れてはいたけれど夫には常にLINEで状況を共有していたし、友だちが遊びに来て話を聞いてくれた。誰かが近くにいて声をかけてくれるだけでも心の負担が軽くなる。後に妹には「あの時のお姉ちゃん、性格違ったよね」と笑われたけれど。一人だったら本当にノイローゼになっていたと思う。

徳 瑠里香

はじめは原因も理由もわからなくて、スマホの検索画面は「赤ちゃん おっぱい 嫌がる なぜ」がデフォルトで、同じ悩みを抱える人たちのブログを読んで、専門家が書いた本も買って、情報を集めあらゆる解決策を試した。

母が買ってきてくれた「一番高いのにしてみた」というミルクはどうやら+アルファの味付けがなされているらしく、我が子はその味が気に入っていたようだった。高級ミルク(800g缶)は健康志向ともったいない精神を持ち合わせたおばあちゃん(81歳)に献上し(飲んでいるかはわからない)、病院で飲んでいたミルクに切り替えた。哺乳瓶も授乳の訓練用に作られたものに変えた。はじめはその哺乳瓶でミルクと母乳を混ぜて、味を慣らしていき、次第に母乳オンリーに。その間、米やひじきが良いと言われれば、それも試した。そして乳頭保護器を使ってなんとか乳首をふくませ、吸い出したところで我が乳首にすり替えた。

母乳神話を信じていたわけではないし、なにもそこまでしなくてもミルクに切り替えてしまえばよかったのだけど、胸が張って白斑(乳腺の出口が詰まって乳首にできる白ニキビのようなもの)が痛く、その解決策は授乳するしかないと言うし、毎回搾乳するのもミルクを調乳するのもなかなか面倒だし、どうせ出るなら乳を直に飲んでもらいたい。今思うと、産後のホルモンの影響もあって、ただ意地になっていただけのような気もするけれど。

1カ月が過ぎる頃、友人に薦められて授乳の支援や指導をしている助産師から母乳マッサージを受けた。「おっぱいには何の問題もなさそうだけどねえ」とゆっくりと力強くマッサージを施してくれた助産師は、その後私たちの授乳を見て「おっぱい拒否」の原因は我が子の「巻き舌」にあると言った。

我が子は巻き舌で(泣くとさらにそれが激しくなる)その下に乳首が入ってしまうため上手く吸えないのだという。アドバイスを受けて乳首をぐっと上の方へ差し込み、舌に乗せるとたしかに我が子は一気に吸い付いてくれた。

来る日も来る日もおっぱいのことを考えてきた私は、「え、そんなこと !?」と拍子抜けした。ネットや書籍の情報ではたどり着けなかった答えだった。情報は溢れているけれど、赤ちゃんにも個性があるから、他の赤ちゃんの解決策が我が子に通用するとは限らない。だからこそ子育ては一筋縄にはいかないのだ。

「巻き舌でおっぱいが上手くくわえられないだけだから、訓練していい位置を見つけられれば必ず飲めるようになる。お互い慣れよ!おっぱいが定着するには100日はかかると言われているから、とにかく根気よくね!」

原因がわかっただけでも目の前がぱっと明るくなり、100日はがんばってみようと腹をくくった。上手くいく時もあったけれど、なかなかいい位置が見つけられず、相変わらず泣き叫んだので、我が子も私も不憫に思うことが何度もあった。それでもミルクにも頼りながら、根気よく、赤ちゃんの小さな口におっぱいを突っ込み続けた。

結果、2カ月を過ぎる頃にはだいぶ母乳に落ち着き、授乳の際に泣き叫ぶこともなくなった。母乳にもミルクにもそれぞれメリットがあるのでこのまま混合でいこうと思っていたけれど、100日経つ頃には逆にミルクを飲まなくなって完全母乳に。拒否されていた日々が嘘に思うほど、我がおっぱいは赤ちゃんにとって生命線となる食料となり、安心材料になったのだ。こうして我が子と私の「おっぱい100日戦争」は幕を閉じた。

もちろんそれで子育てが楽になるわけではない。我が子の成長に合わせて次の悩みが顔を出し、別の戦いが(時に同時並行で)はじまる。

ようやくおっぱいが難なく飲めるようになったと思えば、今度は夕方の寝かしつけの前、身体をよじって泣き叫ぶように。息さえ忘れるほど真っ赤な顔で、身体を震わせて泣くこともある。授乳をしてもオムツを替えてもあやしても泣き止まず理由がいまいちわからない。

なにがそんなに悲しいのか。「黄昏泣き」と言われるやつなのか。ただ眠たいだけなのか。眠たいなら眠ればいいのに。その時々の理由で、我が天使は怪獣に変身する。

毎日おやすみ前は、約6キロの我が子を抱きかかえながら、家の中を歩き回り、体育会系ばりに声を出してスクワットを繰り返す。ようやく寝たと思って布団に降ろそうとすると、背中センサーがばっちり作動しているので、泣き出してまた振り出しに戻る。タイミングが難しい。

腕の中で完全に寝かしつけて抱き抱えながら一緒に寝るしか方法はない(おかげで私は夜8時頃寝て朝4時頃に起きるという生活に)。

寝かしつけをはじめてから布団に入るまで2時間はかかる。その間スクワット100回×5セット以上は当たり前。その後も我が子はちゃんと2〜3時間ごとに1回は起きておっぱいを求めるので、睡眠はぶつぎりに。

我が子が生まれて3時間以上続けてぐっすり寝たことがない気がするけれど、身体が慣れるのか辛くなくなった。

徳 瑠里香

おやすみ前だけじゃない。我が子はとにかく抱っこが好きなので今のところ離れることはほとんどなく、食事も家事も抱っこしたまま、常に身体を揺らしたりスクワットをしたり。おかげで誰かが抱っこしてくれているときも立っていると無意識に身体が小刻みに揺れてしまう(職業病のようなもの?)。

背中は痺れ、肩も腰も痛い。腱鞘炎にも筋肉痛にもなる。毎日鍛えられ、母は強くなるよ。「産後は痩せる」を通り越して、マッチョになっているよ。小さな命と向き合うお母さんに待ったも休みもない(だからこそ、周りを頼って時に休むことが必須だと思う)。

それでも赤ちゃんと日々向き合っていると、1日に何度か、ふわーっとやさしい気持ちが湧き起こってくる。

それはまるで温かな風が吹く花畑にいる気分のような。赤ちゃんのちょっとした表情や仕草に一人声を出して笑ってしまうこともある。その度にぎゅーっと我が子を抱きしめたり、クンクン匂いを嗅いだり、吐息に耳を澄ませたり、その小さなしあわせを噛み締めている。

この我が子に対する感情は"愛おしい"としか言いようがない。たまらなくかわいくて、たまらなく大事に思うのだ。だからこそ、寝不足でもどんなに疲れていても、赤ちゃんを前にすると自然と身体が動くのだろう。

無垢な瞳で私を見つめ時に笑い、時に泣いて全身全霊で私を求め、無防備に身を委ねてくる。そんな我が子がたまらなく愛おしい。"無償の愛"というものがあるとするなら、それは親が子に向ける前に、子が親に向けてくれるもののようにも思う。

そんな多幸感と同時に、大事な命を守らなくちゃ!という緊張感にも襲われる。

出産直後は、娘が危ない目に遭って、私がいのちがけで守る夢ばかり見ていた。実家で「助けて...、やめて...」ととうなされていたところを母に起こされたこともある。そんなことはないと願いたいが、究極、我が子を守るためなら命だって差し出せる。でもそれは決して自分を犠牲にするのではなく、自分がしたいことなのだ。

母になって何かが劇的に変わったかというと自分では正直わからない。私は私のまま。でも、自分以上に大切な存在ができたことは確かだ。いのちがけで守りたいほど愛おしい存在がいる。その感覚は、私は母にならなければ味わえなかった。

徳 瑠里香

我が子が生まれて3ヶ月。これからも子育てに悩みは尽きないと思うけれど、日々成長する我が子がくれる小さなしあわせを噛み締めながら、二度とないこの時を大切に過ごしていきたいと思う。