コーヒー豆でチョコレートは作れるか

先日、突然思い立ってカカオ豆からチョコレート作りに挑戦しました。これ、なかなか過酷です。調べてみるとカカオ豆からチョコレートを作ったという記事はいくつか出てきますし、一応自作できるらしいということは始めからわかっていたので、それで終わっては面白くありません。

先日、突然思い立ってカカオ豆からチョコレート作りに挑戦しました。これ、なかなか過酷です。

これについてはTogetterでまとめたり、メルマガで科学的に解説したりしているので、よろしければこちらもご参照いただければ幸いです。

・カカオ豆からチョコレートを作ってみよう - Togetherまとめ

・ヤバ研/博士@研究室 - ちょくマガ|KADOKAWA

しかし! 調べてみるとカカオ豆からチョコレートを作ったという記事はいくつか出てきますし、一応自作できるらしいということは始めからわかっていたので、それで終わっては面白くありません。

そこで今回は「カカオ豆以外の豆でもチョコレートは作れるのか」という疑問に挑戦してみました。カカオ豆からチョコレートを作る際に必要な材料は「カカオ豆、カカオバター、粉糖、スキムミルク」。カカオバター以降は製菓材料店等で比較的手軽に入手できますが、カカオ豆だけは通販で取り寄せるしかありません。より簡単に手に入る似たようなものはないだろうか......と考え、行き着いたのが「コーヒー豆」です。

■カカオ豆から始めるチョコレートの作り方

コーヒー豆からのチョコレート作りについて考える前に、そもそも、カカオ豆からチョコレートを作るにはどうしたらいいのか、簡単に説明しましょう。

材料

・生カカオ豆、カカオバター、粉糖、スキムミルク

作り方

1.カカオマスをつくる

・焙煎(ロースト):120℃のオーブンで25〜50分間加熱する

・分離(セパレーティング):殻をはがす

・摩砕(グラインダー):フードプロセッサーにかけ、すり鉢で1時間ほど擦って細かい粒子にする

2.チョコレートをつくる

・混合(ミキシング):カカオバター、粉糖、スキムミルクの順に加えてよく混ぜ合わせる

3.よりなめらかでおいしい仕上がりにする

・微細化(レファイニング):こし器を使って粗い粒を取り除く

・精錬(コンチング):さらに1時間ほどすり鉢ですり混ぜて粒子を細かくし、分散させる

4.仕上げ

・調温(テンパリング):チョコレートがきれいな結晶構造をとれるよう適切な温度に調整する。ステンレスのボウルに移して湯煎し、45℃で練りまぜる。これを冷水で冷やして一度27℃まで下げ、再び湯煎で30℃まで温める

・充填・冷却・熟成:型に入れて固める

■コーヒー豆でもチョコレートは作れるか

これと同様にして、コーヒー豆からチョコレートを作るにはどうしたらいいのでしょうか。科学的に考えてみました。

今回は「味や香りはコーヒーだけど、食感はチョコレート」な「コーヒー豆でつくるチョコレート」を目指してみようと思います。チョコレートの食感を言葉で表すならば「室温でパリッと割れ、口の中でとろけ、なめらかに広がる」。そのために必要な要素を考えてみます。

チョコレートがどのように構成されているのか、ミクロの目で見てみましょう。チョコレートは大部分が油脂で水分がほとんど含まれていません。そのため、砂糖やカカオ豆中の水溶性の成分は、溶けることが出来ず固体のまま混ざっています。つまり「油脂の結晶の中に、カカオの成分や砂糖、粉乳が微粒子となって分散した状態」になっています。

まず、チョコレートの「室温でパリッ、口の中でとろり」を作り出しているのは、カカオの油脂です。油脂はグリセリンに3つの脂肪酸がくっついた構造をしています。この脂肪酸の種類と組み合わせによって油脂の融点、つまり融ける温度が異なります。通常、天然に存在する油脂は、様々な脂肪酸で構成され、融点が異なります。そのため、バターでもラードでも温度が上昇するのに従い、それらが順番に融けて徐々にやわらかくなります。しかし、チョコレートの油脂を構成する脂肪酸はほぼ3種類で、しかもいずれも30℃付近と、融点がよく似ています。そのため、室温ではほぼ全てが固まってぱりっとした食感をしていますが、口の中に入ると体温で一気に融点を越え、とろけます。これが唾液に触れたときに初めて、チョコレートの中に含まれる砂糖や水溶性の成分が溶け出し、甘味や苦味、香りとなって広がるのです。

このあと「なめらかに広がる」ためには、油脂が十分に含まれていることと、チョコレート中の微粒子をできるだけ細かくする必要があります。「3.よりなめらかでおいしい仕上がりにする」の手順は粒子をより細かくするために行います。

さて、カカオ豆をコーヒー豆に置き換えた際、微粒子の方は、カカオ豆と同様にしっかりとすり潰せば大丈夫そうですが、問題は油脂の方です。まず、含有量。カカオ豆はその半分近くが油脂ですが、コーヒーに含まれる油脂は10〜20%程度。コーヒーオイルの融点について記載された文献を見つけることは出来ませんでしたが、脂肪酸組成については「リノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸」と綿実油等に似ているということですので、室温で液体程度の融点だと推測されます。そのため、コーヒーの油脂だけではチョコレート作りは難しく、十分な量のカカオバターを補う必要があると考えました。

■実際に作ってみよう

先ほどの油脂含量を考慮して、コーヒー豆はカカオ豆でつくる場合の2/3程度の量に、そしてその分カカオバターの分量を増やして、あとは同様の方法でチョコレート作りを行いました。

カカオ豆で作る場合

・カカオ豆 75g(焙煎して、殻をむいた状態での正味量は60g)

・カカオバター 30g

・砂糖 40g

・スキムミルク 34g

コーヒー豆Ver.

・コーヒー豆(焙煎済み) 40g

・カカオバター 50g

・砂糖 40g

・スキムミルク 34g

カカオ豆をすり潰すと、油脂が染み出してねっとりとしてきますが、

コーヒー豆の場合は、どんなに擦ってもさらさらとしたままです。

本当にチョコレートになるのかと心配になりますが、カカオバターを加えるとチョコレートのようなつやつやとした質感に。

これができあがり。下の2つがカカオ豆で作ったチョコレート。上がコーヒー豆で作ったチョコレートです。

作ってみて分かったことは、カカオ豆に比べてコーヒー豆の方が摩砕しにくいということです。こし器で漉す段階で、カカオ豆よりも多くの粗い粒が残りました。

仕上がりは、食感はカカオ豆で作ったチョコレートに遜色ない出来。かじるとパリッと割れ、口に入れるととろりととろけます。味はカカオのチョコレートよりも苦味が強く、大人の味といったところでしょうか。エスプレッソに近い味わいだと思います。甘ったるいものが苦手な人、コーヒー党にオススメのスイーツができあがりました。

■結論

カカオバターで脂肪分を補えば、「味や香りはコーヒーだけど、食感はチョコレート」なコーヒー豆チョコレートは作れる!

ぜひ週末のDIYに、いかがでしょうか!?

チョコレート・ファッジ・プディング

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