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キッチンに塩は何種類必要か

2014年07月10日 20時12分 JST | 更新 2014年09月08日 18時12分 JST

皆さん、塩へのこだわりはありますか?

先日Twitterで「塩へのこだわり」についての意見を書いたところ、多くの反響をいただきました。

料理男子のロマンを殴打する「塩の話」 - Togetterまとめ

http://togetter.com/li/690575

そのときには「味の違い」に着目して、「大して違いはないのであれこれ揃えても意味ないよね」ということを書いたのですが、よくよく考えてみると、塩の違いって味だけじゃないんですよね。

そこで、製法や粒の状態などにも着目して、塩の使い分けについて少しまとめてみました。皆さんの塩選びの参考になれば幸いです。なお、ここでは、ハーブ塩やフレーバー付きの塩については割愛し、それ以外の塩についてお話したいと思います。



■キッチンに塩は何種類あるべきでしょうか。

〜〜〜の塩、〜〜〜ソルト、など、世の中には多種多様な塩が存在します。スーパーの塩売り場にはたいてい何種類もの塩が置かれていますし、ちょっとこじゃれたお店や旅先の土産物屋さんに行けば、なんとなく珍しそうな塩が目にとまります。こんなにあれこれ並んでいると、いったいどれを使ったらいいのか、どんな風に使い分けるべきなのか、悩んでしまいますよね。

そもそも塩の「違い」って何なのでしょうか?



■味の違い・健康への影響の違い

始めにも触れましたが、料理に使う場合、塩の種類による味の違いは、ほぼないと言っていいでしょう。

にがり成分を多く含む塩について、しばしば「様々なミネラルを含み、まろやかな味がする」「様々なミネラルを摂取できて健康にもいい」などの謳い文句を見かけます。

食塩の主成分は塩化ナトリウムという物質で、「にがり成分」「様々なミネラル」というのは、マグネシウムやカリウムなど、それ以外のミネラルのことを指しています。一方、食用塩の国際規格では塩化ナトリウムが97%以上と定められていますし、日本で販売されている食塩も、基本的にこの規格内に収まっています。

つまり塩化ナトリウム以外の「様々なミネラル」は、多くても、たった3%しか含まれていないわけです。

塩をそのままペロリと舐めれば、その微妙な違いを感じることができるかもしれませんが、料理に加えてしまえばまったくわからなくなってしまいます。実際に、様々な塩を水に溶かして比べたら、違いがわからなかった、という調査報告もあります。

また、1日に推奨される食塩の摂取量と、ミネラルの摂取量とを比較しても、食塩からミネラルを摂取するというのは、あまり現実的ではないでしょう。

ただし、健康への影響についてはひとつ例外があります。塩化カリウムを添加した、いわゆる減塩用の塩です。これは、塩化ナトリウムの一部を塩化カリウムで代替しているため、塩化ナトリウムの摂取を抑えることができます。(※腎臓疾患を持つ場合など、人にとっては健康に悪影響が出ることもあるので注意が必要です。医師と相談して使用するのがいいでしょう。)



■粒の状態に着目する

では、塩に違いなんてないのでしょうか。

そんなことはありません。塩の粒の状態にこそ、塩を使い分けるポイントがあります。そして、粒の状態は主に、製法と成分に影響を受けます。

まず、立釜か、平釜か、採掘か。これらは塩の製法の違いで、パッケージ裏の表示に記載されています。結晶の形状や大きさが異なるため、溶けやすさや扱いやすさが異なります。

立釜は安くて無難。さらさらとして扱いやすく、何にでも使える塩です。

平釜は溶けやすい、くっつきやすい、という性質があるので、肉や魚に振り塩をする際など、料理の下ごしらえに便利。

採掘は、岩塩や、塩湖から掘り出してきたもの。かたくて溶けにくいので、下ごしらえや全体の味付けには向きませんが、あとから振りかけるなどの仕上げに使うと、アクセントになります。粒がゆっくりと溶けるので、少しマイルドに感じられることもあるようです。

また、含まれる成分によって、しっとりか、さらさらか、が異なります。食塩は放っておくと空気中の水分を吸って、湿っけてきますが、にがり成分の多いものは、より湿っけやすく、べたつきやすい。例えば、ぱらぱらっと振りかけたいときには、少し不便です。

食卓塩のように、湿っけにくい塩もあります。これらは、炭酸マグネシウムや炭酸カルシウム、無水ケイ素などが添加され、水分を吸いにくく、常にさらさらした状態を保っています。食事中にちょっと振りかけたい、といったときに便利な、まさに「食卓にぴったりの塩」です。



これらをふまえると、一般家庭における塩の使い分けは、だいたい下記のようになるのではないでしょうか。

1.まずは「立釜製法の、にがり成分が少ない物」をひとつ

さらさらとしていて、湿っけにくいため、扱いやすく何にでも使えますし、安いので気楽に使えます。とりあえず、これ1つあれば安心の万能選手です。

2.さらに、こだわる人は平釜や採掘塩をプラス

振り塩などの下ごしらえには平釜の塩がぴったり。和食向きとも言われています。

一方、前菜などの仕上げに岩塩を使うと、塩の粒が残りやすいのでアクセントになります。ミルなどを使って粗く削りましょう。目の前で削ってかける「演出」もおいしさの一部かもしれません。

3.必要に応じて、食卓塩を置いたり、減塩用の塩を用意する

食卓に置く塩は、いわゆる「食卓塩」など、湿っけにくいものを使うと、かたまってしまいにくく、便利です。

番外編:滅多に塩を使わない人向けは湿っけにくい塩を

普段自炊をしない人が、久しぶりに塩入れを見たら、塩が湿っけてごりごりに固まっていた、というのはよく聞く話。塩の出番が少ない家では、炭酸マグネシウムなどを添加した、湿気にくい塩を置いておくといいでしょう。



いかがでしょうか?

こうやって改めてまとめてみると、塩の種類をあれこれ揃えるよりも、味付け以外の食塩の用途を理解することや、みりんや酒など、塩以外の調味料を充実させることの方が、随分意味があるんじゃないかしら、というのが個人的な見解です。



味付け以外の塩の用途については以前にメルマガでも紹介しました。バックナンバーも購読可能なので、興味を持たれた方はぜひ、覗いてみてください。

・調味料はキッチンの実験試薬!?

http://chokumaga.com/magazine/free/104/39/

・「浸透圧」と料理

http://chokumaga.com/magazine/free/104/39/

・料理の色を鮮やかに!食塩の生化学

http://chokumaga.com/magazine/free/104/42/