民泊新法(住宅宿泊事業法案)について

まずは同法案の骨子について解説します。

平成29年3月10日,民泊サービスのルールを定める「住宅宿泊事業法案」が閣議決定されました。同法案は,第193回国会に提出され,審議中です。

同法案は,多くの事項を政省令に委ねており,詳細はこれらの制定を待たねばなりませんが,まずは同法案の骨子について解説します。

1 住宅宿泊事業者

⑴ 定義

法案で,民泊サービスは,旅館業の許可を受けて旅館業を営む者以外の者が,宿泊料を受け取って,住宅に人を宿泊させる事業であって,人を宿泊させる日数が1年間で180日を超えないものと位置づけられています(2条3項。住宅宿泊事業)。

住宅宿泊事業を営む場合には,都道府県知事(住宅宿泊事業の事務処理を希望する保健所設置市又は特別区においてはその長)へ届出をすることが求められています(3条)。

この届出をして住宅宿泊事業を営む者を住宅宿泊事業者といいます(2条4項)。

⑵ 住宅宿泊事業者の義務

住宅宿泊事業者は,宿泊者の衛生を確保するための必要な措置(5条),宿泊者の安全の確保を図るために必要な措置(6条),外国人観光旅客である宿泊者の快適性及び利便性の確保を図るために必要な措置(7条)を講じること等の義務を負いますが,その具体的な内容は,省令で定めるものとされています。

⑶ 実施期間の制限

都道府県等は,住宅宿泊事業に起因する騒音の発生その他の事象による生活環境の悪化を防止するため必要があると認めるときは,条例で,区域を定めて,宿泊事業を実施する期間を制限することができます(18条)。

地方自治体が条例を制定することで,地域の実情に応じた対応が可能となっています。

⑷ 罰則

旅館業法の許可を受けず,また,都道府県知事等への届出なく住宅宿泊事業を営んだ場合,旅館業法違反となるため,6か月以下の懲役又は3万円以下の罰金に処せられる可能性があります(旅館業法10条1号)。

2 住宅宿泊管理業者

⑴ 定義

住宅宿泊事業者は,届出住宅の居室の数が一定の数を超えるとき,届出住宅に人を宿泊させる間不在となるときには,住宅宿泊管理業務を住宅宿泊管理業者に委託しなければならないとされています(11条)。

この委託を受けて,報酬を得て,住宅宿泊管理業務を行う事業を,住宅宿泊管理業といいます(2条6項)。

住宅宿泊管理業を営むには,国土交通大臣の登録が必要とされており,(22条1項),この登録を受けて住宅宿泊管理業を営む者を住宅宿泊管理業者といいます(2条7項)。

⑵ 住宅宿泊管理業者の義務

住宅宿泊管理業者は,管理受託契約を締結しようとする場合,委託者に対して,事前に,契約内容等について,書面を交付して説明しなければならないとされています(33条)。また,管理受託契約を締結したときは,委託者に対して,遅滞なく,一定の事項を記載した書面を交付しなければならないとされています(34条)。

個人が住宅宿泊業を営むケースが想定されることから,住宅宿泊業者を保護するため,住宅宿泊管理事業者に一定の説明義務を課したものと考えられます。

⑶ 罰則

国土交通大臣の登録を受けずに住宅宿泊管理業を営んだ場合,1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処せられます(72条1項)。

3 住宅宿泊仲介業者

⑴ 定義

住宅宿泊事業者は,宿泊サービス提供契約の締結の代理又は媒介を他人に委託するときは,住宅宿泊仲介業者又は旅行業者に委託しなければならないとされています(12条)。

旅行業の登録を受けた旅行業者以外の者が,報酬を得て,宿泊者や住宅宿泊事業者のために,代理して契約を締結し,媒介をし,又は取次ぎをする事業を住宅宿泊仲介業といいます(2条9項)。

住宅宿泊仲介業を営むには観光庁長官の登録を受ける必要があり(46条1項),この登録を受けて住宅宿泊仲介業を営む者を住宅宿泊仲介業者といいます(2条10項)。

⑵ 義務

住宅宿泊仲介業者は,住宅宿泊仲介業に関する料金の公示(56条),宿泊者に対する契約締結前の書面の交付(59条)等の義務を負います。

⑶ 罰則

旅行業法の登録を受けず,また,観光庁長官の登録を受けず住宅宿泊仲介業を営んだ者は,100万円以下の罰金に処せられる可能性があります(旅行業法29条1号)。

(平成29年5月19日 「弁護士大城聡コラム」より転載)

<民泊に関するコラム一覧>

注目記事