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豊洲新市場の汚染―「無害化の約束」とは何か?

2017年06月04日 00時10分 JST | 更新 2017年06月05日 20時02分 JST

小池都知事は、6月1日、都議会の所信表明の冒頭で豊洲新市場の「無害化の約束」が実現できていないことを謝罪しました。この「無害化の約束」とは何でしょうか。

無害化された安全な状態が豊洲新市場開場の前提

東京都は、これまで無害化された安全な状態で豊洲新市場を開場すると約束してきました。2010年3月27日の都議会予算特別委員会では、岡田中央卸売市場長(当時)が、豊洲新市場について「開場させるに当たりましては、汚染された土壌が無害化され、安全な状態になっていることが前提」と答弁しています(※1)。

都議会の付帯決議

2011年度東京都中央卸売市場会計予算は、「土壌汚染対策について、効果確認実験結果を科学的に検証し有効性を確認するとともに、継続的にオープンな形で検証し、無害化された安全な状態での開場を可能とすること」という付帯決議を伴って可決しました(※2)。

この付帯決議は、民主党(当時)、自由民主党、公明党の共同提案でした。移転に反対の共産党、生活者ネットワークなどは付帯決議にも反対しましたが、民主党(当時)、自由民主党、公明党の共同提案で、2010年3月28日、同予算は付帯決議を付して可決されました。つまり、都議会自らが「無害化された安全な状態での開場」を求めたのです。

操業由来の汚染を全て除去し、地下水汚染も環境基準以下にする

2011年2月23日の都議会予算特別委員会では、改めてこの付帯決議について都の見解が問われました。そこで、岡田中央卸売市場長(当時)は、汚染土壌が「無害化」された安全な状態とは、「①技術会議により有効性が確認された土壌汚染対策を確実に行うことで、②操業に由来いたします汚染物質がすべて除去、浄化され、土壌はもちろん、③地下水中の汚染も環境基準以下になることである」と答弁しました(※3)。

<無害化3条件>

①技術会議により有効性が確認された土壌汚染対策を確実に行うこと

②東京ガス操業由来の土壌の汚染物質がすべて除去、浄化されること

③地下水中の汚染も環境基準以下になること

860億円かけても「無害化の約束」は実現できなかった

環境基準の4万3000倍のベンゼンなど高濃度汚染が検出された東京ガス工場跡地に中央卸売市場を移転するにあたって、都議会も都も「無害化の約束」をしたのです。この「無害化の約束」は、都議会と都の双方が都民、市場関係者、消費者に対して、約束したものです。

しかし、豊洲新市場予定地では、約860億円の費用をかけて汚染対策した後も、環境基準100倍のベンゼンやシアンなどの汚染が検出されています。「無害化の約束」は実現できていません。この現状について、小池都知事は謝罪したのです。

専門家会議の追加対策案でも「無害化の約束」は実現不可能

5月18日に行われた第6回専門家会議の場で、平田座長は、「無害化の約束をしなければならないということは私はできない」と発言しました。また、「全て環境基準にすることを今回は目指していないのですよ」と述べました。このような平田座長の発言によって紛糾し、休会となったのです。さらに、終了後の記者会見では「地下水の対策をすれば、時間はいつとは言えませんが、遠い将来、環境基準に近づいていく」、「全てを環境基準にするのは非常に難しい」と述べたと報道されました。第6回専門家会議で明らかになったことは、専門家会議の追加対策案は「無害化の約束」を実現するものではないということです。

「全て環境基準にすることを今回は目指していないのですよ」

<第6回専門家会議での平田座長の発言>

豊洲移転は極めて困難

東京ガス操業由来の汚染をすべて除去し、地下水汚染を環境基準以下にするという「無害化の約束」は、都議会が付帯決議で求め、都が約束したものです。「造ったから移転しかない」というのは、約束を反故にするということです。豊洲移転の大前提である無害化が実現できないのであれば、移転は極めて困難だと考えざるを得ません。

                       <「弁護士大城聡のコラム」より転載>

※1 都議会予算特別委員会 速記録(2010年3月27日)

※2 平成22年度東京都中央卸売市場会計予算に付する付帯決議

※3 都議会予算特別委員会 速記録(2011年2月23日)