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石膏像を彫るとき、 「眉毛」から始める人はいない

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瞬間風速に終わらないように、さらに一部を公開します。

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石膏像を彫るとき、 「眉毛」から始める人はいない

多少のバグを無視して、とりあえず大枠を作ったものをプロトタイプ(試作品)といいます。これはプログラムの話に限らず一般的な仕事においても応用できる、より抽象的な概念であると理解してください。

会社の企画を任されたときにプロトタイプを作ると、全体のイメージが固まります。イメージが固まっていると上司もプロジェクトの進行を理解しやすいので、企画が通りやすくなります。また、何より自分自身がプロジェクトを進行するときに、仕事がやりやすくなります。

プログラムに限らず、大抵の仕事の全体図は実際にやってみないと描けません。企画書という紙の上だけで考えても大体思ったとおりになることはないのです。みなさんもそういう経験がおありだと思います。

ですからプロトタイプの作成に速やかに入り、ある程度まで作ったうえで、どのくらいの難易度かを考えつつ仕事を進めていくのが賢いやり方です。

プロトタイプを作らず愚直に細部を突き詰めていった場合、締め切り間際になって「ここは設計から作り直さなければならない」という事実に気づくことがあります。そうなると危険です。締め切り間際では、大枠の設計を変更する時間もないので、完成品はろくでもないものになります。

一方プロトタイプを作っていると、「ここは作り直さなければならない」という事実を早期に発見できます。そうしたら設計図を作り直せばいいのです。プロトタイプを作っている段階ならば、いくらでも直しが効きます。

よくこういった話を、石膏の彫刻の例を出して説明することがあります。石膏を削って胸像を作るとき、いきなり眉毛の一本一本にこだわって細い彫刻刀を使う人はいません。そんなことをしても、後になって全体のバランスがおかしくなって失敗するだけです。普通はまず大きく輪郭を粗削りするところから始めます。つまりプロトタイプを作るとは、そういうことなのです。

仕事が遅くて終わらない人が陥る心理として、「評価されるのが怖い」というものがあります。自分の仕事がどう評価されるのかが怖くて、できるだけ自分の中の100点に近づけようとしてブラッシュアップを繰り返します。

しかしブラッシュアップすればするほど、もっと遠くに100点があるような気がして、いつまでたってもこのままじゃ提出できないという気持ちになります。そして、そうして時間をかければかけるほど、上司からはクオリティを期待されているような気がして、恐怖に拍車がかかります。

このループに陥る人の状態を「評価恐怖症」といいます。1章の「なるはや病」と同じく、日本の一部で蔓延している病です。評価恐怖症にかかった人は、自分の中での100点満点を目指すあまり、本来なら終わる仕事も終わらなくなります。

たしかにそうして仕事が遅れてしまう心理はよくわかります。粘り強くいいものを作ろうとする気持ちも決して失ってはいけないと思います。そして、そうした気持ちこそが優れた製品やサービスを作るのだとも思っています。

しかし、すべての仕事は必ずやり直しになる、くらいの覚悟が必要です。荒削りでもいいから早く全体像を見えるようにして、細かいことは後で直せばいいのです。そうした気持ちでいれば、評価恐怖症でいることも、あまり大したことではないとわかるはずです。あなたはプロトタイプを最速で作るべきなのであって、細かいところは後から詰めて考えればいいのです。