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超伝導ゆらぎによる巨大熱磁気効果発見

2014年12月08日 01時41分 JST | 更新 2015年02月06日 19時12分 JST

超伝導の前駆現象である超伝導ゆらぎによる巨大な熱磁気効果を、日本の研究チームが発見した。ある種のウラン化合物超伝導体で、熱磁気効果がこれまでの超伝導体よりけた違いに大きくなることを、京都大学大学院理学研究科の大学院生の山下卓也(やました たくや)さんや住吉浩明(すみよし ひろあき)さん、松田祐司(まつだ ゆうじ)教授らが確かめた。

熱磁気効果とは、磁場中で縦方向の温度差を横方向の電圧に変換する熱電変換のこと。今回得られた巨大熱磁気効果は、超伝導への理解を深め、新しいデバイスに使える現象として期待される。東京大学の芝内孝禎(しばうち たかさだ)教授、大阪大学の藤本聡(ふじもと さとし)教授、日本原子力研究開発機構の芳賀芳範(はが よしのり)研究主幹らとの共同研究で、12月1日付の英科学誌ネイチャーフィジックスのオンライン版に発表した。

物質が電気抵抗ゼロの超伝導になる温度(超伝導転移温度)より少し高い温度で形成される「超伝導の泡」を超伝導ゆらぎと呼ぶ。これは超伝導の前駆現象で、その際、熱磁気効果が観測されるが、ごく小さいとされている。理論物理学を専攻する住吉浩明さんが、新しいタイプの超伝導ゆらぎを提案し、熱磁気効果が大きくなる場合があることを予言した。

この理論を参考に、山下卓也さんらの実験チームがウラン化合物超伝導体URu2Si2の極めて純度が高い試料を用い、超伝導ゆらぎに起因した熱磁気効果を精密に測定した。このウラン化合物は絶対温度1.5度以下の極低温で超伝導になるが、絶対温度1.5度~5度では局所的に超伝導の泡が生成・消滅を繰り返す超伝導ゆらぎが起きる。測定の結果、試料の純度が増すほど、超伝導ゆらぎによる熱磁気効果が顕著に現れた。

その熱磁気効果の大きさは、従来の超伝導の標準理論から予想される値の100万倍にも達することがわかり、住吉浩明さんの理論を裏付けた。それによると、URu2Si2の超伝導では、クーパー対を形成する2つの電子が、互いの周りを右回りか左回りのどちらか一方向に回転している新奇な超伝導状態と考えられている。超伝導ゆらぎの泡の表面を流れるペア電子によって、伝導電子が散乱されて、巨大な熱磁気効果になるという。

研究チームで理論を担当した住吉浩明さんは「この巨大熱磁気効果は、ウラン化合物の超伝導ゆらぎの泡が示す新奇な幾何学的構造で説明できる。従来の標準理論を超える特殊な超伝導だ。このような新しい仕組みに基づく熱磁気効果が観測されたことで、極低温での熱電変換デバイスに応用できる可能性が出てきた。超伝導の理論と実験に刺激を与える現象だろう」と話している。

巨大な熱磁気効果を引き起こす新しい超伝導ゆらぎの概念図。左右に温度差をつけて左から右に熱を流し、紙面に垂直に磁場をかけた時に上下に大きな電圧が発生する。これは、超伝導の泡(超伝導ゆらぎ)の表面を流れるペア電子で伝導電子が散乱されて起きる。
図. 巨大な熱磁気効果を引き起こす新しい超伝導ゆらぎの概念図。左右に温度差をつけて左から右に熱を流し、紙面に垂直に磁場をかけた時に上下に大きな電圧が発生する。これは、超伝導の泡(超伝導ゆらぎ)の表面を流れるペア電子で伝導電子が散乱されて起きる。
(提供:京都大学)



関連リンク

京都大学 プレスリリース

日本原子力研究開発機構 プレスリリース



http://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2014/12/20141205_01.html