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地球外生命の発見まであと一歩?『系外惑星天文学』

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▪第2地球の発見

先日、NASAが、地球から1400光年ほど離れた惑星系に地球によく似た惑星を発見したという報道があり、ちょっとした話題になった。直径は地球の1.6倍、50%以上の確率で地球とほぼ同じ岩石質、地球の太陽にあたる恒星からの受ける熱エネルギーは地球と同程度だという。大気があるかどうかはまだ確証を得ていないものの間違いなくある、という見解だ。確かに、これは今まで発見されたどんな星より地球に近い。ということは、地球と同様の生命がいる可能性もある。

地球に「最も似ている」太陽系外惑星を発見 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト

▪いつの間にか飛躍していた天文学

私たちが学校教育を受けた時分には、そもそも恒星のまわりに地球や木星、土星といったような惑星があるかどうかさえわからなかった。なにせそんな惑星は一つも見つかっていなかったからだ。だから、地球外の生命の存在の可能性を探るといっても、調べることができるのは太陽系内に限られていた。もっとも、当時すでに、太陽系の惑星は地球以外どれも生命存在の可能性は極めて低いというのが常識だった。せめてもの慰みというか、わずかな可能性(といってもそれもわずかとも言えないくらい可能性は低いのだが)は、火星の衛星であるフォボスやダイモス、あるいは土星の衛星タイタン(メタンの海にいる、メタン菌)等、動植物レベルの生命は難しくても、地球にも限界的な環境で生息する細菌のような生命の可能性は完全には否定できない、という程度の可能性だった。それに比べれば隔世の観がある。だが、一体どうしてこれほどの違いが生じることになったのか。

▪すべては1995年から

あらためて調べてみると、すべては1995年から始まっているようだ。この年、太陽以外の恒星を周回する惑星(太陽系外惑星、略して、系外惑星と呼ばれる)が史上初めて発見された。この系外惑星は、太陽のように(それ以上に)明るい恒星の周囲を回っているため、 恒星の光にかき消されてしまう。だから、直接の画像を恒星の光と区別して観察(直接観察法)することは現在の技術を持ってしても難易度が高い。そのため、恒星の周囲に惑星が存在することによる影響を様々な手法で把握する(間接法という)ことが試みられ、中でもドップラー法(惑星によって恒星が視線方向にふらついた時に起こるドップラー効果によるスペクトル変化を調べることで系外惑星を探す方法)により、最初の系外惑星の存在が確認されて以来、発見が相次ぐことになる。

▪続々見つかる異形の惑星

ドップラー法だと、惑星が恒星の近くを周回していて、しかも大きいほど見つけやすいため、結果的に初期に見つかった系外惑星は、太陽系の惑星とは似ても似つかない、およそ想像を絶するものだった。命名された呼称も大変ユニークだ。次のような感じだ。

ホット・ジュピター
・大きさ: 木星級の巨大ガス惑星
・恒星からの距離: 地球-太陽間の距離の十分の一以下
・公転周期: 高速かつ非常に短い周期(数日)

エキセントリック・プラネット
・大きさ: 木星級の巨大ガス惑星
・公転: 彗星のような離心率の大きい楕円軌道
・表面温度: 灼熱期と極寒期を繰り返す

ホット・ジュピターのような、木星級の巨大惑星がわずか数日で太陽の至近距離を周回している様子を想像してみて欲しい。太陽系のイメージに長年親しんだ我々にとっては、ギョッとする光景だろう。研究者でさえ、太陽系のイメージから離れるのは難しいと見えて、1995年に最初の惑星を発見したことを発表したチームに先んじて、ホットジュビターの存在を示唆するデータを入手していながら、あまりの異形さに確信が持てず先を越されてしまったチームがいたという。先入観がブロックとなって、事実でさえ事実として受け入れられない、という事例は科学の歴史には数多いが、このケースもその典型例だったようだ。

ちなみに異形という点では、『土星の200倍の巨大な環を持つ惑星』『太陽が二つあるような惑星(連星の周りを回る惑星)』『逆行惑星(惑星は通常は恒星の自転と同じ方向に公転しているが、これと逆方向に回転している惑星)』など次々に見つかっているようだ。いつの間にか天文学は実にエキサイティングな学問になっている。

▪生命の証拠発見も近い?

1995年に最初の惑星が見つかって以降、発見のための手法も次々に開発され、地上だけではなく、人工衛星に望遠鏡を設置する等、観測のための機器も進化し、近年では、地球と同様の衛星の発見も時間の問題とされていたが、とうとうこのほど本当にそれが見つかったわけだ。(この進化はまだ進行中で、地球よりさらにサイズの小さな惑星や、惑星を周回する衛星についても、遠からず発見されると見られている。)

だが、いかに地球そっくりの環境とはいえ、まだこの段階では生命が存在する証拠が見つかったわけではない。ところが、この生命の存在の指標となる分子・原子、すなわち、『バイオマーカー』の存在が惑星の大気の分光観測を行って確認されれば、生命の存在の有無はぐっと、『有』の方向に近づくことになる。

天文学者の田村元秀氏の著作『第二の地球を探せ!〜「太陽系外惑星天文学」入門〜 』*1によれば、そんな『バイオマーカー』について詳しく解説されている。例えば、酸素は酸化反応によってするに失われてしまうが、観測対象の惑星の大気に酸素が大量に保たれていれば、植物のような生物によって、絶えず供給されている可能性がある。また、地球のメタンは、火山活動でも供給されるが、大部分は牛のげっぷや糞とメタン細菌から供給される。これも生命起源だ。さらに、酸素とメタンが共存すれば、さらに『バイオマーカー』として有望なのだという。というのも、両方が存在すれば、化学反応を起こして、短時間で消失するため、これらが共存するためには、何かによって絶えず供給されている必要があるからだ。観測精度が上がることによって、サンプルは増えていくだろうから、いつかそんな『バイオマーカー』が見つかる可能性も広がる。少なくともそのような期待は盛り上がる。

▪世界観を一変する発見

私は系外惑星が発見される前の学校教育を受けて、その後自分から情報を取りに行くようなことをしていなかったため、これほどワクワクする研究が天文学の分野で進行していたことなど知る由もなかった。科学の先端と一般常識の乖離を身を以て体験したような気がして、そういう意味でも非常に興味深い事例だ。自分が興味のある分野の情報しか入らなくなる、といわれるインターネット時代だけに、このようなギャップを日常的にどうすれば埋めていくことができるのか、あらためて考えてしまう。

しかも、これほど重大な知識は、おそらく世界観というか、各人の思想や哲学を形成するための重要や要素になりうる。世界観、というのが大げさと感じた向きもあるかもしれないが、そんなことはない。地球外生命が(高い確率で)存在することが常識になれば、『人類』、あるいは、『地球』を相対化する視点は必ず育ってくる。そのような視点が人類の潜在意識に浸透してくれば、地球上での対立構図を緩和する気運というか、メンタリティーが醸成されるきっかけになるに違いない(少なくともそう信じたい)。そういう意味でも、系外惑星の情報には、今後とも注目していこうと思う。

(2015年7月31日「情報空間を羽のように舞い本質を観る」より転載)

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