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プラットフォーム化が全領域におよぶ近未来とその問題点について

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■ブロックチェーン


先日(5月18日)、国際大学GLOCOM主催で、ブロックチェーンについてのイベントがあったので、日中の忙しい時期ではあったが出席してお話を聞いてきた。

GLOCOMブロックチェーン経済研究ラボ 第3回セミナー「通貨としてのビットコインを考える」【公開コロキウム】 | 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター

このイベントの内容については、後日、資料がアップされるとのお話しもあったため、詳細はそちらでご確認いただきたい。

3人のお話しのほとんどは技術的な成り立ちや、技術的な発展可能性、あるいは現状の問題点等、技術に関わる内容だったこともあり、エンジニアではない私には、自分が理解するのにもかなりの困難が伴ったし、まして人に説明することはとても出来そうにない。

ただ、そんな私であってもどうしてもこのイベントに出席したかった理由は、ブロックチェーンの可能性やポテンシャルがとんでもなく大きいことを感じずにはいられないからだ。

ビットコインに注目して自分で調べた際に、中核技術であるこのブロックチェーンのことを知って以来、できる限り自分でも情報を集めてみたし、近未来のビジネスシーンを想定する上で、ブロックチェーンがどのような役割を果たすのか、繰り返し思索もしてみた。

そうして多少なりとも理解が進めば進むほど、単に役割を果たすという以上に、近未来全体を変革し、その根幹の意味さえ変えてしまいかねない存在であることがわかってくる。

実際、昨今ではメディアでも、インターネットに次ぐ革命的なテクノロジーとして取り上げられるようになった。著名なベンチャー・キャピタリストである、マーク・アンドリーセンは次のように述べている。

『1975年のパーソナル・コンピューター、1993年のインターネット、そして2014年のビットコイン』

ビットコインの中核技術であるブロックチェーンは、『中央権力が不在でも、信憑性、信頼性のあるネットワークを構築することができ、すべての仲介役を省くことができ、国家の力でも止めることができない』という驚くべき特性を持ち、あらゆる主体のネットワーク化を可能にすることができるというから、応用範囲は金融に限らず、巨大なポテンシャルを秘めた、まさに革命的なテクノロジーといえる。だから、ここではビットコインではなくブロックチェーンと言い換えるべきところだろう。

ただ、いかにポテンシャルが大きくとも、現段階では、まだそのほんの一端が垣間見えたに過ぎない。それでも、私がこの技術にこだわってしまうのは、私に見えてきた近未来のビジネスシーンのイメージを、さらに大きく進化させるレバレッジ(梃子)の役割を果たすように思えてならないからだ。

今回のエントリーでは、その私のイメージについて語り、さらに、多少先走り過ぎかもしれないが、その時点で起きてくるであろう問題を予想してみようと思う。

■デジタル化による競争条件の激変


デジタル化(デジタルデータ化)の進展は、特にインターネットの本格普及後、ビジネスシーンのあらゆる局面を変えずにはおかず、今この瞬間も、その影響は急速に全産業に及びつつある。

そもそも、アナログデータがデジタルデータに置き換えられるということは、ムーアの法則に代表される次元の違うスピードが支配する世界に参入することを意味するわけだが、同時に、今日では『ネットワーク化』および『ソフトウエア化』の全面化が必然の環境に置かれることでもある。

さらには、下記で述べるような要素の恩恵を受ける(利用することができる)資格を得ることになる。だが、それは恩恵ではあるが、デジタル化が成熟すればするほどむしろ競争条件となり、それらの恩恵をいかに生かすことができるか、一つの要素だけではなく、いかに複数の要素を組み合わせ、いわゆる組み合わせのイノベーションを創造できるかが勝敗を分ける要因となり、そこでも新たな勝者と敗者を生み出す。

そして、そこでの勝利者は、タクシー配車ビジネスでブレークしたUber(ウーバー)にその典型例を見るように、まさに『破壊的』で、短期間に巨大な規模に膨れ上がることも珍しくない。

・ビッグデータ利用

  → 人工知能によるデータマイニング

・外部経済利用

  → SNS
  → オープンソース
  → クラウドファンディング

・モジュール利用

  → クラウドサーバー(AWS等)
  → 決済(PayPal、Square等)
  → 動画(YouTube等)
  → 無料電話(LINE、Skype等)

・新たなデジタル技術利用

  → 3Dプリンター
  → AR/VR

■先行事例としてのIT・電気市場


この影響が一早く及んだ、IT電気市場では、Google、Amazon等が、『デバイス(スマホ)』+『コンテンツ(ビッグデータ)を置くクラウド』+『ビッグデータ分析アルゴリズム』+『決済ストア/仕組』+『ソーシャル(SNS)』等のレイヤーを同時に持ち、その複合価値によって、市場全体を『メガ・プラットフォーマー』として支配するに至る。

そこでは『ネットワーク化』および『ソフトウエア化』が徹底し、ソニーやシャープのようなスタンドアロンの(ネットワークに繋がらない)完成品提供者は如何に製品の品質が高くとも、主役としての役割を果たすことはできず、ほどなく退場を迫られ、良くても部品の提供者の地位を余儀なくされる。

一方で、プラットフォームに最適のモジュールが多数提供され、上記のような『デジタルデータ化の恩恵』を最大限に生かしたプレーヤー(Uber、宿泊施設・民宿を貸し出す人向けのウェブサービスであるAirbnb(エア・ビー・アンド・ビー)等)は、爆発的にビジネスを拡大し、『メガ・プラットフォーマー』の支配する市場内で、個別の領域におけるプラットフォーマー、いわば『カテゴリー・プラットフォーマー』として市場で独自の地位を築くことになる。

プラットフォーマーは多層のレイヤーを束ねてできているが、その出口であるインターフェースを象徴する製品はスマートフォン(スマホ)であり、表面的には、スマホが様々な既存の製品やサービスを飲み込み、駆逐してきたように見える(フィーチャーフォン、固定電話、電卓、携帯音楽プレーヤー、ゲーム専用機、カーナビゲーション、新聞、雑誌、テレビ等)。 

当初は、単なるモバイル/携帯電話だったのが、いつの間にか、その背後をプラットフォーマーとして、Googleやアップルのような米国IT巨大企業が支配するようになる。

これを携帯電話(→スマホ)の進化の足跡と今後という観点でまとめなおすと、スタンドアローンの製品→ ネット接続 → プラットフォーム化(支配)→ あらゆる物との接続/市場の生態系化→ 超巨大な情報の流通/還流と蓄積 → 人工知能による情報の分析とフィードバック → 新たなサービス提供/進化の促進と、さらなる次元上昇を遂げつつあることがわかる。

かつては日本企業の独壇場だった、スタンドアローンの製品だけが支配した市場はもはや跡形もない。

■ビジネスの全領域に及ぶ『スマホ・ビジネスモデル』


だが、これはIT電気市場にとどまらないことは、もう誰の目にも明らかだろう。

ここで起きた、いわば『スマホ・ビジネスモデル』とでもいうモデルは、今、自動車に波及しようとしている(いわゆる自動車のスマホ化)わけだが、今後、モバイル → 自動車 → 住宅 → 人/生体情報(生理的な情報、遺伝子情報、感情、思考) → 都市と連続的に拡張していくことにはほとんど疑う余地がない。

並行して、この背後では、生産設備 → 工場全体 → 部品提供者全体というように、同様の再編成が進行することになる。

あらゆる市場/業界にプラットフォーム化が浸透すれば、次に当然考えられるのは、それぞれのプラットフォームを束ねる『統一フォーマット化/プラットフォーム化』だ。

そして全体としての効率化や複合的な付加価値の創造が起きてくる。もちろんこれは人間には(情報が膨大すぎて)手にあまるから、この膨大な情報相互の関係分析からの新たな価値の発見、新たなサービスの創造は主として人工知能が受け持つことになるだろう。

そして、ここまでのプラットフォーム化の流れに乗りにくく、取り残された領域も、今後、ブロックチェーンによって、次々に(そして徹底的に)プラットフォーム化が進むことになる。

(金融サービス(決済、送金、会計、税務、融資等)、物流、ITインフラ、クラウド、電力、不動産(都市、建物、公共施設等)、医療、教育等)

■問題点と分析ツール


ブロックチェーンによって、全領域の統一プラットフォーム化は完結へと向かうことになる。すでに、インターネットの普及の過程で、同様の未来予想図が語られて来たわけだが、ブロックチェーンがいわゆる『ラスト・1マイル』を繋ぐことになる。

そのような文脈で見ると、ブロックチェーンの真のインパクト/脅威の意味がわかってくるはずだ。しかも、日本企業がメガ・プラットフォーマーとなる可能性はかなり低い。主役は米国IT企業になるだろう。

また、ここまで徹底したプラットフォーム化が進展すると、国家単位の規制も及びにくくなる可能性が高い(あるいは逆にプラットフォーマーを国家が支配できれば超巨大な権力を持つことになる)。

このような環境で、日本企業はどう生きて行くのか。一介のビジネスマンの立場ではどう備えればいいのか。行政の役割は何か。それを考えるにあたって、どうやって問題点を浮かび上がらせればいいのか。

その問いにうまく答えることは極めて難しいが、一つの試案として、すっかり定番となった、法学者のローレンス・レッシグの有名な『社会における4つの規制力』の概念を借りてみることにする。その上で思いつく問題をいくつか列記してみようと思う。

レッシグによれば、社会において人のふるまいに影響を及ぼすものには、1. 法(Law)、2. 社会規範(Norms)、3. 市場(Market)、4. アーキテクチャー(Architecture)という4種類の規制力があるとする。

そしてサイバー空間においては、とくに4番目の『アーキテクチャー』が重要な規制手段だとする。レッシグの理論は広く受け入れられ、2000年以降、インターネットの進化もあって問題がどんどん身近になり、実態と乖離した法律の問題、大きすぎる規制力としてのアーキテクチャーの問題等、議論は花盛りとなった。

インターネットに次ぐ、革命的なテクノロジーであるブロックチェーンが出現して、ビジネスシーンの全域がデジタル化し、プラットフォーム化/新たな生態系化することが確実と考えられる今後の社会にどのような問題が起きてくるか、逆にその問題にどのような手段を持って対処するのが良いのか。

今後は、ネットとリアルが益々統合して一体化すると考えられるから、レッシグの議論をベースに、あらためて今後の問題を考えて見ることは、最も適当な出発点といっていいのではないか。

下記に、4規制力の典型事例を二つまとめてみた(NHKのフリーライダー視聴規制、公共空間における携帯電話利用事)。いずれも、4つの規制力がバランスしている状態が、社会が健全であることをご理解いただけると思う。4つのうち、どれに偏っても、社会のバランスは崩れ、なんらかの問題が起きるとされる。

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■アーキテクチャー過剰時代のメリットと問題点


だが、ここまでご説明してきたとおり、社会は遠からず(すぐに)次の図のように、慢性的な『アーキテクチャ』過剰時代を迎えることになる。レッシグの古典的著作『Code』でこの4つの規制力の概念が開示されて以降、『アーキテクチャ』過剰社会の問題点もすでに様々に語られてきた。この議論の成果も借りながら考えてみた。

その前に断っておくが、プラットフォーム化が全面化した社会には、様々なメリットがあるし、そうであればこそ、急速に浸透するとの予測にも蓋然性があるとも言える。ざっと次のようなメリットが思いつく。

<メリット>

・経済性向上

・効率性向上

・国際性向上

・悪しき政府規制/業界慣行等の回避

・透明性向上

・市場原則の徹底

・新たなビジネスチャンスの拡大

 (シェアビジネス等)

製品やサービスを提供されるユーザーの立場から言えば、安価で機能が圧倒的に良くなることは歓迎だ。しかも、競争環境としては透明で市場原則が徹底されると考えられるし、国境を越えた取引はずっと簡便になるから、新規参入はしやすくなる。意欲ある起業家/ビジネスマンにとっては歓迎すべき環境と言えるだろう。

実際、現在の新興国だけではなく、世界中から意欲ある参加者が殺到して、活気づくことになるだろう。だからこそ、この方向は今後、水が高い所から低い所に流れるように、進展していく可能性が高い。

だが、一方で、問題点も数多く予想される。長期的には時間が解決する問題もあるにせよ、少なくとも当面は、日本社会は大変混乱した状況となり、対処を誤るとせっかくのメリットが享受できないばかりか、長期的にも正常進化とは程遠い方向に向かってしまうことも考えられる。

<問題点>

・民主主義的正当性の喪失

 → アーキテクチャーの社会に及ぼす影響は多くの場合民主主義的な

   正当性の裏付けを欠く。

・一部企業の支配の行き過ぎ

 → すでに起き始めている問題だが、さらに加速する。

・政府介入/管理のしにくさ

 → ビットコインの例に見られる通り、国家の支配がどんどん

   及ばなくなっていく

・国家が超巨大な権力を持つ恐れ

 → 仮に国家がプラットフォーマーを支配出来れば、制限のない

   権力を振るう懸念もある。

・社会システムの急激すぎる変質

 → 変化はやむを得ないとしても、そのスピードが速すぎて、

   社会の側が受け入れ不能になる恐れがある。

・商慣行/暗黙知等の一掃

 → 特に日本の場合は(もちろん日本に限らないが)これが肌感覚として

   受け入れがたいように思える。

・企業内コミュニティの破壊

 → すでにかなり壊れているとはいえ、業界によっては、

   まだ濃厚に温存されている。

   さらなる破壊に社会は耐えられるだろうか。

・交換の多義性の衰退(贈与等)

 → 簡単に語ることは難しいが、市場が機械的な意味で

   完全にシステマティックに整備されればされるほど、

   今後浮き彫りになってくるのではないか。

・技術決定論の暴走と反撃

 → シンギュラリティの議論等を見ていると、すでに、

   技術決定論が暴走気味と言わざるをえないが、

   社会の側の強い反発も予想しておく必要がある。

多数のIT巨大企業の御本尊がある米国で、負組とされるプアー・ホワイトの怨念や感情が非合理の塊のようなトランプを米国大統領の地位に押し上げようとしている例に見るまでもなく、合理性が過度に社会をろう断するとその反発も非常に大きくなることは忘れるべきではない。

立場が違えば、問題点の見え方も、対処の仕方も当然異なってくるだろうし、メリットも問題点も、もっとたくさんあるとおっしゃる方もいらっしゃるだろう。

今回はこれ以上書く余力が残っていないため、ここまでとするが、今回のまとめを出発点として、各々の問題点をもう少し分析して、どのように対処するのが良いか、どうすべきなのか、まとめていこうと思う。

ただ、いずれにしても、どの立場にいようと、皆の予想よりずっと早くこの状況が起きてくることは覚悟しておいたほうがいい。そして、少しでも早く、準備を始めておくことをおすすめしたい。

(2016年5月29日「風観羽 情報空間を羽のように舞い本質を観る」より転載)