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日本の近未来像は人口問題抜きには語れない

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POPULATION DECREASE
Auris via Getty Images
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■活発に語られる人口減少問題

このところ、人口問題が、というより『日本の人口減少問題』が非常にシリアスに取り沙汰されている。本年の始め、週刊東洋経済は『人口減少の真実』というタイトルで特集記事(2月22日号)を組んだが、直近でも、今度は週刊ダイヤモンドが、『2020年からのニッポン 人口減少ショック!』という特集記事(7月19日号)を掲載している。今週15日と16日に佐賀県唐津市で行われた全国知事会は人口減少問題を中心に議論し、早急に少子化対策を取ることの必要性を訴えた『少子化非常事態宣言』を採択した。知事会議でこのような宣言を採択するのは異例なことだという。自治体の首長の非常に強い危機感が伝わって来る。

■今に始まった話ではない

もっとも、人口減少問題が深刻であるとの認識やそのための議論は、今に始まったことではない。『人口減少社会』という言葉が本格的に用いられるようになったのは、2005年12月に、「2005年国勢調査」の最初の集計結果である速報人口を統計局が公表したころからといわれており、2006年12月には、国立社会保険・人口問題研究所より、2100年には日本の人口は4000万人台まで減少する可能性があるという衝撃的な数値も公表されている。

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実際、2008年以降日本の人口は継続して減少していて、今まさに日本は『人口減少社会』の只中にある。しかも、その減少幅は年々拡大している。2014年6月20日に総務省が公表した平成26年(2014年)1月1日現在の確定値を見ると、前年同月比25万8千人の減少とあるから、東京都墨田区がそっくりなくなってしまったくらいの規模だ。(さらにいえば、経済活動を主として担う生産年齢人口(15歳~64歳)の減少幅は凄まじく、前年同月比116万6千人も減少しており、一方で65歳以上の人口は、109万9千人増えているから、社会保障給付の現役世代への負担増も半端でなない。)

統計局ホームページ/人口推計(平成26年(2014年)1月確定値,平成26年6月概算値) (2014年6月20日公表)

■市区町村の半分は消滅

では、どうして今になって、より一層人口問題が騒がしく語られているのか。どうやら、震源地は本年5月に発表された日本創世会議の試算のようだ。曰く、『2040(平成52)年に若年女性の流出により全国の896市区町村が「消滅」の危機に直面する』という。

もう少し提言の内容が詳しくわかるように、当該の新聞記事から引用しておく。

分科会は、国立社会保障・人口問題研究所が昨年3月にまとめた将来推計人口のデータを基に、最近の都市間の人口移動の状況を加味して40年の20~30代の女性の数を試算。その結果、10年と比較して若年女性が半分以下に減る自治体「消滅可能性都市」は全国の49・8%に当たる896市区町村に上った。このうち523市町村は40年に人口が1万人を切る。

 消滅可能性都市は、北海道や東北地方の山間部などに集中している。ただ、大阪市の西成区(減少率55・3%)や大正区(同54・3%)、東京都豊島区(同50・8%)のように大都市部にも分布している。


 都道府県別でみると、消滅可能性都市の割合が最も高かったのは96・0%の秋田県。次いで87・5%の青森県、84・2%の島根県、81・8%の岩手県の割合が高く、東北地方に目立っていた。和歌山県(76・7%)、徳島県(70・8%)、鹿児島県(69・8%)など、近畿以西にも割合の高い県が集中していた。

2040年、896市町村が消滅!? 若年女性流出で、日本創成会議が試算発表 - MSN産経ニュース

■人口減少問題に持ち込まれた新たな視野

日本全体の人口が、一億人を切って、数千万規模になることに自体ついては、北欧各国等、その規模で一人当たりのGDPを高く保ち、幸福度も高い国の実例もあるわけだから、お手本が存在する安心感もある。もちろん、日本とは社会も文化もまるで異なる国をお手本にすることの困難さはあるが、それでもまだ到達点がイメージし易いことは確かだ。だが、全国の半分の自治体が消滅となるとこれは只事ではない。まさに死活問題だ。自治体の首長が慌てるのも無理はない。しかも、どんなに今から対策を講じたところで、すでに大勢は決していて、多少なりとも影響を減じることができたとしても、焼け石に水である可能性が高そうに見える。

合計特殊出生率の過去最低は、2005年の1.289で、それに比べれば、昨今は、多少率は高まっているようだが、年代別の人口構成比が比較的高い『団塊ジュニア』に属する女性が出産適齢を超え始めた(1974年生まれは、今年40歳)今となっては、年を追う毎に、適齢期の女性の絶対数が急減するため、少々比率が上がったところで、これも焼け石に水だ。現実に、2012年の合計特殊出生率は、1996年以来16年ぶりに.1.4台を回復したものの、出生数は過去最低になっている。

しかも、自分も地方出身なので身を以て感じるのだが、今の地方都市には男女とも仕事がない。最近では、夫の所得だけでは生活が苦しいので、妻も働くことが多いが、女性の仕事も一部を除けば驚くほど低い条件であることが多い。勢い、若い女性は、多少なりとも仕事のある都市部に出て行くことになる。この状況を好転させるのは並大抵のことではない。

■旧来の労働の常識をひっくり返す必要

『生産年齢人口』の減少を補うには、海外からの移民か、高齢者の労働か、そうでなければ、女性の労働に頼るしかないという喫緊の事情もあり、女性には子どもを生んでもらうことと同時に、働いてもらわざるをえない。これには、保育所等のインフラの充実ももちろんだが、男性を含めたこれまでの労働慣行、労働の常識をひっくり返すくらいの覚悟で取り組む必要がある。

男女雇用機会均等法をめぐる議論に典型的にこの問題が表出しているように見える。そもそもまず、戦後の日本の男性の労働の常識(長時間労働、転勤の拒否ができない、単身赴任があたりまえ等)が生きている限り、働き手(男性)が子供を養うためには専業主婦が不可欠だ。男女雇用機会均等法は、その常識が支配する職場に女性も参入させることが前提となっているから、一人前に子供を育てていくためには、女性にも専業主夫が必要になる。これは事実上不可能だから、キャリアを重視する女性は大抵出産を諦めることになる。表面的にどう法律を変えてみても、長くここ(日本の職場)ですごしてきた男性の本音は、『都議会セクハラ問題』に例を見るとおり、驚くほど昔と変わっていない。女性が一人前に働いて、しかも子供を生むことができる職場を実現するのは、言うは易しだが、気が遠くなるくらい難しいことに思える。だが、本気で取り組むのなら、この問題こそ本丸だ。各自治体とも真剣にならざるをえない。というのも、女性に旧態依然であることを見透かされると、『枯死』の運命が待っているからだ。

■ビジネスチャンス/留意点

しかし、本当に、尻に火がついて皆が改革に取り組むとすれば、日本社会は劇的な変貌を遂げることになるし、ビジネスチャンスの所在も大きくシフトすることになるだろう。少々、荒っぽいが、明らかに起きて来るであろうことと留意点を列記してみようと思う。ご参考にしていただければ幸いだ。

1. 地域コミュニティにのみ頼ることはリスクが大きすぎる。

  SNSの有効活用は不可欠。

自治体の消滅はともかく、合併、集合、離散が活発になることは不可避だ。旧来の地域コミュニティ維持は益々困難になることは目に見えている。その一方、独居高齢者が激増する見通しもある。個人の側からもSNSの有効活用の巧拙はそれこそ、生死を分けることになりかねないし、公共サービスとしてのニーズも飛躍的に高くなっていくと考えられる。東日本大震災の直後、Twitterが大活躍したことは記憶に新しい。

2. ロボット/人工知能の導入ニーズは飛躍的に上がる

労働力が激減する一方で、ニーズが急増する、医療、介護、危険作業等では、ロボットの有効活用は必須になると考えられる。また、高齢者が増えて、一方で地域交通のインフラが衰亡するとすれば、自動運転車の導入も本格的に進む素地が整っていくともいえる。ロボットに仕事が奪われることを心配する以上に、ロボットをどう労働力をとして使いこなすかを考えていく必要がありそうだ。

3. 小売りからECへのシフトが進む

店舗を構えて集客するビジネスモデルがどんどん困難になる。特に地方では、加速度的にビジネスが難しくなる恐れがある。一方、その補填をするのがECだ。ただ、物流に労働力を割けなくなるから、自動運転車/ロボット/ドローン(ラジコンヘリコプター)等の利用が進むことが考えられる。

4. 省エネ/エネルギーの効率的利用は不可欠

人口減少時代に、自治体が巨大設備を保持することは、同時に大きな財政上のリスクを抱えることを意味する。人口の偏在、頻繁な移動、街全体のスクラップ&ビルド等が常態となる中、最小設備で最大効率を実現することを目標とせざるをえない(そういう意味では原発増設など考えない方がよさそうだ。そもそも老朽化した原発の廃棄だけでも負担は大きい)。そのためには、IT技術の利用は不可欠だ。街(シティ)も、家(ハウス)も、インフラ全般(下水道、電力設備等)も、『スマート』にならざるをえない。

また、日本の人口は減少するが、世界全体では少なくとも今世紀末まで人口は増え続ける。2013年6月の国連の推計では、2050年に世界の人口は96億人に達する見通しという(現時点での人口は推定73億人)。増加分の大半は、新興国で、しかも新興国の経済は先進国を目指して上昇しようとするから、世界の資源調達競争は過酷になり、資源価格高騰もさけられない。エネルギーの効率利用や、太陽光、地熱等の自国内資源の活用は今以上に重要な課題になる。

5. 75歳くらいまでは働くのが当たり前になる

国民皆年金制度ができたのは、1961年だが、その時点での平均寿命は、男65歳、女70歳で、支給開始年齢が60歳だから、5年~10年程度の受給が前提となっていた。現在では、男80歳、女86歳だから、その尺度でいえば、15歳程度繰り上げてもいいということになる。また、年金扶養比率(年金をもらえる高齢者を何人の現役世代で支えているかを示す比率)で見ても、1970年度末には、高齢者1人あたり約42人だったのが、2015年には2人になる見通しだという。平均寿命は今後もっと伸びるといわれており、制度の維持には無理があるのは明白だ。少なくとも個人の自覚としては、75歳くらいまで働くことを前提とした将来設計を考えておくことは不可避に思える。

6. 農業/観光は日本の主要産業に

これも巷では、多くの人が言及していることなので、あえてここで詳しく述べる必要もないと思うが、今後は都市集積が進むことを前提とすれば、余剰耕作地の利用には大きなビジネスチャンスもあるし、そうならならなければ日本の国内経済は立ち行かなくなる。

■新しい文明の構築の必要性

歴史人口学社の鬼頭宏氏は、著書『2100、人口3分の1の日本』*1で、日本はこれまで数回、人口減少の時代を経験してきており、いずれも気候変動や戦争、災害といった不幸に伴う出来事ではなく、文明の成熟化に付随する必然的な歴史現象だったという。だから、人口減少を感情的に憂うことなく、長期的な人口波動の一局面と理解し、闇雲な人口増加対策に汲々とするのではなく、『脱工業文明、すなわち、持続可能な新しい文明の構築』等、どのような社会をつくるべきか、しっかりと考えることが重要と説く。私もまったくその通りだと思うし、その文明のあり方やそれに相応しい生き方を構想することなしに、この問題を考えるのは害さえあると考える(その意味では、50年後も1億人程度の人口を保持するという、数値ありきの政府の『骨太の方針』はいかがなものだろう)。人口減少にもメリットとなる部分もあるし、それはむしろ積極的に評価しつつ、この機会に徹底的に考え抜いてみたいものだ。

*1 『2100年、人口3分の1の日本』 (メディアファクトリー新書)
作者: 鬼頭宏(歴史人口学者)
出版社/メーカー: KADOKAWA / メディアファクトリー
発売日: 2012/10/17
メディア: Kindle版

(2014年7月19日「情報空間を羽のように舞い本質を観る」より転載)

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