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イノシシと農家が闘う時代は終わろうとしている

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近年、全国的な問題になっている「野生鳥獣被害」島根県でも、増えすぎた野生動物が里山に出没し、深刻な農作物被害を引き起こしている。

とはいうものの、農作物を育てたことがない私たちにとって、その深刻さはまるで想像がつかない。実際、私も島根県に移住するまでは、その深刻さをイマイチ理解していなかった。

都会に住む私たちは「稲刈り体験」「芋掘り体験」と収獲ばかりを楽しみ、農家の仕事のほとんどが「メンテナンス」であることを忘れている。田植えも収獲も大切な作業には変わりないが、米農家の仕事のほとんどが、田んぼや稲の保守だ。

営業職の業務内容がクライアントのケアや契約準備なのと同じように、農家も収獲までの毎日に経費と労力をかけている。それなのに、収獲予定日の一週間前、イノシシやサルが田んぼに侵入して、稲を踏みつけ、稲穂を食い荒らす。

半年間かけて大切に育ててきたプロジェクトが、成立間近の一夜にしてすべて水の泡。荒れ果てた畑を目の当たりにして、その原因となった動物を恨まずにいられるだろうか。

私が移住した島根県邑智(おおち)郡美郷(みさと)町では、そんな農作物被害の対策として、捕獲したイノシシを食肉処理し「おおち山くじら」の名で販売している。

一般的に、駆除捕獲は野生動物の繁殖・出産期を考慮して、春から秋にかけての暖かい時期に行うため、捕獲した野生動物を衛生的に食肉処理するのが難しい。夏の暑い時期は、動物の心臓が止まったその瞬間から、肉も内臓も急激に痛み始めるからだ。

しかし、邑智郡美郷町では、農家が罠で捕獲したイノシシを生きたまま処理施設に搬入している。イノシシを捕獲する農家と食肉処理をする私たちとの協力体制がしっかりと築かれているからこそ実現できた、全国で唯一のシステムだ。

そのことにより、血抜きから解体までの作業を処理施設内で行うことができ、衛生的で鮮度のいいイノシシ肉が、季節に左右されずに製造できるようになった。

この「おおち山くじら」の処理システムは、全国的に高い評価を受けていて、2012年度には「鳥獣被害対策優良活動表彰」の農林水産大臣賞を受賞している。

その評価を支えるのは「イノシシは農家の天敵ではない。農業の副産物だ」と言い切る、農家の心意気だろうと思っている。

(2014年12月6日「senalog」より転載)

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