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女性が働きたくない国「日本」。(朝生容子 キャリアコンサルタント・産業カウンセラー)

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女性版ダボス会議とも言われる「2017世界女性サミット(GSW)」が5月11日から13日まで、東京で開催されました。GSWは先進国から新興国まで世界62カ国の女性リーダー1,300人以上が集まる大会です。

27回目の今回、大会の様子はすでに報道でも取り上げられていますが、ここでは女性のキャリアの問題に日々直面している立場から感じたことを述べます。

■女性が働きたくない国「日本」


世界的に見て、日本はジェンダーギャップが大きく「女性が活躍していない国」と言われることは各種データで知っていたつもりですが、海外から厳しい目を向けられていると実感したのがこの大会でした。

朝食や昼食時は、参加者同士、テーブルを共にし、交流を深めます。私はポーランドやフィリピン、中国等から来た女性達と話す機会があったのですが、彼女たちから「なぜ日本はこんなに女性の地位が低いのか?」と一度ならず質問されました。非難するというより、不思議でならない様子でした。

日本人として、自国に対するこうしたネガティブな印象を何とか拭いたいと思いつつ、語学力不足もあいまって、否定しきれないことがもどかしく感じられました。

海外の報道でも、同様の厳しさが感じられます。

本サミットでは、その年に女性のリーダー育成で貢献した人に「グローバルウーマンズリーダーシップ賞」を付与していますが、今年は日本の安倍首相が受賞しました。日本の歴代首相の中で、初めて「経済における女性の活躍」を政策の中心に掲げたことが理由です。

しかし、海外向け英語ニュースサイトである「ジャパン・トゥデイ」では、第二次安倍政権で25の閣僚の席のうち、3人しか女性がいないことをあげ、「安倍政権のウーマノミクスはいまだ途上にある。一層の強化が必要だ」とし、実績について手放しでは褒めていません。(「ジャパン・トゥデイ」 2017年5月15日付)

東京在住の外国人女性・家庭向けメディアの「サヴィ・トウキョウ」はもっと厳しく、この受賞について、「安倍首相が(女性活躍の)方針を実現することを世界が注目しているということを思い出させるため」と位置付けていました。(「サヴィ・トウキョウ」 2017年5月16日付)どちらも、安倍首相の実績を、まだ認めていないように思えます。

「グローバル及びアジア地域のメガトレンド」セッションでプレゼンテーションされたボストン・コンサルティング・グループのシニアパートナー&マネージングディレクターの津坂美樹氏は、以前はニューヨークで生活されていたそうです。

しかし、夫が日本赴任が決まり、帰日することになった際に、「日本は女性にとって働きにくいから帰国をためらった」と話されていました。海外生活が長いという事情はあるものの、日本人である津坂氏でさえ、母国に対して「住みたくない」という思いを抱くことに、ややショックを受けました。

■世界的な人材獲得競争に勝てるのか?


こうした海外からの目に対し、「調査は欧米の価値観に基づいているではないか」「日本には日本の良さがある」と私自身も反発を覚えないわけではありません。しかし、そう言ってもいられない現実があります。

前述の津坂氏のプレゼンテーションで取り上げられた、ボストン・コンサルティング・グループの予測によると、世界の人材不足は、2030年には世界全体で10兆ドルに上るとのこと。労働力不足は、少子高齢化が非常に進む日本だけの問題ではなく、近い将来、世界全体のものとなり、グローバルレベルで人材獲得競争が展開されると考えられます。

女性の社会進出と移民の促進は、日本における人材不足解消の有力な策として議論されています。しかし、日本に対する「女性が活躍できない国」というイメージが、予想以上に強いことをサミットで実感したことを思うと、女性と移民(あるいは女性の移民)が、働く場として日本を選ぶとは考えられないのです。

「お前に言われなくてもわかっている」という声が聞こえてきそうですが、男女雇用機会均等法世代としては、同法施行から今日までの歩みの遅さに、打ちのめされそうになるのでした。

■ジェンダーギャップ解消のカギとなる「透明性」とチェック機能


しかし、打ちのめされてばかりもいられません。このサミットでは、行政、企業等各界の、国内外におけるベストプラクティスや、男女リーダーたちの体験に基づく知見を学ぶことができます。参加者としては貪欲に吸収し、微力ながらも自分ができることから実践していくしかありません。セッションの数は、3日間で20近くに上りますが、その中でも特に印象に残ったものをご紹介します。

ジェンダーギャップを示す一つの指標は、男女の賃金格差です。厚生労働省の2016年の調査によると、フルタイムで働く女性の平均賃金は男性の賃金の73%です。経済協力開発機構(OECD)の2014年の調査では、加盟国の中で日本は、韓国、エストニアに次いで3番目に格差が大きいのが現状です。

「給与格差の是正:ベストプラクティス」と題されたセッションでは、今年3月に、ドイツで成立した「賃金開示法」の内容が紹介されました。これは、従業員200名以上の企業に、求められたら賃金体系の開示をしなくてはならないとしたものです。

この法成立の背景には、「ドイツでの男女賃金格差21%のうち、15%は、女性の雇用状況等により理由が判明できたが、6%は全く説明がつかなかった」という事情があったそうです。

企業活動を国が法律で管理することの是非について、議論はあるものの、まずは給与の男女格差について定量的に把握し、具体的に打ち手を取っていこうとする国の確たる姿勢が伝わってきました。

「証券取引所をリードする女性」のセッションでは、ジェンダーダイバーシティ推進のお目付け役としての証券取引所の役割が紹介されました。

タイ、マレーシア、カザフスタン各国の証券取引所のトップが登壇。タイでは、プミポン前国王の方針で、ダイバーシティ推進が進んできたそうですが、オーナー企業が多いため、「会社はオーナー個人のもの」という意識がまだ強く、コ―ポレイト・ガバナンスは、まだ途上にあるとのこと。そこで「透明性を高めることで広く資金を集められる」といったようにオーナーにとってのメリットを訴求することで、コ―ポレイト・ガバナンス推進を図っているそうです。

マレーシアでは女性登用の数値目標達成を義務化するクオータ制を導入、強力に推進されているとのこと。証券取引所が、ジェンダーダイバシティ推進の証明を求めることもあるそうです。

ジェンダーギャップについては、数値把握し透明性を高めることが解消を促進する有効策として、日本でも昨年から各企業の「女性活躍推進度」を公表する取り組みが始まりました。しかし、それを実行あるものとするには、チェックとフィードバックの機能が必要です。各国の証券取引所では、それが自分たちの使命と考えていることが、こうした事例からわかります。

マレーシアの証券取引所CEOは男性でしたが、同じセッションに登壇した、タイ、カザフスタンの証券取引所のトップは、どちらも女性です。

カザフスタン証券取引所のアリーナ・アルダンベルゲン理事長は、自国は国際的にみて、男女平等が実現されていると評していました。そのうえで、「自分は競争に打ち勝ってここまできた。しかし、女性の中には、そこまではしたくないという人が多く、その考えを変えていく必要性を感じている」と語ります。

■女性に共通の「後ろめたさ」


アルダベルゲン理事長の指摘のように、女性側が抱える課題についても議論が広く展開されました。

中でも女性自身が昇進・昇格に消極的である問題は、このサミットでも様々な角度からトピックに上がり、「社内外における『自分ブランド』の構築」「リーダーシップを目指すグローバルなキャリアパスの開拓」「男性リーダーとの協調構築」といった、女性リーダー候補に向けてのセッションも実施されました。

その中でもインパクトがあったのは、行政、企業のトップを担う数多くの現役女性リーダーの体験談です彼女たちも、第一線で働き続けることに葛藤を覚えた経験があることが、あぶりだされました。

「女性CEOフォーラム」では、BTジャパン社長で経済団体連合会の女性初の理事を務める吉田春乃氏が、「シングルマザーである自分は、キャリアに不利になると思って、子供がいることを職場には隠していた。」と語られました。

フィリピンのマグセイセイマリンタイムの社長兼CEOであるドリス・マグセイセイ・ホウ氏は、共に働く2人の息子がいます。自らの離婚経験について「自分にとってはポジティブな経験だった。しかし母としては、うしろめたさはぬぐい切れない」と話されています。お二方の話は、その時の苦しさが伝わってくるようで、胸が痛みました。

2人の話を受けたモデレーターのサラ・ゴードン氏(フィナンシャル・タイムズ ビジネスエディター)は、「(外に出て)働くことに後ろめたさを感じない女性が、果たしているでしょうか?」とコメントし、会場に共感の波が広がりました。

女性が外で働き、活躍すればするほど、社会的規範からの圧力は強まるのが現実です。「そんなに仕事ばかりして、家庭は大丈夫なのか?」「お母さんが家にいなくて、子供がかわいそう」といった内外のプレッシャーから、ビジネスにおけるキャリアを断念した例は、キャリアの相談を受けている私も、日々目にしています。

どんなに、「女性だって昇進のチャンスはある」「昇進のチャンスに備えておくべきだ」と背中を押されても、この「うしろめたさ」を解消しない限り、本当の意味での女性の活躍の実現は難しいと言えるでしょう。

■男性は「うしろめたさ」を感じていないのか?


本サミットでは、男性リーダーに対しても「家庭」における責任を問う場面がありました。

2日目の「男性CEOフォーラム」は、男性トップが自社におけるダイバーシティ推進の取り組みを紹介。しかしセッションの後、「あなたたちの『家庭』では、どんなダイバーシティ推進の取り組みをしているのか?」という質問があったのです。

家庭と仕事の両立のジレンマは、男性経営者にとっても課題であるようです。中でも資生堂社長の魚谷雅彦氏が「昔、娘が学校を休んだ同じタイミングで自分も会社を休み、食事を一緒にしたところ、『普通の家みたいだね』と言われてショックだった」というエピソードは強く印象に残りました。このエピソードは、家庭においては、男性の「活躍度合い」が女性より極端に低いことの象徴でもあります。

考えてみると、社会に出た女性は、「家庭との両立をどうしているのか?」と必ずと言ってよいほど問われるのに対し、男性が問われるのが少ないのは、不思議です。「外の仕事は男、家庭の仕事は女」という役割分担を暗黙の裡に前提としているからと思えます。

男性も女性も、家庭における「ダイバーシティ推進」について、もう一度お互いに、現状について問い直してみることが、企業においてもダイバーシティ推進の第一歩となるのだと思います。

■多様性自体が、多様性推進のヒントになる


性別、国籍、年代を超えて、ひとつの場に集まり交流することで、自分とは異なる視点からものを見るきっかけを得、それが自分自身の思い込みに気づいたり、悶々としていることへの示唆を見つけたりすることにつながりました。

さらに忘れてはいけないのは、この大会は「サミット(頂上)」であるということです。
サミットこの大会に集まった参加者は、ある意味、女性の中でも意識が高く、社会で活躍している人たちです。

しかし、山の頂上を高くするには、すそ野の広がりも必要です。そして、すそ野から頂上までは、言うまでもなく地続きです。

目先の女性管理職や取締役比率を上げるにとどまらず、どのようにボトムアップを図るか、それを未来につながるものとするかが、私たち自身が問われているのだと感じています。

【参考記事】

朝生容子(キャリアコンサルタント・産業カウンセラー)