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ビッグデータの本命は「保険」だ。 (中西崇文 国際大学GLOCOM准教授 主任研究員)

2015年07月26日 17時14分 JST | 更新 2016年07月23日 18時12分 JST

昨今聞かれるようになったビッグデータ。実はビッグデータと金融商品は今後最強のタッグとして我々の目の前に現れるようになるだろう。なぜ、金融商品がビッグデータとの相性がよいのか、現在の動きを追ってみたい。

■保険会社が自動車会社やカーナビ業社とタッグを組んだ

先日の日本経済新聞では、やさしい運転で割引、若者狙う「ビッグデータ自動車保険」 見出しが躍った。ソニー損保は、加速度測定データで測られたデータに基づき、保険料が安くなるというソリューションが始まった。また、あいおいニッセイ同和損保は、トヨタ自動車の「T-Connect」という、インターネットに接続されているカーナビを用いて、そのカーナビデータによって保険料を決めるというソリューションが始まった。

これらのソリューションの共通点は、事前審査ではなく、保険契約後の各人の振る舞いによって保険料が決まること、その振る舞いを確実に日々刻々と蓄積されるデータによって判断されるという点にある。

■そもそもビッグデータとは?

そもそも、ビッグデータとは3つのV(Volume・膨大な、 Varaety・多様な、 Velovity・更新、追加頻度が多い)という性質を持つデータのことを指す。このビッグデータを分析する目的に「最適化」がある。例えば、製造工程の機械すべてにセンサーをつけ、そのセンサーから入手されたセンサーデータにより異常を検知し、より品質のよいものを低コストで提供するための最適化計算を行う、といった利用方法がある。

実際、ジェネラル・エレクトリック社(GE)は2012年から、発電などの際に使うガスタービンなどGEのすべての製品に大量のセンサーをつけてインターネットにつなぎ、センサーから読み込まれたデータからリアルタイムのデータ収集、分析を行っている。様々な製品のセンサーから発生するセンサーデータが時事刻々とインターネットに流れ、それを集中的、かつ常に分析を行っている。この目的としては、GE製品の機器の有効利用だけでなく、大幅な効率化とコストダウンを目的としている。

事業者にとって、機器の有効利用は、機器を新たに導入するのではなく、これまでの機器を有効活用するという、「最適化」問題であるし、大幅な効率化とコストダウンこそ機器利用時の「最適化」問題のほかならない。この最適化が結局消費者の利益となって、還元される。ビッグデータは、うまく使えば日常生活の最適化に用いることができるのだ。

このように、これまでインターネット上に流れるデータやコンテンツと日常生活にギャップがあった。しかし今後はセンサーの廉価化が引き金となり、日常生活の中での生産活動がそのまま鏡のように映し出されたデータがインターネット上に流れることになるのだ。日常は時事刻々と目まぐるしく変わる状況について保存ができないが、インターネットにつながることによって、その日々刻々と変わる状況をデータとして保存できるのだ。

そこから我々は、過去に起きた事実を把握し、現在を最適化し、未来を予測して一早く対応することが可能となる。

■あなたが思っているよりデータは知っている

ビッグデータが他人事だと思うなら大間違いだ。あなたが持っているスマートフォン、どれだけのセンサーが取り付けられているか?タッチパネル、GPSセンサー、ジャイロセンサー、加速度センサー 、照度センサー、 近接センサーなど、思いつくだけでも非常に多種多様なセンサーの塊であることに気づくだろう。これらのセンサーは、我々消費者の同意を持って、全てデータを蓄積し事業者に利用されることもできるのだ。

センサーが安価になったことで、センサーが大量に増えただけではなく、そのセンサーから発生したデータを保存できるストレージも安価になったため、センサーから発生したセンサーデータがインターネット上に保存され、ビッグデータとなっているのだ。

あなたは、それらを持っていることに恐怖を覚えるかもしれない、自分がいつどのような状況で、何をやっているかを知るには十分すぎるセンサーデータだ。それが、「承認(agree)」をタップするだけで、このようなデータを事業者に供与してしまうこともできるのだ。

あなたは、さらにApple Watchをはじめ様々なウエアラブルデバイスを着用しようとしているかもしれない。これのウエアラブルデバイスを着用することで、より日常生活の中での活動を詳細に表すデータを時事刻々とインターネット上に送ることになる。

今や一人あたりのインターネット上に吐き出すデータは爆発的に増えつつある。逆にいうと、インターネット上でそれらのデータを集めて分析をすることによって、日常生活の中での無駄や目的達成といった、「最適化」を可能にする。つまりビッグデータが社会をより豊かすると言えるだろう。

例えば、あるウエアラブルデバイスの着用を始めたあなたは、なぜそれを付けているだろうか?ただのファッションかもしれない。それでもいい。健康維持を目的としている人にとっては、データによって健康異常をより早く検出してくれるだろう。ダイエットを目的としている人にとっては、データによって、自分の体重の推移をしっかり示してくれるだろう。我々はそのデータ分析の結果を見て日常生活の中での行動に移すことにより、今までよりも最適な生活を送ることが出来るようになる。

■あなた自身から発せられるデータが保険料の根拠になる

先に示した、ソニー損保やあいおいニッセイ同和損保は運転手の振る舞いをリアルタイムで取得する事によって、保険料を設定することが可能となっている。究極的には、事前審査を必要とせず、データから保険契約の可否が判断でき、保険料の決定ができるだろう。

これは、ビッグデータという名の下に、我々の何気ない日常生活での行動などの一瞬をマネタイズできることを意味している。それを着実に実現しつつあるのが、保険というわけだ。

普段の活動を記録したデータを他人と共有することは、ちょっと嫌悪感を覚えるかもしれない。しかし、あなたの保険料をあなた自身の行動履歴に基づいて決めれば保険料は安くなるかもしれませんよ、もちろん秘密を守りますよといわれたらどうだろうか。よっぽどな普段酷い運転をしていることがなければ、保険料が安くなることによる利益を得るために、我々は保険会社にそのような情報を提供したくなるのではないか。データ分析を利用した保険商品として、ビッグデータは新たな商品やサービスの提供に寄与しているのだ。

■日常生活の中から生まれるデータ活用

今後、我々がただ普通に過ごしているだけで、そのデータを提供することによってマネタイズができる日が来るかもしれない。例えば、普段の生活スタイルを記録すると同時に、病歴を提供するとする。それで個人を特定するのではなく、様々な病気や難病を治療するために分析するデータということで使うとなれば、医学学者や製薬会社が欲しがらないわけがない。

なんらかのインセンティブと交換で、日常生活の中での活動を記録するようなデータの提供を求めるかもしれない。つまり、我々はごく普通の生活をしているだけで、その日常生活の中での活動を記録したデータでマネタイズができる可能性が高いことを示している。

しかしながら、事業者にとっても、消費者にとってもプライバシーに関する問題も考えなければならない。これはデータを要する側と出す側のインセンティブとリスクとのバランス、および、信頼関係が重要である。例えば、個人情報保護法をはじめとする法整備もはじまっている。これはデータを利用するための法律改正である。

すべての人が、法改正だけでなく、データの価値をもう一度見直す時期にきている。データに関して関係のない人はもはやいない時代が来ている。データを通じて、通常の生産活動のみでマネタイズの可能性を生かすか逃すかはビッグデータ時代に生きる、我々すべての人々のデータに対する意識改革がポイントとなる。

ビッグデータは、ダイナミックにかつ静かに我々の生活をより豊かに変えつつある。

実はビッグデータによる新たな保険商品開発は、一番社会のインパクトを与えるビッグデータ利用であり、本命なのである。

中西崇文 国際大学GLOCOM准教授 主任研究員

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