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たかまつななさんの東大大学院合格に感銘を受けながら、社会人が大学院に入学することのメリットについて考えてみた(後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)

2015年05月14日 15時30分 JST | 更新 2015年05月14日 15時30分 JST
 

お嬢様お笑い芸人のたかまつななさんが東京大学大学院に合格した。

芸人というハードワークをこなしながらの今後の健闘に、心からのエールを送りたい。本人ブログによれば、『「お笑いを通して社会問題を発信する」お笑いジャーナリストを目指して、ジャーナリズムについて東大では勉強しております。』とのことであり、現在慶応大学と東大のWスクール状態であるという。


■大学院とは

もっとも、ネット上では祝福の声以上に非難の声が殺到しているようだ。「学部と院では違う」「東大に入るのは大変だけど、大学院はそうでもない」「文系で大学院行くのは無謀」などがその主なものである。

心無い批判についてはここでは置いておこう。さて、そもそも「大学院」とは、いったいなにものなのであろうか。学校教育法によれば、大学院とは、「大学の学部課程の上に設けられ、学部課程を卒業した人、およびこれと同等以上の学力を有すると認められた者を対象に、学術の理論および応用を教育研究し、文化の進展に寄与することを目的とするもの」である(学校教育法第99条)。

文化の進展に寄与する、とはいかにも大それた存在のようであるが、既に仕事を持っている社会人でも、諸々の理由によって、社会人学生として大学院に入学する(したい)ケースは多いものと思われる。かくいう筆者も、社会人大学院生として3年間仕事と家庭と学生の3足のわらじを履いていたのである。


■社会人が大学院に入学するメリット

では、ただでさえ忙しい社会人が、わざわざ時間とお金と何より労力をかけてまで大学院に通学するメリットは何であろうか。人により大きく異なる類のものであるが、筆者の経験を交えながら以下にまとめてみよう。

第1には、「上位の資格(学位)が取得できること」である。例えば大学教員の公募要件として、「修士以上の学位」は必須である。社会人経験を活かし大学教員への転身を目指すにあたっても、大学院を修了し修士又は博士の学位を取得する必要がある。ビジネスパーソンに根強い人気を誇るMBA(経営学修士号)や、臨床心理士となるためには、特定の大学院の過程を修了する必要がある。

第2には、「論理的な思考・文書作成能力を得られること」である。大学院の勉強は、自分の興味や専門に基づく研究課題について、先行研究(既に発表されている関連論文等)を参考にしながら修士(博士)論文を作成していくものである(一部の専門職大学院等では論文作成は必須ではない)。その過程において、ビジネスの現場で即使えるロジカルシンキングやビジネス文書の作成能力が必然的に身につくだろう。「何故そうなるのか、どこが問題か、どのようにすれば効率的に解決すればよいか・・・」。そういった発想が骨身にしみるのが、大学院での勉強の成果であるといっても過言ではない。

第3には「会社では出会えない人に出会えること」。これが一番の財産ではなかろうかと思う。社会人大学院には、様々なバックボーンを持った人材が集まっている。皆日々の雑務をこなしながら、大学院について調べ、入学願書を請求し、試験を受け合格してきた猛者たちである。彼らとの何気ない会話やディスカッションをとおして、自分自身を見つめなおす機会となり、ひいては大きな成長を得ることが可能である。一生の学友を得ることにもなろう(筆者は既婚であったので意識しなかったが、院生同士で結婚まで至るようなケースも耳にする。専門を極めながら婚活のできる貴重な機会なのかもしれない(笑))。


■通信制大学院に入ろう!

とはいえ、仕事に子育てにと、研究活動に没頭できないところが社会人の悲しいところである。「自己啓発休職」等の制度が整備されている一部の会社を除けば、社会人がフルタイム大学院生になるのはかなりの困難を極めるだろう。そこでお勧めしたいのが「通信制大学院」である。

通信制大学院では、社会人用の入試(ペーパー試験は課さずにレポートと業務歴等で判断する等)を設けていたり、オンライン上で履修が可能で通学が必要最低限で良いカリキュラムを準備していたり、履修期間が短期間であったりと、実に様々な配慮がなされている。当然に、通信制とはいえ正規の大学院であることには変わりはないので、修了の後には正式な学位が授与される。

ちなみに、筆者が通学した「武蔵野大学大学院通信教育部人間学専攻(修士課程)」の学費は、64万円~であり、通学制のそれと比べ35%の費用で済むというのがウリであった。履修については自宅でのオンライン学習をメインに行ったため、実際に通学したのは修士論文の指導を受けるための数回であったと記憶している。丁度入学が決まる間際に妻の妊娠が発覚し、在学中に子供が生まれとても自宅で勉強できる環境にはなかったが、職場の昼休みや出退勤時のスキマ時間を活用し、1年留年することで何とか修了することができた。公私ともに多忙を極め、当時は自分を顧みる余裕はとてもとてもなかったが、今となってみればいい思い出である。

少子化等の背景からも、現職のビジネスパーソンをはじめ、既に退職者された方や現在専業主婦の方にも、広く門戸は開放されている。日々漫然と時が過ぎることを良しとしないのであれば、大学院が提供する高度な知的資源を利用して、自身の知的関心を満たされては如何だろうか。


【参考記事】

(2015年5月14日「シェアーズカフェ・オンライン」より転載)