なぜ女性は管理職になりたがらないのか?(小紫恵美子 中小企業診断士)

2020年に指導的地位に占める女性の比率を30%まで引き上げるという政府目標、いわゆる"2030"が決定されたのが今から11年前の2003年。特にここ1年は様々な議論がなされてきました。最近では、経団連も当初難色を示していた数値目標をたてるなど、女性が活躍するのを支援する方向で成果が出始めています。
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2020年に指導的地位に占める女性の比率を30%まで引き上げるという政府目標、いわゆる"2030"が決定されたのが今から11年前の2003年。特にここ1年は様々な議論がなされてきました。最近では、経団連も当初難色を示していた数値目標をたてるなど、女性が活躍するのを支援する方向で成果が出始めています。

ただ、女性の立場からすると、こうした施策が追い風であると認識はしつつも、なんとなく釈然としない、という声も多く聞きます。それは、「私たちが過去からずっと望んできて、それが受け入れられた」という風にはなかなか思えないからではないでしょうか。労働人口減少や終身雇用の崩壊等の理由は理解できるものの、結局男性側の都合で「女性ももっと働け(それ以外の環境が変わっていないのに)」と言われているような感覚になったり、「急に政府から言われて組織も仕方なくやっている感じだから」という風にまだまだ見えてしまっています。

加えて、こうした急激な風潮の変化に女性の側の意識が追い付いていない、という面もあります。「あなたを管理職にしたい」と企業側から言われても、「自分には務まらない」と遠慮してしまうのです。

■なぜ女性は管理職になりたがらないのか

こうなる原因はいくつか考えられますが、たとえば以下のようなものが挙げられます。

(1)男女の性別役割分担を前提とした社会の様々な仕組み(社会保障制度、税制、人事制度等)

(2)小さい頃からの教育や社会規範による刷り込み(女性は常に男性を立てるべき、子供を産み育てることが女性の幸せ等)

(3)働く女性の仕事に対する考え方・気持ち(現在のような長時間労働や大きな責任を負ってまで仕事をしたくない、自分にはできないのではないかという不安等)

上記の原因となるものをひとつひとつ解決していければよいのですが、残念ながら(1)と(2)は、個人の力で解決するには時間とコストがかかります。そこで、(3)の部分について、個人でできることを列挙してみたいと思います。

■こんな風に考えることで女性も管理職に魅力を感じる

たとえば、処方箋として以下はどうでしょうか。

(1)管理職になるとより仕事が面白くなりそうだと思うこと

(2)「嫌われたくない」をやめること

(3)完璧な管理職など世の中には一人もいないと割り切ること

(1)管理職になるとより仕事が面白くなりそうだと思うこと

管理職になると、これまでは他人に指示されながら「やらされる」仕事が多かったのに対し、より裁量権が与えられます。また、部下を育てて今までの仕事を任せることで、より高度で大きな仕事をチームですることが可能になります。また、時間やタスクは自分の管理になるため、部下でいるときよりは融通が利くようになるという面もあります。

(2)「嫌われたくない」をやめること

管理職になったら、会社のミッションを達成することが求められます。そのためには、言いたくないことも部下に言わなくてはならないし、関係部署にも伝えなくてはならないこともあります。「嫌われたくない」という想いを持つ女性は多く、これが管理職になるのを尻ごみさせることもあると思います。

しかし、これはあくまでも仕事を前に進めるために、部下や自分を守るためにはどうしても必要な話。したがって、人格と仕事は切り離して考えるようにすることです。もし相手から、万全を期しても自分自身を否定するようなことを言われたら、嫌われても仕方ない、仕事でしたことだから、と自分を許すことも必要でしょう。もちろん、こうしたストレスを発散する自分なりの方法も持っておくとベターです。

(3)完璧な管理職など世の中には一人もいないと割り切ること

男女問わず、管理職になったからミスはゼロ、というわけにはなかなかいきません。もちろんそれを目指すのはよいのですが、新しいことにチャレンジしようとすればするほど、失敗のリスクもつきものです。しかし、今までと同じことをしていたら、それこそすぐに利益が取れなくなってしまうほど、現在のビジネス環境は激変しています。

男女雇用機会均等法施行後、女性が管理職となる時代を切り拓いた先輩方が頑張ってらっしゃる姿を見て、ああなりたくても自分にはなれない、と思ってしまう女性も多いと聞きます。同じことを過去、20代の自分自身も思ったことがあるので、とてもよくわかります。でも、だからこそ、それを理由に女性が管理職をあきらめるのは女性の活躍が望まれる今の時代、本当にもったいないと思うのです。

とすれば、失敗したときにそのダメージを小さくする手だてを考えつつ、ベストをつくすという姿勢で望むことが必要なのではないでしょうか。無責任に仕事をするということではなく、十分に準備はしつつもチャレンジすることを優先することこそ、これからの管理職には求められるはずです。

もっと多くの女性たちがこの(1)-(3)のように考えて、「これなら管理職になってもいいな」と思えるようにするには、目の前に楽しそうに仕事をしている女性管理職がいることが助けになります。同じ会社でなくても、他社でもいい、そういう女性が増えてくれば、「管理職になってもいいかも」と思える女性は増えるはず。管理職がいきいきと仕事をしている組織であれば、男女問わず、部下もいきいきと仕事ができ、組織全体が元気になる、そういう職場が増えていったら、と強く思います。

小紫恵美子 中小企業診断士 OfficeCOM代表

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