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文科省「6万人の高校生を世界へ」(若松千枝加 留学ジャーナリスト)

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「若者の内向き志向」が叫ばれるなか、海外留学に関心のある高校生がどれくらいいるのか、皆さまはご存知だろうか。

文部科学省「平成23年度・高等学校等における国際交流等の状況について」発表の高校生意識調査によると、「留学したい」と回答した高校生は42.3%。高校生の約半数近くは、大なり小なり、留学に興味を持っており、大人たちが「内向き」と揶揄してきた高校生たちは、意外にも世界へその目を向けているように思える。

しかし、ここに残念な結果がある。実際に留学に赴いたのは年間約3万3千人。全国330万人の高校生のうちのたった1%だ。大学進学後に留学を実現する学生もいるだろうが、せっかく関心を持っている高校生がこんなにいるのに留学を実現できずじまいだなんて、なんだかもったいなくはないだろうか。

いま文部科学省では2020年までに日本から海外への留学生を倍増させる官民協働海外留学支援制度「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」を実施している。民間企業から集められた支援金総額300億円を意欲ある学生に留学奨学金として支給。世界へ飛び立つ学生たちを支援する取り組みだ。同プログラムは、今まで大学生のみを対象としてきたが、今年から高校生向けプログラムが新たに発足した。2015年1月19日、文部科学省にてこの新しい高校生向けプログラム実施の説明会が行われ、高校関係者、企業、志願を希望する高校生自身が一同に会した。年間の留学高校生数3万人を6万人にすべく動き出した同プログラム、本稿ではその概要と課題を予測してみたい。

■単位なんかいらない。成長できる海外修行なら何でもOK。
「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」全体像については過去記事「国と企業が支援する海外留学奨学金で、留学生は倍増するか」を参照いただくとして、ここでは高校生プログラムに限って話を進めていく。

平成27年度の奨学金支給対象人数は300名(予定)。机に座って授業を受け身で受講するよりも、個人の自発的好奇心や独創性に富んだ留学計画こそ大歓迎だという。海外サマースクールで世界の頭脳と競い合うもよし、スポーツや芸術で海外指導者から指導を受けるもよし、ほかインターンシップや国際ボランティアなど、多岐にわたる海外修行計画が求められる。

留学期間は14日以上3か月以内と定められており、渡航先によって奨学金の額は異なる。現役の高校生ならだれでもチャレンジでき、出身高校も学業成績もいっさい関係がない。多様性が求められる現代社会にマッチした奨学金制度だと言えるだろう。

■試されているのは大人のサポート力
そんなプログラムにも、実施にあたって心配な点がいくつかある。まず第一の懸念は、はたして高校生が自力で独創的な留学計画をたてられるのか、という点である。

かつて錦織圭選手が「テニスで世界を相手に勝負したい」とフロリダ留学を決意したように、己の進む道が定まっている学生ならよい。そこまでクリアなビジョンを持っている学生はおそらく少数派で、多くの学生は「外国語が話せたらかっこいいかも」とか「なんだかわからないけど見たことない世界を見てみたい」など、まだ漠然としたイメージのなかにいるのではなかろうか。

そんなとき、周囲の大人がどう彼らに向き合うかが試される。周囲の大人とは学校の先生、親、教育や留学の専門家・カウンセラー、年上の兄弟姉妹などが該当する。バラエティに富んだ選択肢を示したり、彼らの興味のアンテナにさりげなくヒントを与えたり等、サポートの役割が求められることになるだろう。

■高校生の留学、一番の応援者は「学校」
次の懸念点は、申請要件に「在籍高校の学校長が教育上有益と認める留学計画であること」と記載されていることである。

高校生は大学生ほど長期のまとまった休暇がない。同プログラムの定める留学期間14日間~3か月未満の間在籍高校を留守にするのだから、もちろん学校側からなんらかの許可が必要だ。そもそも申請自体が、在籍高校を通じて行われる。

こうなると、本人の意志に加え「学校(あるいは「教師」)の意向」がおおいに反映することが予想される。申請書作成指導者が留学に対してどんな考えを持っているかで、学生の申請内容は大きく左右されるだろう。

総合的な留学の専門知識を持ち合わせている学校関係者はまだまだ不足している。筆者が幹事の一員として活動している(社)日本認定留学カウンセラー協会では定期的に留学アドバイザー向けセミナー・勉強会が開催、近年は高校・大学関係者の参加が急速に増えてはいるが、全国の職員数レベルから考えれば極めて少数だ。指導の現場では、自らの体験と伝聞に基づいたアドバイスが主となるのが自然ではなかろうか。

大学生とちがって、高校生の留学には学校が深く関与する。だからこそ、高校関係者がますます留学指導力を深めていかねばならない時代に突入したのである。

そしてこの状況下では、おのずと留学計画にもひとつの傾向が予想される。「独創性重視」が「トビタテ!」の特長であるが、現実は各高校で従来実施されている既存の留学プログラム起用が多くなりそうだ。国際教育に取り組んでいる高校では、すでに協定校でのサマースクール、NGO団体のコラボしての国際貢献活動、短期交換留学制度、など魅力あふれる留学カリキュラムを自前で実施している。

「トビタテ!」ではこれら学校主催プログラムの申請も可能としている。今回は初年度、まずは受け付けてみるという面もあるだろう。だが、今後いつまでも学校既存のプログラムを受け入れていては、留学生が追加して増えることにはならないのではないか、「トビタテ!」がなくたって留学したであろう既存の留学希望学生をスライドさせるのではなく新しい層の開拓が必要なのではないか、そんな素朴な疑問が筆者にはわいているところである。

■すべての学年にチャレンジの機会を
最後の懸念点は、平成27年度の申請締め切りが3月2日(月)だという点だ。高校生自身の願望発掘から決断、そして具体的な留学計画を詰めるまでに一か月強という強行スケジュール。いささか時間が足りない。

また、申請可能な学年も限られてしまいそうだ。3月2日(月)の時点では、新1年生はまだ中学に在籍しており、高校生ではない。今春卒業して新しい道に進んでしまう3年生も現実的には対象ではない。すると現実的に対象となるのは、2年に進級する1年生、3年に進級する2年生という2学年のほかは、中高一貫教育校に通う中学3年生などに限られる。このうち、新3年生は大学受験組もいるだろうから、申請者の多くは2年生で占められることになりそうだ。

本稿冒頭で触れたように42.3%の高校生は留学をしてみたいと回答している。42.3%の彼らにチャンスが与えられるよう、ぜひ今後、実施頻度が一年に一回から複数回になることを期待したいところだが、皆さまはいかがお考えだろうか。

留学の動向については、以下の記事もご参考を。
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若松千枝加 留学ジャーナリスト

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