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NISAの致命的な欠点について。 (高橋忠寛 証券アナリスト)

2014年04月26日 17時23分 JST | 更新 2014年06月23日 18時12分 JST

今年からNISAという個人投資家のための税制優遇制度が始まりました。NISA口座の開設数は2014年1月1日時点で556万件、年末には累計で865万件に達すると推計されています。金融業界は大盛り上がりでテレビCMも大量に流れていましたが、NISAとは一体何なのでしょうか?そしてわざわざ利用するだけの価値はあるのでしょうか。

NISAとは、少額投資非課税制度の愛称で、読み方は「ニーサ」といいます。制度のモデルである英国のISA(Individual Savings Account)に日本の頭文字「N」を加えたものです。

通常、株や投資信託など、資産運用で利益を得ると税金がかかります。しかし、NISAを利用すると税金がかかりません。これが最大のメリットです。無制限ではありませんが年間100万円までの運用から5年以内に得られた利益が非課税となります。これが5年続きますので、最大500万円まで資金を投入出来ます。しかしこの制度はメリットだけではなく、デメリットもあります。しかも相当に深刻なデメリットです。

■NISAのメリット・デメリットとは

メリットはすでに説明したとおり利益に税金が掛からないことです。100万円の投資が5年後に120万円となっていた場合、20万円の利益に20%の税金がかかります。手元に残るお金は116万円です。しかし、NISA口座での投資であれば120万円がそのまま手元に残ります。

注意点は非課税枠(1年あたり100万円)の再利用が出来ない点です。一度投資したものを売却してしまうと、その枠を使って新たに投資をすることが出来ません。使い残した枠があっても、それを翌年以降に繰り越すことも出来ません。

デメリットは、税金がかからない代わりに損が発生していても損益通算や損失の繰越が出来ない事です。たとえばA社の株で利益が出て、B社の株で損をしていれば、両方を合算して利益の額を計算します。これが損益通算です。この場合、損益通算をしても利益が出ていれば税金はかかりますが、損失が多ければ税金はかかりません。さらに、その損失を持ち越して翌年の利益と相殺する事も可能です。これが損失の繰越です。繰越は最大3年まで可能です。

いずれも損失が発生した際に役立つ仕組みですが、NISAを利用した投資で損が発生してもNISA外の口座(一般口座や特定口座)の利益と相殺は出来ません。損失の繰越も出来ません。その逆に、NISA外の口座で損をしてもNISAで発生した利益と相殺する必要もありません。

さらに、NISAには致命的な欠点があります。最長の投資期間である5年を経過した時に損が発生していると、損益通算や損失の繰越が出来ないばかりか、「その時点の価格が取得価格」となってしまう事です。これはどういう意味かというと、100万円で投資した株が、非課税期間終了時に80万円になっていたとします。すると、このケースでは80万円で取得した事になります。低い価格で取得したことになれば、その分売却時の利益が増えて税金が余計に掛かってしまいます。たとえばその後120万円で売った場合、差額の40万円が利益となり、税金は8万円です。本来ならば取得価格は100万円ですから、20万円の利益で4万円の税金のはずが、余計に4万円も取られているわけです。

しかも、これは利益が出ているのでまだマシなケースです。本来ならば損をしている90万円で売ったとしても形式上は10万円の利益が発生しているとみなされ、税金も取られてしまうわけですから、踏んだり蹴ったりです。

■何に投資するか

では、この致命的な欠点をふまえて、NISAを効率的に活用するには、どうしたら良いのでしょうか。

答えはズバリ、イチかバチかの大きなリターンを狙う投資ではなく、価格変動の少ない安定的なリターンが期待できる商品に、上限の5年間という長期で投資することです。

投資信託は運用の専門家が多くの投資家から集めたお金を複数の株式や債券などに分散して投資を行います。多数の銘柄に分散して投資をすることにより、全体の価格変動を抑えた運用が期待できます。

一方、株式投資は投資した会社の株価の上昇や配当に期待して投資を行います。数年で株価が何倍にもなることもありますが、会社の業績が悪くなれば、株価が大きく下落したり、倒産すれば価値がゼロになってしまう可能性すらあります。会社によってはある程度まとまったお金がないと投資できない株式もありますから100万円という枠は個別の会社の株を買うには非常に窮屈なわけです。

こういった特徴を考えると、NISAとの相性は投資信託の方が良いでしょう。その理由は、金額単位での投資が可能な為、100万円の枠を使い切りやすく、少額でも利用可能だからです。株式投資は、100万円という金額制限を考えると多数の銘柄には分散出来ませんし、当初は長期投資をする予定であっても会社の状況によっては急に売らないといけない場合もあるでしょう。従って、特に安定的な資産運用を目指す人にとって、株式投資はNISAでの取引には向かないでしょう。

一般社団法人投資信託協会によると、国内投資信託だけでも2013年10月末現在7,683本もの投資信託が運用されています。効率的に運用をしたい投資家は、既に説明した投資信託のデメリットを考慮して手数料が安く、商品の仕組みがシンプルで分かりやすいものに投資するべきです。

金融機関はNISA向けと称して、多くの新商品を導入していますが、投資信託の実力は運用会社や担当者によって大きく異なります。投資信託を選ぶ最大の判断材料となる過去の実績が確認出来ない新規設定商品への投資は注意する必要があります。

マネー関連の情報については以下の記事も参考にして下さい。

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■まとめ

政府・与党は、2015年以降の制度変更についても検討を進めています。今後の制度変更の行方をチェックすると同時に、NISAのメリットだけでなくデメリットや欠点をしっかり理解して、税制優遇制度を効率的に活用して商品を選択していくことが大切になります。

高橋忠寛 FP・証券アナリスト