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スカイマークがミニスカ制服の代償として負う経営リスク (榊裕葵 社会保険労務士)

2014年04月15日 18時26分 JST | 更新 2014年06月14日 18時12分 JST

先日、航空会社のスカイマークエアラインにおいて、新たに採用する客室乗務員の制服に賛否両論が巻き起こっていた。偶然見たニュース番組の街角インタビューでは賛成と反対が半々くらいであった。お茶の間の話題としては賛成でも反対でもどちらでも良いと思うのだが、私がもし、スカイマークの顧問社労士であったならば、このミニスカート制服は直ちに撤回すべきと助言するであろう。本稿ではその理由を明らかにしていきたい。

■ミニスカート着用は業務命令として有効か

まず、膝上15cmのミニスカートの制服を客室乗務員の女性に着用させることが業務命令として有効かどうかが問題になる。

この点、日本国憲法では個人に対して表現の自由や自己決定権を認めているので、本来的にはどのような服装をするか(逆に、しないか)は各人の自由である。しかしながら、本人が認識のうえ、ある会社と労働契約の関係に入ったならば、その会社の就業規則等に基づき契約上の制限を受ける場合もありうるというのが裁判所の考え方である。

例えば、ホテルで接客の業務に従事する労働者が、「こんなダサい制服なんか着られるか!」とホテルの制服の着用を拒んだり、工場で働く労働者が「格好が悪い!」とヘルメットや安全靴の着用を拒んだりすることは認められないであろう。ホテルマンがホテルの制服を着用することや、工場作業者がヘルメットや安全靴を着用することは労働契約の前提条件であることは明らかであるし、それは社会通念上も是認される業務命令だからである。

ここでポイントになってくるのは、会社が一定の服装や髪型などを、業務命令として労働者に強制できるのは、あくまでも「合理性や社会的相当性が認められる範囲で」ということである。今回問題となっている「膝上15cmのミニスカート」は果たして、合理性や社会的相当性があると言えるのだろうか。

この点、通常の女性が飛行機の客室乗務員の求人に応募する際、膝上15cmのミニスカートで勤務しなければならないことまで想定して応募しているとは考えにくい。また、飛行機の客室乗務員がミニスカートで勤務している光景は、社会的通念上も一般的なものであるとも思えない。

このように考えていくと、スカイマークが客室乗務員に対してミニスカート着用での勤務を命ずるのは、個別に同意があった場合はともかくとして、一律に対象者全員に強制することは、合理性や社会的相当性を逸脱し、「権利の濫用」になる可能性が高いのではないかと私は考えている。望まない服装での勤務を強要されてとして、慰謝料を求められるリスクも生じるであろう。

■ミニスカートで乗務させた場合のさらなるリスク

さらに言えば、ミニスカート姿で客室乗務員を乗務をさせることは、次の3つの点でも会社にとってリスクファクターであると私は考えている。

1点目は、ミニスカートが乗客からのセクハラを誘発する可能性があるという点である。もちろん、最も悪いのはセクハラ行為をした乗客であるが、被害を受けた客室乗務員が、「会社がこのような破廉恥な服装で勤務を命じたから私はセクハラを受けたのだ」と慰謝料を求めて会社を訴えた場合、会社は敗訴をする可能性が相当程度あると思われる。

2点目は、サービスの低下が懸念される。今回の制服の導入は話題性を狙ったものであろうが、航空会社のサービスとしては的外れであると私は感じずにはいられない。

私も男性であるから、確かに、若い女性の太ももを見て「いい目の保養になった。」と冗談レベルでは思うかもしれない。しかし、実際のところ飛行機に搭乗して客室乗務員に求めたいことは、スマートでキビキビとしたサービスである。ミニスカートでは下半身が気になって、お客様の荷物を上部の棚に入れるときや、床に落ちたものを拾うときなど、集中力を欠いたり、動作が制約されてしまったりする恐れはないだろうか。

3点目は、「安心感の喪失」である。飛行機は、「安全」であることが最も重要な乗り物であることは疑いないであろう。その意味で、客室乗務員はサービス要員のみならず、保安要員でもあるということを忘れてはならない。例えば、JALの客室乗務員の凜とした姿は、非常事態でも冷静に対応してくれるという安心感をもたらしてくれる。

だからこそ、「色気」を売りにするべきではないのだ。もし、飛行機が着陸に失敗して緊急脱出をしなければならないという事故が発生し、不幸にも避難が遅れて死傷者が出てしまった場合を想像してほしい。ミニスカートを着用した客室乗務員も緊急事態には服装のことなど気にせず全力で避難誘導に当たるだろうが、世間はそうは取ってくれないかもしれない。「あんなミニスカートの制服など着せるから避難誘導が遅れたのだ。」など、あることないこと週刊誌に書き立てられる恐れを否定できないであろう。これは、大きな経営リスクである。

働き方に関しては以下の記事も参考にされたい。

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■結び

私が思いもつかないような深い理由でミニスカートの制服を採用したというならば何も言うことはないが、もし、話題づくりや差別化の目的でこの制服を採用したというならば、直ちに中止すべきであると私は考える。

飛行機に搭乗するお客様は太ももよりも安全性を求めているだろうし、従業員にセクハラで訴えられるリスクまでも抱えて、この制服を採用する意味は、果たしてどこにあるのだろうか。何とも疑問の残る経営判断である。

特定社会保険労務士・CFP 榊裕葵

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