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なぜ女性活躍推進法で男性の働き方が変わるのか?(後閑徹 人材・組織開発コンサルタント)

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8月28日、女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関わる法)が成立しました。いよいよ女性活躍の推進が法的根拠をもって動き出します。男性の中には、他人事のように捉えている方もいるかもしれません。しかし、この法律は女性だけを対象にしたものではなく、男性にも大きな影響を与える内容になっています。

■男性に直接関わる分野は? 
課題分析・行動計画の策定・届出・情報公開が義務付けられる(労働者300人以下の事業主は努力義務)8分野のうち、直接男性に関係するのは、次の3分野です(厚生労働省 女性活躍推進法特集ページより)。

(1).長時間労働是正等働き方改革
これまでの働き方を直接変える問題です。残業してくれと言えば出来る働き方がこれまで評価されてきましたが、今後は能率重視の働き方が評価されるようになります。残業を労ってもらえたのが、今度は注意されるようになるのです。

(2).女性の積極登用・評価に関する取組
1年前に調査した中に、時短労働はマイナス評価という上場企業がありました。今後、このような評価規定は改善されていくでしょう。そして、これは(1)と相まって時間評価から能率評価へと、全社的な評価軸の変更を志向することが予想されます。これまで「長時間働ける」という時間無制約の働き方を出来る点が男性の強みでした。この強みが強みでなくなる可能性があります。

(3).性別役割分担意識の見直し等職場風土に関する取組
男性を中心に形成されてきた職場風土の見直しを迫られます。今まで男性にとっては当然だったことの数々が俎上に上げられ、問題提起されることとなります。

このように女性活躍推進は、女性管理職の増加や働く女性を育成・サポートするだけのものではありません。男性を含めた働く人々のこれまでの働き方、組織の在り方を直接、大きく変革しようという取り組みに他ならないのです。そして、このことはつい先日、答申集約前の最終段階である意見募集(パブリックコメント)を終えた第4次男女共同参画基本計画素案で、より具体的にみてとれます。

■法律を先取りする大手企業も?
例えば、「男性中心型雇用慣行の見直し」の項の中では長時間労働の具体的抑制策として、時間外労働の上限規制や勤務間インターバル規制(前日の勤務終了から翌日の勤務開始までの一定時間の間隔を空けることを義務付ける制度。先日、KDDIで導入されると話題になりました)の導入・有給休暇連続取得等が検討されています。

特に超過勤務については、その現状分析をした上で、数値目標・達成期限の公表が求められています。衆人環視の中で社会的圧力を利用しながら長時間労働の抑制を図ろうという狙いです。

また、素案では、配偶者手当の在り方・短時間労働者の被用者保険の適用拡大・第3号被保険者の縮小(=いわゆる専業主婦の「130万円の壁」問題)の検討が予定されています。これを先取りするように、トヨタが配偶者手当の廃止を検討・調整しているとのニュースがありました。

今後、長時間労働の抑制と働きたい女性がより働きやすい税制・社会保障へと制度の変革が進んでいくことになります。既婚者の方でも、「130万円の壁がなくなる(あるいは下げられる)ならもっと働いて欲しい・働きたい」という方は多いのではないでしょうか。

共働き世帯でも、家事・育児は女性が担っている主たる理由は「男性の残業の多さ」にあります。とすれば、残業が抑制され、且つ、パートナーもバリバリ働く状況の中で、男性が今までのように「家事・育児は女性にお任せします」、とは言っていられないことになります。もう男性に育児・家事参加から逃げる理由はないのかもしれません。

■男性の育児・家事参加は外堀からも埋められる
少し前の話ですが、CO2削減に関するチームマイナス6%運動が盛んだった頃、蛇口の水を出しっぱなしで歯を磨いていた私は、小学生の姪に注意されたことがあります。「それはエコじゃないよ。歯を磨くときは水を止めて!」と。同様のことが、これから多くの家庭でも起こるかもしれません。

ワークライフバランスがとれていない父親に、「家のことしないパパってパパの仕事の半分しかしてないらしいよ」と子どもが指摘してくる姿を想像してみてください。果たしてその時、どう答えるでしょうか。国(行政)の仕事を受注している某大手PR会社の方の話によれば、このように子どもを通じて親・大人を啓蒙するというのは行政がよく採る手法だそうです。

幼児から高齢者までを対象としたメディアによる意識改革・理解促進の必要性につき、素案ではわざわざ1項を割いています。パートナーと子どもが一緒になって、「早く帰って来い運動」、「家事・育児を分担せよ運動」を展開する日もそう遠くはなさそそうです。

「男性は女性活躍推進に巻き込まれる」どころか、「これまでの男性中心型労働慣行・男性の生き方を変えていくこと自体が女性活躍推進の重要な核」となっているのです。

■「社畜」からの脱却を
ワークライフバランスが崩れ、会社に全てを捧げているような働き方をしている状態をネットスラングで「社畜」というようです。たいていは自虐的に使われるこの言葉の裏側に、私は微かながら強烈な自負を感じることがあります。それは、「これだけ長時間働いている自分は会社に認められている。貢献もしている」「家族のために頑張って働いている」という自負です。

以前社畜であった私も当時、そんな自負がほんの少しだけ心の片隅にありました。しかし、会社や家族が自分と同じようにこの「社畜」状態を評価しているとは限りません。もしかしたら、「会社のために」と思ってコンプライアンス違反をする人間のように、それは単なる思い込みなのかもしれません。家族は「社畜」状態にあるパートナーに絶望しているかもしれません。

男性中心型雇用慣行の変革のためには、従来の働き方にあった暗黙の了解や前提、思い込みをひとつずつ拾い出し、検証していかなければなりません。それは、自らのこれまでを顧み、これからの自分を見据えることを意味します。

もし、急速に変わりゆく社会状況の中で従来の働き方に疑問を抱いているのなら、自分事として職場の女性活躍の推進に関わってみては如何でしょうか。それは女性活躍という社会的課題の解決のみならず、自分が成長する場である組織の在り方、自分の働き方・生き方の変革に直接つながっていくのですから。

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後閑徹 人材・組織開発コンサルタント Redesign Academia代表