東日本大震災5周年追悼式など

一睡もできないままにテレビ画面を呆然と見続けながら、党本部との連絡に追われていたあの夜のことを一生忘れることはないでしょう。

石破 茂です。

本日、天皇・皇后両陛下ご臨席のもと、東日本大震災五周年追悼式が挙行されました。あの震災・大津波・原発事故から5年、「もう5年も経ったのか」「まだ5年しか経っていないのか」、実感はそれぞれの人によって異なるのだと思いますが、いずれにせよ「風化させない」ということはとても大切なことです。

辛くて苦しかったことの記憶は忘れ去りたいものだということを割り引いても、もう一度気持ちを新たにして取り組まねばならないと痛感させられます。

政調会長であった私は当日、最終盤を迎えた名古屋市議会議員選挙の応援に入っておりました。

14時46分、一連の遊説を終え、ある候補の事務所で、次の遊説地であった新潟に向かうための時間調整を兼ねた激励挨拶をしていた時に大きな揺れを感じたのですが、何が起こったのかよくわからないままに中部国際空港に向かい、そこで初めて大変な事態になっているらしいことを知りました。

しかし、テレビの映像を通じて見る光景はとてもこの世のものとも思われず、飛行機の時間が切迫していたこともあってそのまま新潟に入りました。

新潟での集会は中止となり、早急に帰京せよとの谷垣総裁のご指示で帰京を試みるも、関越道・上越新幹線ともに不通、大阪・伊丹への飛行機便があるかも知れないととっさに思って新潟空港に行ってみるとなんと一席だけ残っており、何とか伊丹までは辿りつきましたが、帰京しようにも羽田行きはほとんどが欠航、東海道新幹線も東名・名神高速道路も不通、奇跡的に翌朝一番の羽田行きの切符を手に入れ、その晩はようやく探し当てた中の島のホテルに泊まりました。

一睡もできないままにテレビ画面を呆然と見続けながら、党本部との連絡に追われていたあの夜のことを一生忘れることはないでしょう。

野党自民党として、発災翌々日の13日には「震災対策基本法の制定」「被災地からの要望にワンストップで対応できる復興省的な組織の創設」などを内容とする緊急対応方針を決定したのですが、当時の菅政権の対応は誠に鈍く、最初は基本法も復興庁も要らないという姿勢で、侃侃諤諤の議論と紆余曲折の末に基本法が成立したのが発災後3か月を経た6月、復興庁が発足したのは翌年2月という有り様でした。

今更民主党の批判をしても始まりませんし、そもそもそのような人たちに政権を奪われた責任は自民党にあることもよくわかっております。自公政権が発足して3年以上経った現時点においても、なお努力すべき点は多々あるのであって、もう一度初心に還って対応の更なる改善をすべきなのでしょう。

発災数日後、菅総理から谷垣総裁に対して連立政権に向けた入閣の打診の電話がありました。

谷垣総裁に「『内閣は連帯して国会に責任を負う』との憲法の趣旨から見ても、震災対応だけに限った連立などあり得ず、もし菅総理に本当にその気があるのなら基本政策についての協議を速やかに行うべきである」との意見を政調会長として具申しましたが、もしその協議が行われていたとしたら、後の展開は随分と違ったものになったに違いありません。いろいろなことを考えさせられた今日3月11日でした。

犠牲となられた方々の御霊の安らかならんことと、ご遺族のご平安を祈ります。

5日から6日にかけて、BSジャパンの番組収録でJR九州の「ななつ星in九州」に佐世保から由布院まで乗車する機会に再度恵まれました。

今回のテーマは「日本におけるブランド力」というもので、小谷真生子さんとの対談などに備えてほとんど夜通し、関係の文献を読んでおりましたが、新しい気付きも多くあってとても有り難く思いました。

唐池JR九州会長の「1時間や2時間なら誤魔化しも効くが、1泊2日、ましてや3泊4日では誤魔化しは効かない。世界一の列車を目指すというのはそういうことだ」との言葉通り、九州ブランド、日本ブランドを体現して走る「ななつ星」に感銘を新たに致しました。

それにしても、風景や人々の生活が間近に感じられる在来線の旅は、本当にいいものですね。新幹線には絶対にこの味わいはありません。「早く、安く」といういままでの価値観とは対極にあるのがこの「クルーズ・トレイン」なのであり、来年春に運行を開始する「四季島(しきしま・JR東日本)」、「瑞風(みずかぜ・JR西日本)」にも大いに期待しています。

新たな価値観に違和感を持たれる方は当然ありましょうが、「低欲望社会」(大前研一氏)に対応する一つのモデルではないでしょうか。

週末は12日土曜日が「田勢康弘の週刊ニュース新書」出演(テレビ東京系列・午前11時半)、「東日本大震災から5年 甦れ!東北の鉄路」出演(BSフジ・正午・収録)、自民党鳥取県連自民党大会出席者・表彰者との懇談会。

13日日曜日は自民党大会と大会後の懇親会(午前10時・グランドプリンスホテル新高輪)。

という、久しぶりに少し余裕のある土日です。地域再生法案や国家戦略特区、地方分権関係の法案審議も近々始まりますので、その準備にも時間を充てたいと思っています。

今週後半の都心は一転、冬の寒さとなりました。皆様お元気でお過ごしくださいませ。

(2016年03月11日「石破茂オフィシャルブログ」より転載)

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