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シン・ゴジラなど

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石破 茂です。

現在ヒット中の映画「シン・ゴジラ」についてのコメントを求める取材がここのところやたらと多くて、やや困惑しています。先回の当欄で「いかに圧倒的な破壊力を持つゴジラとはいえ、あくまでも天変地異的な現象に対して、国または国に準ずる組織を対象とする防衛出動が自衛隊に下令されることには違和感を覚える」と書いただけなのですが、これがこんなに反響を呼ぶとは思いませんでした。

「お前はそんなことばかり考えているのか!」というお叱りには恐れ入るばかりですが、勿論私も朝から晩までゴジラへの対応を考えているほど暇ではありません。しかし、このような極限事例について考えることは、一般的な法律の思考回路を錬成する意味において有意義なものだと思っています。自衛権の行使である「武力の行使」と警察権の行使である「武器の使用」とは明確に異なります。「警察比例の原則」が厳格に適用される警察権の行使である限り、戦車や戦闘機や護衛艦が強力な火器を使ってもそれは「武器の使用」なのであり、対象が自然現象で、自衛隊が災害派遣においてこれを除去するのに用いられる限り「道具の使用」(法的に確立された用語ではありませんが)として評価されると考えています。

何だか理屈をこねくり回しているようで恐縮ですが、防衛法の基本が理解されないままに国会で防衛法制議論が重ねられていることにはかねてから強い危機感を感じていますし、自衛隊の行動と権限を定める自衛隊法が出来ることのみを列挙したポジティブ・リストであるだけにその思いはなおさら強いのです。

ゴジラ襲来よりも可能性が高いのは北朝鮮のミサイル発射であり、外国等による領土・領海・領空侵犯でしょう。領土や領海の侵犯に対しては警察や海上保安庁が対応し、能力的に不足する場合には自衛隊が治安出動や海上警備行動で警察権の行使として対応する、という現在の法制は本当にこれで万全なのでしょうか。侵されているのが国家主権で、侵している主体が外国勢力の場合には自衛権で対応するのが国際的な常識のはずです。それでも領土や領海侵犯に対しては警察や海上保安庁が一義的に対応しますが、領空侵犯の場合は「航空警察」「航空保安庁」が存在しないため、いきなり航空自衛隊が自衛隊法の「領空侵犯措置」で対応することになります。これも警察権の行使として整理されていますが、本当にこれで十分な抑止力が働くのか、早急な検証と法整備が必要と考えています。

グレーゾーン法制とこれに関連する法整備が安保・平和法制でもほとんど等閑視されてしまった背景には、防衛法制に対する理解不足・無関心と、またこれを議論すること自体を批判し、揶揄する雰囲気があると思われます。昭和53年に「いざとなったら超法規」ということを戒め、有事法制整備の必要性を訴えて金丸信防衛庁長官に解任された栗栖弘臣統合幕僚会議議長(故人)の時代と本質的にはあまり変わっていないのかもしれません。
 
この問題につき中川八洋・筑波大名誉教授は「領域侵犯」と題する論文(平成11年・日本政治文化研究所研究紀要)で精緻な論考の中にもほとんど罵倒に近い言葉で政府の姿勢を論難しておられますが、久々にこれを読み返してみて、教授独特の過激な表現はともかくとしてそのお気持ちがわからないでもありません。
 
中国船の尖閣海域における行動、北朝鮮の潜水艦発射型ミサイルの発射など、不穏な情勢が常態化・顕在化しつつあります。「ああ、またか」と日本国民の反応が鈍くなってしまうことが一番恐ろしいことであり、更なる努力の必要性を痛感している昨今です。

週末は本日26日夕刻に地元へ帰って二つの祝賀会に出席した後、翌27日土曜日朝に一旦帰京、自民党千葉市連合支部平成28年度総会で講演(11時・京成ホテル)、城崎温泉観光関係の方々との懇談(19時半・兵庫県豊岡市)、28日日曜日は「長野すけなりの政界キーパーソンに聞く」出演(午前8時45分・ラジオ日本系・収録)、養父市国家戦略特区関係者との懇談ならびに視察(午前10時~午後1時・やぶファーム・やぶの農家・山陽アムナック・古民家『大屋大杉』等)、谷公一衆議院議員時局講演会で講演(午後2時・ホテルKOSHIO・豊岡市)という日程です。閣僚在任中から入っていた予定をもあり、変更も出来ず、相変わらずあまり余裕のない日々が続いております。

来週後半はもう9月なのですね。随分と以前にも書きましたが、夏の終わりになると昭和47年に38歳で早逝した芥川賞作家・柏原兵三の「夏休みの絵」、これを短編化した「短い夏」を読み返したくなりますし、大島渚監督の映画「夏の妹」(栗田ひろみ主演・昭和47年・日本ATG配給)も見てみたくなります。いささか懐古趣味的ですが。

鳥取県名産の20世紀梨が店頭に並ぶ頃ともなりました。昨日朝、太田市場での販促セレモニーにも出席してきたのですが、我々鳥取に育った者は、梨といえば豊水や幸水などの甘い赤梨よりも、爽やかな酸味があり、見た目も美しい青梨の20世紀梨を思い浮かべます。今年の出来はとても良いようですので、是非ご賞味くださいませ。
 
残暑厳しき折、皆様お元気でお過ごしください。

(2016年8月26日「石破茂(いしばしげる)ブログ」より転載)