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トランプ政権と地方創生など

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石破茂です。

最近、テレビ番組や講演などのテーマに「トランプ政権と今後の日米関係」を依頼されることが多いのですが、「実際に就任してみなければわからないし、してからもわからない」というのが正直なところです。

昨日のトランプ氏の会見を見ていると、当選直後にテレビのインタビューで答えていた「メキシコとの間に壁は作らず、既に設置されたフェンスを活用する。オバマケアは修正する」などをあっさりと覆し、「メキシコ国境での壁建設計画を早期に実現する。フェンスではなく壁であり、費用はメキシコに負担させる。オバマケアは大失敗であり撤廃する」と発言したことにはいささか驚きました。

公約の原点に戻ったと言えばそれまでですが、この人の真意は一体那辺にあるのか。真意、などというものはなく、その都度レトリックを使い分けているのだとすれば、これは相当に由々しきことです。

彼のことを「ディールとサスペンスの大統領になる」と予測した人がありましたが、まさしく「相手に不安や緊張を抱かせて不安定な心理状態に置き、取引を仕掛ける」という手法を駆使するように思われます。対アジア政策も、対中・対露政策も、就中対中東政策もそうなるでしょうし、当面世界情勢は不安定にならざるを得ないものと覚悟しなければなりません。

従来の民主主義・自由・人権・法の支配などという「普遍的な(とアメリカが思っていた)」価値を重視した外交から、アメリカの利益を重視する外交へと転換する可能性が高く、それに振り回されないようにするためには、我が国が地道に経済力と防衛力を回復・強化させていく他はありません。

昨年10月に公表されたIMFの経済成長率見通しでは、我が国の成長率は0.6%で先進国の中で最も低く(アメリカ2.2%、ユーロ圏1.5%、英国1.1%)、その要因の一つである人口増加率はG7で唯一マイナスに転じ、労働生産性も24年連続でG7中最下位、という状況を直視すべきなのであり、その打開のための方策が地方創生であったことを忘れてはなりません。

防衛力も、米国に対して集団的自衛権の全面的な行使が出来ない代償的義務としての基地提供義務と、米軍駐留経費の75%を負担していることが、防衛費対GDP比1%の正当性たりうるか、もう一度精緻に検証したいと思います。英国はEUからの離脱を決定しましたが、防衛費はNATO目標に従い2%を負担しています(絶対額も日本より多額)。

日本周辺の安全保障環境が英国よりも良好であるとはとても考えられず、平和と繁栄にはそれに見合う負担を負わねばならないでしょう。

まだ斜め読みしかしていないのですが、英国のEU離脱やトランプ勝利については、「問題は英国なのではない、EUなのだ 21世紀の新国家論」(エマニュエル・トッド著 文春新書)はとても面白そうです。

天皇陛下のご譲位について、新聞各紙が「今上陛下は平成30年末で皇太子殿下にご譲位され、平成は30年で幕を閉じる」「今上陛下にのみ適用される特例法で対応する」とあたかも既定事実のごとくに一斉に報道していることには、まるで既成事実化が試みられているような印象を受けます。

日本国憲法には「天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」と「日本国」と「日本国民統合」を分けて書いてあります。前者が憲法に限定列挙してある国事行為を指すとすれば、後者は今上陛下が営々と多年にわたって築いてこられた、国民と寄り添うお姿に国民が心からの敬慕の念を抱く「公的なご活動」を核とするものなのではないでしょうか。

そう考えると「ロボット論」とか「今上陛下一代限り」という考えとは異なる結論も導き出せそうにも思われます。皇室の安定的な継続についても、今回何らかの解を見出すことが現在の日本国民に課せられた、日本国に対する責任のように私には思われます。

「天皇『生前退位』の真実」(高森明勅著・幻冬舎新書)は、頭を整理する意味で有益なものでした。

週末は1月14日(土)「激論!クロスファイア」(BS朝日系列・午前10時・収録)に出演の予定です。

皆様、お元気でお過ごしくださいませ。

(2017年1月13日「石破茂オフィシャルブログ」より転載)