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豪雨の原因は「線状降水帯」/積乱雲が発生、滞留して同じ場所に大量の雨

「1時間に100mmの雨が降りました」。今年の夏もこんなニュースを何度も聞いた。

2017年09月29日 12時26分 JST | 更新 2017年09月29日 12時26分 JST

森林文化協会の発行する月刊『グリーン・パワー』は、森林を軸に自然環境や生活文化、エネルギーなどの話題を幅広く発信しています。9月号の「環境ウォッチ」では、7月に九州北部を襲った豪雨の原因となった「線状降水帯」について、環境ジャーナリストの竹内敬二さんが解説しています。

Asahi
●豪雨により国道386号に流れ込んだ水。その中を客を乗せたバスが走っていた=福岡県朝倉市須川、7月5日(朝日新聞)

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「1時間に100mmの雨が降りました」。今年の夏もこんなニュースを何度も聞いた。日本ではもう驚かなくなったが、これがいかに異常な豪雨か。気象庁は1時間当たり50~80mmの雨を「滝のように降る」と表現している。80mm以上となると、もはや「息苦しくなるような圧迫感がある。恐怖を感ずる」となっている。

気象庁

今年の豪雨の中で、これまでに最も被害が大きかったのは、7月5日から6日にかけて、福岡県、大分県に降った大雨だ。福岡県朝倉市では最大で1時間に129.5mmを記録した。こんな激しい雨を表現する言葉は、もはや見つからないだろう。

巨大な積乱雲が一列に並ぶ

この「2017年7月九州北部豪雨」は不思議な雨だった。直前に台風3号がその地域を襲って雨を降らせたが、台風が過ぎた後も雨が続いたのである。「台風一過の青空!」とはならなかった。

気象研究所

なぜなら、その場に「線状降水帯」ができ、居座ったからだ。線状降水帯はいわば、大雨を降らす巨大な積乱雲が一列に並んだもの。最近の豪雨被害のメカニズムの説明でしばしば聞くようになった。一般的な大きさは、高さ10数km、幅20~50km、長さ50 ~200km。高層ビルの列にも似て、バックビルディング現象(バックビルディング型)とも呼ばれる。

これが数時間あるいはもっと長い間、同じ場所にとどまることで、大量の雨が同じ場所に降ることになる。

福岡、大分は当時、どんな状況だったのか。北方の対馬海峡付近に梅雨前線が停滞していた。そこに向かって南から水蒸気を含んだ暖かい空気が大量に流入するとともに、上空には平年より3度も低い寒気が流入していたため、大気の状態が非常に不安定になっていた。

この状態で、福岡・佐賀県境の脊振(せふり)山(1055m)の東側が「冷たい空気と暖かく湿った空気がぶつかる場所」となり、ここで大量の積乱雲が発生した。積乱雲は猛烈に発達し、その雲が雨を降らせながら風で東へ移動した。

なおも、脊振山付近では積乱雲が発生し続けたので、積乱雲の柱ができては東に流れる、ということが続いた。あたかも積乱雲の列が東方向に一列に並ぶような、バックビルディング型の線状降水帯になった。幅5~15km、長さ約100km、高さは最高で17kmの規模だった。これが長時間滞留した。

データ提供:国土交通省、作図:防災科学技術研究所
●九州北部に大雨をもたらした雨雲の立体構造(7月5日午後3時5分)。福岡県朝倉市付近の上空で高さ約18kmにも達した積乱雲は、東西に長い「線状降水帯」を形成し、豪雨の原因となった。赤(時間雨量100mmに相当)や黄(時間雨量48mmに相当)は特に強い雨を降らせる雲の存在を示す

発生の予測はまだ難しい

観測によれば、7月5~6日の朝倉市内での1時間の最大降水量は129.5mm、最大3時間降水量は261mm、最大24時間降水量は545.5mmを記録した。レーダーなどの解析から、約1000mmに達したはずの場所もあったとみられる。日本の年平均降水量が約1700mmなので、朝倉市で観測された数値の大きさがよく分かる。

その猛烈な雨が、短時間に狭い川を氾濫させ、谷の両側を削り、家々を破壊していった。誰もが、これまでの人生で経験したことのない災害だったに違いない。

最近の豪雨災害ではしばしば線状降水帯の発生が確認されている。

《2012年7月の九州北部豪雨》7月11~14日にかけて、西日本から東日本に至る広い範囲で大雨。特に九州北部(福岡県)では非常に強い雨。1時間降水量で91.5mm、24時間降水量で486mmを記録するなど、今回の「2017年7月九州北部豪雨」に匹敵する大雨だった。

《2014年8月の広島土砂災害》広島市で大雨。山間部で土石流が発生し、77人の死者が出た。1時間降水量約120mm、24時間降水量は287mmを記録した。

線状降水帯ができる条件として、大量の暖かく湿った空気が大気下層に継続的に流入すること、その空気を上空に持ち上げる要因の存在(前線の位置や地形等)、などが分かってきたが、まだ予測の精度は低い。このため、台風のような正確さでは予測が難しく、思いがけない大被害を生む。

背景に温暖化、豪雨は2倍以上

豪雨が増える背景には地球温暖化があると考えられる。温暖化では異常気象の頻度が増すが、日本では特に大雨が増えるという。気象庁は今年3月、今後、温暖化が進む中で日本はどうなるかを予測した「地球温暖化予測情報第9巻」を出した。今後の世界が、積極的な温暖化対策をとらず、温室効果ガスを多く排出する時代が続くというシナリオで分析したものだ。

それによると21世紀末の気温は20世紀末と比較して4.5℃(地域によって3.3~4.9℃)上昇し、最高気温が35℃以上の「猛暑日が増える」となっている。

大雨に関しては、「1時間降水量が50mm以上(滝のように降る雨)の発生回数が全国平均で2倍以上になる」とした。逆に「雨の降らない日数は全国的に増える」ことになりそうだ。雨の回数は減り、降る時は一度に大量の「ドカ降り」になるということだ。

世界の温暖化は着実に進み、特に2000年前後からは加速しているともいわれる。豪雨など異常気象の増加は、「いつか来る現象」ではなく、「すでに起きつつある現象」と考えるべきだろう。