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本格化するか、電気自動車へのシフト/エネルギー効率が高く、石油需要を減らせる

今後「エンジンのない車」が増えれば、家電会社なども参入して、産業構造も変わるだろう。

2017年10月27日 17時02分 JST | 更新 2017年10月27日 17時02分 JST

森林文化協会の発行する月刊『グリーン・パワー』は、森林を軸に自然環境や生活文化、エネルギーなどの話題を幅広く発信しています。10月号の「環境ウォッチ」では、関心の高める電気自動車について、環境ジャーナリストの竹内敬二さんが解説しています。

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「次世代の車は電気自動車(EV)だ」との声が高まっている。

昨年10月、ドイツの連邦参議院が「2030年までに内燃機関の車の国内販売を禁止しよう」と決議した。「これは大胆」と驚いていたら、今年7月、英国政府とフランス政府が相次いで、40年までに同様の措置を取ると表明した。欧州連合(EU)全体に広げようとの話もある。

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●ドイツ・フォルクスワーゲンのヘルベルト・ディースCEOは、今春の上海モーターショーで新型EVを紹介した

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●納車を待つ米テスラの量産EV「モデル3」

呼応するように、スウェーデンの車メーカー「ボルボ」は「2019年以降に出すモデルはEVとハイブリッド車(HV)だけにする」と発表。高額タイプが多かった米のEVメーカー「テスラ」が、量産車「モデル3」の販売を始めた。そして8月、トヨタとマツダが「EVの共同開発」を視野に入れた資本提携を発表したことでEV熱は日本にも飛び火した。

欧州の温暖化対策、米国の汚染対策

今の車は、まだほとんどが、ガソリンかディーゼル油(軽油)を燃料にする内燃機関車(エンジン車)だ。次世代車の候補としては、HV、プラグイン・ハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)、EVがある。

森林文化協会

どの車が次世代の主力になるのかについては自動車メーカーの間でも予想が異なり、各社の開発販売戦略も異なっていた。例えば、日産・ルノーは早くからEVに力を入れていたが、HVの時代を切り開いたトヨタは「EVは当面、主流にならない」とみていたようだ。

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●日産が9月6日に公開したEVの新型「リーフ」

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●記者会見に臨むトヨタの豊田章男社長(左)とマツダの小飼雅道社長

欧州がEV化を急ぐ動機は温暖化対策だ。これまで欧州ではガソリン車より燃費のいいディーゼル車を増やし、新車販売のほぼ半数を占めるまでになっているが、EUは「2050年の温室効果ガス排出を1990年比で80~95%削減する」を目標としている。これを達成するには「ディーゼル車の増加」などでは間に合わず、ガソリンや(ディーゼル車用の)軽油といった車で使う化石燃料を直接的かつ劇的に減らす必要性に迫られている。

米国でもEVシフトが起きている。カリフォルニア州では1990年代から排出ゼロ車(ZEV)規制として、汚染排気ガスの少ない車、あるいは出さない車を増やす政策を進めている。この規制が今年後半から厳しくなり、各メーカーはEVやPHVへの本格的なシフトを迫られている。この規制は他の州にも広がりつつある。

少ないロス、車には電気が似合う

10年ほど前、車メーカーの幹部と「次世代の車は何か」について話した。その幹部は「不確実な点も多いが、将来の動力ははっきりしている。それは電気だ」と言った。

EVはエンジン車に比べ、エネルギー効率が格段に高いからだ。内燃機関車はシリンダーの中でガソリンなどを爆発させ、ピストンの上下運動を回転運動に変えるので大きなロスが出る。さらに、それを変速機などの機械を通して車輪に伝えなければならない。一方、電気はロスが小さく、効率よくモーターを回すことができる。

『温暖化防止のために』より

EVの開発者でもある清水浩・慶應義塾大学名誉教授の著書『温暖化防止のために』によれば、ガソリン車の場合、元の石油のエネルギーに対して、最終的にその8.6%しか車の動力として使われていないとされている。一方、EVは、化石燃料から電気をつくる効率が53%(高効率の発電所のレベル)であるとしても、電気でモーターを回転させる効率が80%と高いので、元のエネルギーの35%が車の動力になるとしている。

8.6%と35%。一つの比較例だが、化石燃料を出発点にしてもEVの効率は4倍も高い。二酸化炭素発生量は4分の1だ。車輪の回転で走る車には本来、電気が似合っているといえる。

今、世界の石油需要の3分の2は車・運輸部門で使われている。先進国ではもっと割合が高い。「石油需要=車の燃料」といえ、EVの普及は石油需要を減らす。自然エネルギーによる発電が増えれば、石油の抑制はさらに加速される。

自動車産業に打撃か?

昨年段階で世界のEVは約200万台。車全体の0.2%以下だが、2020年には2000万台になり、2040年には世界の自動車販売の53%になるという予測もある。

しかし、HV、PHV、FCVなど、他の次世代車候補もそれぞれ長所、短所があり、これからも技術は進歩する。今後、いつごろ、どのタイプが普及するか、そして最終的にどの車が勝ち残るかは、まだ分からない。それを予測し、シフトの主導権を握るかどうかは、世界の車メーカーにとっても、日本のように「自動車産業で食べている国」にとっても死活問題だ。

自動車産業の変化への心配も広がっている。現在の自動車産業は裾野が広く、米国で700万人、欧州で1300万人の雇用を抱える。今後「エンジンのない車」が増えれば、家電会社なども参入して、産業構造も変わるだろう。「もしドイツで、30年までに内燃機関車の販売が禁止となれば、ドイツで42万人の雇用が失われる」との研究も発表された。

すでにEVのフォーミュラカーを使う「フォーミュラE選手権」さえ始まった。当面EVへのシフトは間違いない。変化に遅れない産業政策や、各家庭でEVを蓄電池として使いやすくする電力制度改革が必要だろう。