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「森林環境税」新設へ、放置森林は生き返るのか/今どき目的税を新設? 既存税とのダブリ批判も

新税を設ければ長年の問題が解決するのだろうか。

2018年01月05日 13時13分 JST | 更新 2018年01月05日 13時13分 JST

森林文化協会の発行する月刊『グリーン・パワー』は、森林を軸に自然環境や生活文化、エネルギーなどの話題を幅広く発信しています。新年1月号の「環境ウォッチ」では、環境ジャーナリストの竹内敬二さんが、導入の方向が固まった国の「森林環境税」について、その問題点を探っています。

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手入れがなされずに荒れている森林の整備を進める「森林環境税」の導入がほぼ決まった。導入時期は2024年度頃が有力だ。森林の間伐、作業道の整備、林業機械の購入などへの使用が考えられている。地球温暖化対策として、森林の二酸化炭素(CO2)吸収力の保持にも追い風になる。ただ、森林が放置されてきた問題は、その理由が複雑だ。また、すでに地方レベルでは全国的に似た税が存在している。新税を設ければ長年の問題が解決するのだろうか。

不在地主、所有者不明...

日本の国土面積の3分の2に当たる約2500万haが森林で、その4割がスギ、ヒノキなどの人工林だ。戦後、積極的な植林運動が展開された結果だが、今はその多くが整備されずに放置された状態になっている。

国土交通省、林野庁

針葉樹は最初、密生状態で植林されることが多い。成長に伴って間伐を繰り返す整備をしないと、良い材木になる木は育たない。ところが、今はそんな作業をしても材木が売れないので、所有者にとっては森林を整備する動機がなくなっている。

日本の人工林のうち約半数が11齢級(51~55年生)以上であり、「主伐期」を迎えようとしている。しかし、林野庁によれば、日本の8割の森林所有者は森林の経営意欲が低く、意欲の低い森林所有者のうち7割の所有者は主伐を考えていないという。

林野庁

森林問題は零細な私有林に凝縮されている。一つは、森林の所有者が地元にいない「不在地主」が多いこと。もう一つは、長い間、相続や登記がおろそかにされ、所有者や境界が分からなくなっていることだ。

とはいえ、「もうからないのだったら、森林を放置すればいい」ともならない。森林は国土の侵食防止や保水の作用を持ち、災害を防ぎながら、多様な生態系を支えている。CO2も吸収する。温暖化対策のパリ協定で世界が約束したCO2削減を実現するには、日本では、2020年以降、毎年45万haの間伐が必要だ。うち、30万haは私有林である。

住民税に上乗せ、一人1000

新設される森林環境税は次のようなものになる。

  1. 個人の市町村税に1000円を上乗せする(標準の住民税に上乗せするので超過課税と呼ばれる。約6200万人が対象で、620億円前後という相当大型の新税になる)。
  2. 税収は国が集めて特定財源にし、必要とされる市町村に配布される。
  3. 使途は間伐などの森林整備、人材の育成、道路の整備、機械の購入など。

具体的には、市町村が、「自分では管理ができない所有者」から森林管理を委託されたり、「もっと大規模に森林ビジネスをしたい」という人に委託の橋渡しをしたりする。零細個人所有の森林のケアが広がるとみている。

しかし、税の新設となるといくつかの問題がある。

●間伐された林。光が差し込み、山の表情がぱっと明るくなった=高知県本山町

一つは、ダブリだ。実は地方自治体の税としてすでに「森林環境税」(名称は自治体により異なる)がある。現在37府県と1市(横浜市)が持つ。森林整備という目的も、「住民税に上乗せする」形もほぼ同じだ。違いは、そうした税は「自治体の財布」、今度の税は「国の財布」(そこから市町村に配る)に入るということだ。

二つ目は、新税が真に有効か、という疑問だ。森林環境税はユニークだ。ふつう「環境税」といえば、CO2や汚染物など環境に悪いものに課税して、その排出を減らす手段となる。しかし、森林環境税は、住民税の上乗せという形で、森林、環境に無関係のところからも広くお金を取る。だから、課税そのものが森林の健全化を進めるようには働かない。そうすると使い方が肝心だが、不在地主などの細かくて複雑な問題にどう使って、どう解決するのか。

三つ目は、目的税という性質だ。一般的には目的税で特別財源ができると、目的が達成されても税は存続し、結果的に無駄遣いが多くなる。日本の危機的な財政状況を考えると、本当に必要なものならば、他の支出を絞って財源をつくるのが筋だ。

長野県から学ぶべき教訓

貴重な教訓が長野県にある。長野県の「森林づくり県民税」は2008年に導入された。「森林の年齢が上がっているので間伐など里山の整備が緊急課題だ」などが理由だった。額は住民税への500円上乗せだ。5年ごとに税の継続を判断するが、2017年秋に2018年度以降も続ける(第3期5年間)ことを決めた。

しかし、県内では「継続は必要なのか」という議論になった。それも当然で、「森林づくり県民税」が使いきれず、どんどんたまってきているからだ。所有者や境界が不明の森林が多く、思うように間伐が進まないのだという。結果的に、こうした税が難しい問題に十分には対処できないことを示している。

長野県は今回、税の継続と同時に「街路樹の整備など」への適用拡大を考えているという。しかし「正面の問題にうまく対処できないまま別の問題に手を広げるのか」という批判もある。

信濃毎日新聞の社説(9月22日)は「税率を下げ、県民負担を減らすのが合理的」と指摘している。「国が『森林環境税』の創設を検討している。森林税はいったん終了し、国の動向も踏まえ、森林整備のあり方を根本から見直し、県民の合意形成を図るべきだ」とも。もっともな指摘だ。

所有者不在、不十分な登記、境界の不明確化はいずれも、零細規模の林業がうまく成り立っていない、また、森林を売ろうにも金銭的価値が小さくて売れないという根源的な問題に起因する。それを解決する「仕組み」や「政策」づくりが遅れている。財源は必要だろうが、財源だけの問題ではない。