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終焉を迎えた石炭時代/低下する化石燃料の競争力

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森林文化協会の発行する月刊『グリーン・パワー』は、森林を軸に自然環境や生活文化の話題を幅広く発信しています。7月号の「時評」欄では、エネルギー分野における化石燃料(特に石炭)の競争力が低下している状況について、京都大学名誉教授の松下和夫さんが報告してくれました。

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石器時代が終わったのは石がなくなったからではない。より便利で有用な物(例えば青銅器)が開発され普及したからだ。石炭は埋蔵量が多くコストも安い。産業革命以降の世界の経済発展は石炭の利用なくしてあり得なかった。ところが、石炭がなくなる前に石炭時代の終わりを告げる兆候が現れている。すでに再生可能エネルギーの価格低下に伴い化石燃料の競争力は低下し、省エネや蓄電などの技術進歩でエネルギー需要の減少も進んでいる。

国際エネルギー機関(IEA)によると、世界の石炭生産量は、2013年に79億700万tであったが、2014年には78億6000万tと減少している。この背景には、世界で1位と2位の石炭消費国である中国と米国での消費減少がある。中国では大気汚染対策の強化もあり、2014年の消費量は前年比2.・9%減の39億tとなっている。米国でも石炭生産と消費の減少が続き、2010年に9億5000万tあった消費量は、2014年には8億3500万tに減少した。炭鉱会社の倒産も相次ぎ、4月には最大手のピーボディ・エナジーが破産法の適用を申請した。シェールガス革命による天然ガスの価格下落、気候変動対策による石炭火力発電所への規制強化などが理由だ。

昨年末の気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)でのパリ協定採択が、石炭時代の終焉を加速している。英国は2025年に、ドイツも2050年に石炭火力を全廃する方針を明らかにしている。

英国の環境NGO、カーボン・トラッカーとIEAのレポートによると、パリ協定の2度目標達成のためには、確認化石燃料埋蔵量のうち、20〜31%しか使えない。とりわけ石炭火力は多くの二酸化炭素を排出し、1kw時の発電当たり、液化天然ガス火力に比べ約2倍が排出される。今後化石燃料資源の利用制限が強化されると、埋蔵量の相当部分が回収できない資産(座礁資産)となってしまう。

欧米の機関投資家の間では、石炭火力への投資中止や、既存投資の引き上げ(ダイベストメント)が広がっている。COP21中に開催されたサイドイベントでは、世界で3.4兆$の資産を持つ500以上の機関投資家などがダイベストメントの取り組み参加を決めたと発表された。この中には、ノルウェーのグローバル政府年金基金、英国のワーテルロー財団、バンク・オブ・アメリカ、フランス金融大手のクレディ・アグリコルなどが含まれる。

開発途上国の火力発電への融資については、合衆国輸出入銀行、フランス貿易保険会社、世界銀行、欧州復興開発銀行などが原則禁止を打ち出していたが、経済協力開発機構(OECD)でも、原則として大規模な亜臨界、超臨界石炭火力発電設備への支援を禁止することが合意された(一部例外あり)。

わが国はG7メンバー国で唯一、石炭火力の増設や途上国への石炭火力の支援を続けているが、はたして賢明な選択といえるだろうか。