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花粉を運ぶ生物の価値を初評価/年間26兆~65 兆円と推計

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森林文化協会の発行する月刊『グリーン・パワー』は、森林を軸に自然環境や生活文化の話題を発信しています。5月号の「時評」では、花粉を運ぶ生物の価値が初めて世界規模で評価されたことを、松下和夫・京都大学名誉教授が紹介してくれました。

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ミツバチなどの昆虫が花粉を媒介して食料生産に役立っていることはよく知られているが、その経済的価値はどの程度なのか。

生物多様性および生態系サービスに関する政府間科学─政策プラットフォーム(IPBES)第4回総会が、2月22~28日にマレーシアのクアラルンプールで開催された。IPBESとは、生物多様性と生態系サービスに関する動向を科学的に評価(アセスメント)し、科学と政策のつながりを強化する政府間組織であり、2012年4月に設立された。その活動は、科学的評価、能力開発、知見生成、政策立案支援の四つの機能を柱とし、同じような活動を進める気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の例から、生物多様性版のIPCCと呼ばれることもある。

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●シロツメクサの花にやって来たミツバチ。蜂蜜の蜜源植物となると同時に、蜂による花粉媒介によって次世代の種子ができる(森林文化協会撮影)

今回の総会では、IPBES設立以来初のアセスメントレポート(評価報告書)である「ミツバチ等の花粉を運ぶ昆虫たちの価値、現状や傾向、食料生産に与える影響」が公表された。

それによると、花粉を運ぶ生物(ミツバチなどの昆虫類、鳥類、コウモリなど2万種以上)は、人間の食料供給に極めて重要な役割を果たし、その価値は年間2350億~5770億$(26兆~65兆円)に上ると推計している。食料作物の75%が、部分的なものも含め受粉に依存している。

こうした生物は食料だけではなく、バイオ燃料や繊維、飼料、生活・文化的必需品の供給にも寄与している。ところが、土地利用の変化、農薬、侵略性外来種、病気・害虫、気候変動などの人為的要因によって急激に減少しており、脊椎動物で16・5%、無脊椎動物(特にミツバチとチョウ)では40%が絶滅の危機に瀕している。

そうした現状を踏まえ、報告書では、花粉媒介動物を守るための方法を示している。具体的には、生息地の多様化、まだら状生息地や輪作を管理する伝統的農法の支援、花粉媒介者の農薬曝露の低減(農薬使用量の削減、代替害虫防除方法の導入、農薬飛散を減らす技術の使用)などが挙げられている。まとめに当たっては、約3000の科学論文を引用したほか、世界の60カ所以上の先住民や地域の知識に基づく情報も集められた。

一方、2月4日には、日本でのハチなどによる授粉の経済価値(2013年時点)は4731億円であり、7割が野生種に依存しているとの研究結果を農業環境技術研究所が発表した。これは日本の耕種農業産出額5兆7000億円の8・3%に相当する。野生種を含めた花粉媒介動物による経済的価値分析は日本で初めてである。

現在、IPBESの作業計画2014─2018に基づき、花粉媒介、侵略的外来種など、18の成果物の完成を目指した作業が進められている。2019年には地球規模の生物多様性および生態系サービスに関する総合的なアセスメントの公表が予定されている。科学的評価に基づく賢明な政策の立案が進み、生態系サービスの持続可能な保全と活用が進むことを期待したい。