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東北の生態系調査にボランティアを派遣 市民が協力することで何倍もの成果に

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森林文化協会の発行する月刊『グリーン・パワー』は、森林を軸に自然環境や生活文化の話題を幅広く発信しています。

2017年1~3月号の「nature守り人」欄では、世界でそして日本で動いている、市民が研究者の環境調査を手伝うプログラムについて、これに取り組むアースウォッチ・ジャパンの伊藤雪穂さんに紹介してもらっています。今回は3 月号掲載の(下)をお届けします。

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3月になると、いつも東北を想う。私が宮城県仙台市の蒲生干潟に行ったのは、まだ巨大なコンテナやコンクリート片などが海岸に残る2011年5月。

東北大学の研究者が黙々と干潟を歩き、砂を掘って生きものの存在を確かめる姿が今でも目に焼きついている。同月22日、東北の復興に際して生態系への配慮を欠いてはならないと、いち早く東北大学や地元NPOが「グリーン復興宣言」を発表した。

そこから東日本一帯で、自然と社会が共生する復興への働きかけが始まった。

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●干潟の生き物を調べる。市民の発見が科学的データになり、環境を知る手立てとなる

アースウォッチ・ジャパンは、この活動に賛同し、東北大学大学院生命科学研究科の占部城太郎教授をリーダーとした干潟や水田、島における生態系モニタリング調査に、一般市民のサイエンス・ボランティアを派遣している。これまでに毎年5月から8月まで岩手・宮城・福島の3県にわたり計60回もの調査を行い、全国から集まった延べ672名がその手伝いを行った。

これには、三井住友銀行やBNPパリバ・グループ、花王株式会社、三菱商事株式会社など多くの企業が賛同し、資金的な支援だけでなく、社員をボランティアとして派遣している。参加した社員にとって、1~2泊で行うこれらの調査は、現地の自然や復興状況を肌で感じ、自然と共に生きる意味や、自然に配慮した復興について考える機会となっている。

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●2021年までの息の長い調査。広範囲の干潟を詳細に調べるには、市民の力が必要不可欠だ

研究者から直接指導を受け、多種多様なボランティアと作業するのは、子どもの頃の遠足のようで楽しい。

調査の方法は実にシンプルで、例えば干潟調査は砂浜を15分間歩き回り、見つけたカニや貝などをポリ袋に入れていく。次にシャベルで穴を15回掘り、やはり見つけた生きものを採集する。そして自分の獲物を図鑑で調べ、研究者に記録データを渡して終了だ。

大抵の初心者は、名前を調べるうちに、様々な貝を集めたつもりが、実は全て1種類のヤドカリだったことを知り、ガッカリする。そんな人たちでも、夕食後に行われる研究者のレクチャーから得た知識などで、翌日には達人の域に達したりする。

科学的な調査というと難しいことと思われがちだが、実はこの干潟調査のように単純明快な手法で人海戦術が必要なものが多い。

私たち市民が協力することで何倍もの成果になりえる。そんな市民の力を科学に生かす試みに「シティズン・サイエンス」がある。

日常生活で見つけた環境の変化をITを活用して記録する。自分の見つけたデータが世界のデータベースとつながり、科学者の役に立つ。そんな仕組みをアースウォッチ・ジャパンとして構築できたらと考えている。

これまで3回のシリーズを通して、アースウォッチの活動を紹介した。

研究者の野外調査を手伝う活動が、「何か環境問題の解決につながることがしたい」「地球の今が知りたい」と考えている人にとって、良いヒントになれば嬉しい。多くの市民に、地球環境の現状を知る手立てとして、アースウォッチを活用してもらえたらと願っている。