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トランプ新大統領でどうなるのか/アメリカの環境・エネルギー政策

2017年03月10日 00時18分 JST | 更新 2017年03月10日 00時18分 JST

森林文化協会の発行する月刊『グリーン・パワー』は、森林を軸に自然環境や環境政策に関する話題を数多く発信しています。3月号の「時評」では松下和夫・京都大学名誉教授が、米国の環境・エネルギー政策がトランプ新大統領の就任によって大きく転換する可能性について、憂慮する思いを綴っています。

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アメリカでドナルド・トランプ新大統領が1月20日に就任した。

新大統領は就任直後に、凍結されていた「キーストーンXL・パイプライン」と「ダコタ・アクセス・パイプライン」の事業にゴーサインの大統領令を出すなど、オバマ政権の環境政策上の遺産を次々と転換している。

トランプ新大統領は年来の気候変動否定論者として知られており、選挙期間中にも「気候変動は中国のでっち上げ」などと主張していた。近視眼的かつ排外主義的なポピュリズムの蔓延と、その風潮をあおり、かつ温暖化の科学を否定する米国大統領の登場は、世界の持続可能性の前途に暗雲を漂わせている。

果たしてパリ協定から離脱するのか、離脱しないとしても国内対策が滞るのではないか、国際気候基金などへの拠出が減るのではないか、などと多くの懸念がある。本稿執筆時点でトランプ新大統領の環境・エネルギー政策の内容は詳らかになっておらず予断はできないが、彼が指名した主要閣僚の陣容からその方向性が予想できる。

国務長官に指名されたのは、エクソンモービル社前会長兼CEOのレックス・ティラーソン氏である。エクソンモービル社は世界最大の多国籍石油企業で、1960年代から70年代には気候変動問題の存在と化石燃料による二酸化炭素排出がもたらす影響の深刻さを自社の研究で十分認識していた。

にもかかわらず、その後気候変動対策の進展を阻害するために情報を操作し、温暖化懐疑論者に資金提供し、国民の気候変動に対する意見と政界に介入したことが明らかにされている。2016年4月には、米国の20の州と地域で、同社の気候変動に関する情報隠蔽疑惑について捜査が開始されたことが報じられている。

ティラーソン氏自身はロシアでの石油開発に深く関わり、その過程でプーチン大統領と親密な関係を築き、ロシアから「友好勲章」を受けている。オバマ政権下では対ロ制裁で停止状態となっていた北極圏でのエクソンによる石油開発が、再び動き出す可能性も取りざたされている。

ジョン・ケリー前国務長官が中国と緊密に連携してパリ協定合意に尽力したのとは真逆の人事である。

環境・エネルギー政策に関連する他の主要閣僚はどうか。

環境保護庁長官には、オバマ前大統領のグリーンパワープランをはじめとする環境規制に強硬に反対し、訴訟も起こしてきたスコット・プルイット元オクラホマ州司法長官が、国立公園などの国有地での石油・石炭開発に関する規制を所管する内務長官には、「気候変動の科学は証明されていない」とするライアン・ジンキ共和党下院議員(モンタナ州)が、エネルギー省長官には、石油業界の規制緩和を主張し、気候変動にも懐疑的なリック・ペリー前テキサス州知事が指名されている。

この布陣では、パリ協定が目指す脱化石燃料文明への道には逆行しそうだ。しかし化石燃料依存文明からの脱却は、人類が避けて通れない歴史の流れである。