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NYのCDO・Rachel Haotが都市問題解決のためのインキュベーターへ転身、官と民の壁を超えたキャリアステップへ

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以前、ブログでも紹介したNYCのChief Digital Officer(CDO)のRachel Haot。2011年にNYCのCDOに就任し、NYCのDigital City Road Mapを作成するなど、デジタル都市に向けたプランニングに力をいれてきた人物だ。2013年にはNY州のCDOに就任し、州全体のデジタル戦略を任されるまでになった。

そんな彼女が、2016年1月から1776というグローバルインキュベータ・ベンチャーファンドのマネージング・ディレクターに転職したことがニュースになっていた。

1776は、教育、エネルギー、持続可能性、ヘルス、交通、都市をテーマに、社会課題解決に取り組む企業の育成や資金提供などを行ってる。2013年にワシントンから誕生したこのインキュベーター。 1776という名前はアメリカの建国の年を表しており、アメリカの都市を再構築するために必要なテクノロジーやビジネスを生み出そうという意図がある。もちろん、アメリカの都市問題だけでなく、世界の課題を解決するためのプラットホームなることを目指しているという。

これまでワシントンが拠点だったが、今回Rachelが参画したことで、1776のNYCブランチを立ち上げたのだ。Medium上の1776のブログ「Team1776」には、就任に先立ち、Rachelが1776で何をしようとしているかが書かれている

NYCという世界でもトップクラスの都市に対して、ベンチャーがより都市問題に対して目を向けることの必要性を書いている。同時に、そこには大きなビジネスチャンスがあり、世界に対して大きなインパクトを与えるもので、それによって人々の暮らしをより豊かにしていこうとする所信表明と言えるだろう。

米国ビジネス誌『Fast Company』では、Rechalに対してインタビューを行っている。以下は、そこで語られたコメントだ。

"I saw 1776 as the ideal intersection of tech and government, two things I'm very passionate about," Haot says. "The thing I really like about 1776 is it focuses on technology that will change the world. That resonates with me. I'm very passionate about helping organizations modernize, and that's at core of 1776 does."

もともとソーシャルメディアを駆使したジャーナリストとして市民活動を支えてきたRachel。ブルームバーグ市長の右腕として2011年に抜擢されるやいなや、デジタルの可能性とそれが都市に与えるインパクトを最大化するためのデジタル都市戦略の基礎を築いた。

ガバメントとテクノロジーに精通した人物が、都市問題や社会課題の解決を軸としたスタートアップのインキュベーションにジョインし、それまで培ってきた経験やネットワークをもとにスタートアップと行政、自治体関係者との連携やその間を埋める媒介者として活動していくだろう。これからますます求められるテクノロジーの発展のなかで、より良い課題解決のための方向付けをするために、インキュベーターという立場で関わることがインパクトを与えられると話す彼女の考えはとても現代的かもしれない。

日本でも官民連携が叫ばれるなか、官と民を行き来しながらさらにテクノロジー、アート、ビジネス、デザイン、メディア、など、さまざまな分野を横断しながらそれぞれの分野同士のつながりを高めていく人材はまだまだ少ない。しかし、これからはさまざまな分野を横断し新たな価値を生み出す人材が求められてくることは間違いないだろう。そうした意味で、Rechelの転身はガバメントが今後ますますテクノロジーに対する理解とより良い活用方法をもとに、社会構造の変革や人々の暮らしや働き方を変えていくための振る舞いといえるだろう。

Rachelとは別の話題も。現在アメリカ大統領選挙が行われている真っ最中だが、現大統領であるオバマ大統領の退任後の行方が注目されている。まだ年齢的にも若いだけにその動きは注目すべきものがある。そんな折、オバマ大統領を辞めたらVCになるかも、という記事がTechCrunchで記事になっていた

つい先日も、WIREDにてMITの伊藤穰一氏らとAIが発展した先の未来について議論している様子が記事となっていた。

2008年から2016年というインターネットの発展やソーシャルメディア、AIなどのテクノロジーの進化の真っ只中において大統領を担っていた人物だけに、テクノロジーの可能性と社会に対するインパクトを一番理解している人物でもあるだろう。

ヘルスケア改革を公約の一つとして掲げていたオバマ政権では、ヘルスケア全般に対してさまざまな政策を打ち出し、その結果ヘルスケアスタートアップが多く生まれた。(DeNA米国投資担当の安田幹広氏のブログ『なぜオバマ政権下でヘルスケアスタートアップが大量に生まれたのか?』で言及されている)

2014年にはMaker Faire in White Houseを開催するなど、Maker への理解もある。スタートアップに対する知識や理解、それらがもつ可能性を追求してきた人物であるだけに、退任後にVCとなる可能性も否定できない。

Barack Obamaという世界の誰もが知る人物は、そのビジネスネットワークにおいてVCとなることにおける金銭的な価値だけでなく、オバマが認めたスタートアップという社会的な価値も提供するだろう。私は、新たなVCの設立だけでなくビル・ゲイツ財団のような財団を設置し、社会課題解決を図る企業やプロダクトに対して助成をしていく可能性もあると考えている。

アメリカ大統領にまで上り詰め、ガバメントに精通した人物は現在55歳。まだまだ現役で20年30年と社会に対して大きな影響力を及ぼす人物として活躍するだろう。

こうした、テクノロジーやスタートアップに対して知識と理解のある人物が、積極的に投資を行いながら都市問題などの社会的な課題解決を図ろうとする企業を支援するという動きは、ますます起きてくるだろう。

日本において、引退した政治家がVCや財団などを設立して新たなフィールドを開拓する動きは出てくるだろうか。政治家という職業に固執することなく、身軽に職業を転身しながら、社会に対して影響を及ぼすような振る舞いをすることのほうが価値はあるのではないだろうか。自身が持つネットワークや影響力を、社会に対していかに還元するか。その方法は多様な選択肢があるはずだ。

官と民における人材の流動性を高くし、政治家を一つのキャリアの一つとして捉え、政治家を辞めた後の多様なキャリアプランがあるような社会になることで、真の意味で社会全体をより良くするための選択肢が生まれてくるだろう。

さまざまなキャリアを移り変わりながら、社会に対してインパクトを与えるために、自身がすべきこと、身の置き方をもっとダイナミックに捉えてみるべきだ。

(2016年10月26日「being beta(Shintaro Eguchi blog)」より転載)