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中国はモバイル大国になるべくしてなった

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前回は中国のモバイルから日本は学ぶことがあるという話をした。

具体例に入る前に、なぜ中国のモバイルがこれほど発達しているのか、以下の3つの視点から紹介したい。

・スマートフォンの爆発的な普及
・ベンチャー企業に流れる莫大な投資
・起業家精神旺盛な中国人

スマートフォンの爆発的な普及


こちらによると、中国のスマートフォン普及率はすでに、58%(2016年)に達している。さらに都市部に限ると、93.1%(2013年)というデータもある。

最初の記事によると、日本の普及率が39%。スマートフォンの普及率を人口で見てみると、中国は約7億人のスマートフォン保有者がいるのに対して、日本は約5000万人で、10倍以上の差があることが分かる。

都市部で電車に乗っている人はみなスマートフォンを使っている。中国に行ったことがない人は想像できないかもしれないが、これが今の中国の姿である。

このデバイスの普及に伴って急増したのが、オンラインショッピングやデリバリーフードをスマートフォン上のアプリで提供するベンチャー企業だ。

ベンチャー企業に流れる莫大な投資


そんな大きなスマートフォン市場に進出するベンチャー企業の数とそこに集まるお金も桁違いである。

まずは、日本のベンチャー企業の状況である。野村総合研究所によると、日本における2014年の国内未公開ベンチャー企業(IPO 企業の上場前を含む)における資金調達額は1154億円で、調達した企業は462社である。

一方、中国ベンチャー企業のデータベースであるIT桔子によると、中国における2015年のベンチャー企業の資金調達額は2.7兆円で、調達した企業は2838社にものぼる。調達額において中国は日本の約27倍、調達企業数において6倍である。

北京で旅行者向けのインターネット・サービスを提供する企業のCEOは「日本のインターネット企業で働いたこともあるが、現在中国のインターネット企業には多額の資金が流れており、日本の企業より多くの給料がもらえる。

特にエンジニアの給料は高騰していて、ベンチャー企業に転職することは当たり前になってきている。今ベンチャー企業で働かない理由はない。」と答えた。

この会話は筆者に対して行ったのではなく、CEOの友人のキャリア相談に対してされた会話を横で聞いていたものだ。相談者は日本の私立大学に4年間留学し、新卒で日本の大手広告代理店の中国法人に入社した女性。

ちなみにそのCEOも日本の私立大学卒業後、日本のインターネット企業で数年間勤務した後、中国ドリームを獲得すべく、中国に戻って起業したそうだ。

キャリアが安定しているはずの女性が自信なさげに相談をする一方、1年後には自分の会社が無いかもしれないのに、自信をもってキャリアや事業を語るCEOの言葉が強かったのが印象に残っている。

話が逸れてしまった。

この状態はバブルであるかもしれない。ベンチャー企業にビジネスモデルが見つからないとわかった瞬間に、資本は新たな投資先を求めて、中国から離れるだろう。

しかし、人とお金が中国のインターネット業界に集まっていることはまぎれもない事実であり、潤沢な資金を使ってしのぎを削って争っている。その苛酷な競争環境が、中国をモバイル大国に押し上げている一因でもある。

起業家精神旺盛な中国人


最後に、中国人と日本人の中で起業に対する意識が違うことを指摘したい。

日本では自己実現やキャリアアップの延長に起業を選択することが多いと思うが、中国の場合は少し状況が違う。『チャイニーズ・ドリーム 大衆資本主義が世界を変える』の中で書かれている起業家への意識調査によると、中国では起業する際の理由として、「生計を立てるため」が41%と高い一方、日本では25%にしか過ぎないという。

その背景には中国における就職難もあるだろう。

こちらの統計によると、中国2015年における新卒は2014年から22万人増え749万人になった。2014年に比べると、2015年に大学を卒業した後起業を考えている大学生は3.2%から6.3%へと浮上した。卒業生が増加し就職競争が激化する中で、就職以外の選択肢として起業を選択せざるを得ない状況になっているとも言えるし、中国人が生きるためにできることはなんでもするという、強い精神を持っているとも言えるだろう。

デバイスが普及しても、資本が集まってもそれを使ってやり始める人がいないと市場は形成されない。

中国人の気質が多くの起業家を生み出し、そして社会の状況と合致して中国をモバイル大国にした。

まとめ


スマートフォンの普及、市場を形成するには十分な資金と人材の流動、起業精神旺盛あるいは起業せざるをえない社会であることが、中国をモバイル大国とさせた。

次回は、中国社会で生まれた独自のモバイル・サービス、また中国が日本よりも先行しているサービスなどを紹介していきたい。