被災者の言葉は「現実感」と共に押し迫ってくる:宮城県石巻市に訪問交流

スマホやパソコンの画面にある情報は限定的です。目の前にある現実は深く身体に突き刺さり、ときに価値観にさえ影響を与える強い力を持っています。

こんにちはー。 縄跳びパフォーマーの粕尾将一(@macchan8130)です。

2016年5月22日(日)、宮城県石巻市に訪問してきました。

今回の目的は、2014年に出演した「mono 〜Art charity show for japan earthquakes 〜」で支援させていただいてる被災者ご家族へのご挨拶。こうして直接お話しを聞ける機会が作れたのも日本に帰ってきたからこそですね。

石巻市の訪問は初めて。

道すがらの通過した常磐道を含め、東日本大震災のリアルに直面し、ただ絶句して状況を受け取ることしかできませんでした。

石巻市に通じる常磐道にあった現実

石巻へは車で向かいました。もちろんHondaのN-BOXで。常磐自動車道は千葉県・茨城県を通過し、途中で福島県を通過します。そう、福島第一原発で甚大な被害を受け、帰宅困難地域に指定された町も通過するんです。

これは途中のパーキングエリアに貼られていたモノです。

通過する道路脇には「現在の線量」という電子掲示板が設置され、具体的な放射線量を示しています。また道路からは黒い袋が緑のビニールシートで包まれた光景がよく見えます。おびただしい黒い袋の数は、10や100じゃ足りません。何千という黒い袋が、誰もいない帰宅困難地域に積み上げられているんです。

中間貯蔵施設は、福島県内の除染に伴い発生した土壌や廃棄物等を最終処分までの間、安全に集中的に貯蔵する施設

中間貯蔵施設の概要|中間貯蔵施設情報サイト:環境省

線量を示す掲示板、そして黒い袋の丘が目に入る度に「ここで起こったこと」という現実が全身を貫いていくんです。たしかに知識として、情報としてどのような状況なのかは知っていました。でも自分は知っていただけなんだと。

知っているのと感じるのは違います。どれだけ説明をされても言語情報、視覚情報として受け取るだけだったんです。

いま、ここで現実に目の前に突き付けられた瞬間に湧き上がる複雑な感情。この感情は決して知識や情報だけでは湧き上がらないモノだったのです。

直接訪問でこそ成し得る深い交流

石巻市の訪問では、双方の交換会をしてきました。

知識や情報としてしか知らない東日本大震災のリアリティを、被災者の方からダイレクトに話を伺う。一方で自分は一緒に訪問したダンサー・振付家の「黒田なつ子」さんと一緒にゲリラストリートパフォーマンスをやらせていただきました。

なぜなら、直接訪問でしか得られない交流の深さがあると考えたからです。

常磐自動車道で感じた現実を目の当たりにした複雑な感情。同じように「あの日、何があったか」を直接、身体で感じたかったのです。

家がね、パァーンって弾けるんだよ。

交流の中で3月11日の話も伺いました。同じ言葉であっても、体験された方の選ぶ言葉にはズッシリとした重みとリアリティがあります。

・地震後、数日間連絡が取れなくて「ダメかも...」と一度は諦めたこと

・決死の思いでワンちゃんを助けに帰ったこと

・避難先によって備蓄の有無で避難生活環境に差があること

・1周間で真っ先にきた神戸のラーメン屋さんの話

・2週間目にきた、大手牛丼チェーン店のあたたかさ

・ある程度期間が過ぎると避難所で炊き出しが被ること

・津波に飲まれると、家がパァーンッて弾ける

現実感の厚みが圧倒的すぎて、どの話も一言一言へ引きこまれていきます。

何度となくニュースで見聞きした情報が間違っていたわけじゃありません。でも情報でいうなら、受け取れる量がケタ違いなんです。当事者の言葉の重みは、当事者にしか出すことができません。

おなじ「避難生活」という言葉にも、背景に見える現実がこちらまで押し迫ってくるんです。

まだ足りない

今回の訪問はスケジュールの関係で日帰りにせざるを得ませんでした。

でも、全然時間が足りない。もっと話を聞きたいしお互いの交流を深めたかった。ほぼずーっと話し続けていたんですけど、帰宅を考える時間なのが悔しくて仕方なかった。

いろんな情報が手軽になりました。スマホで検索すれば動画・写真・文字が見きれないほどヒットします。

しかしスマホやパソコンの画面にある情報は限定的です。リアルを伝えているようで、一部分しか伝えられない。なのに受け取る側もリアルを知ったような気になってしまうんです。

目の前にある現実は深く身体に突き刺さり、ときに価値観にさえ影響を与える強い力を持っています。

自分はまだ足りません。宮城県への交流訪問して、もっと様々なことを全身で感じたいです。

(2016年6月2日「なわとび1本で何でもできるのだ」より転載)

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