パフォーマーの仕事も「機械」によって奪われるか

人間が居なくなれば存在が消えます。しかし「半永久的に未完の演技」という人間の特権がある以上、機械に仕事を奪われる心配はありません。

こんにちはー。

縄跳びパフォーマーの粕尾将一(@macchan8130)です。

ITと機械の発達で、10年後に仕事が機械に奪われるという話題があります。

具体的にどんな業種の仕事が奪われると予想されるかは記事に譲ります。ではこの流れで「パフォーマンス」や「サーカス」といった業種はどうなるでしょうか?自分はこれらの業界にも機械化の波は押し寄せ、競合する日が来ると考えています。

映像技術の革新

ここ最近、プロジェクションマッピングが流行りましたね。建物や空間に映像を映し出すヤツです。これ、集客力があるんですよね。残念ながらパフォーマーよりあると思います。

クライアントがパフォーマーに求めているのは「集客力」です。週末商業施設イベント、地域のお祭りでゲスト出演する、このあたりも集客を見込んで呼んでます。

幸いなことにプロジェクションマッピングは映像制作費用がウン百万とかウン千万とかなので、今はまだ予算的に使えるイベントは限られます。でもコストは時間が経つにつれて安くなっていきます。これが10万ぐらいで創れるようになったらどうでしょうか?間違いなくパフォーマーと競合してきます。

しかも映像は一度創ってしまえば再生するだけ。今後10年でコストダウンで予算の拮抗が崩れた時、集客力で分が悪いパフォーマーは苦戦を強いられるかもしれません。

間接的に機械が侵食してくるケースも

間接的ではありますが、機械との融合パフォーマンスを考えてみましょう。

とある企業CMで話題になった光る衣装を着て演技をするダンスチームは一気に話題になりました。映像とパフォーマンスの融合で表現する方法は世界中に輸出され、いまでも沢山の演技が生まれています。

間接的ではありますが、こうした「演出」に機械が入り込んでくる猶予はいくらでもあります。プロジェクションマッピングのように高額でない分、取り入れやすい利点もありますしね。

すると中の人は見えなくなっていきます。誤解を恐れないで言えば「誰でもいい」んです。顔の見えない状態で演技をしているのは、粕尾さんでも松村さんでもいい。同じ振付と動きさえできる技術があれば、個性は関係ありません。

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これら機械との融合パフォーマンスは、プロジェクションマッピングと生身の身体演技の中間地点にあると言えます。ただ、今後10年で3D技術が進んだらどうなるでしょうか。人間の姿が必要でも、生身である必要はありますか?

機械とどう向き合うか

なんだか暗い未来な気がしますね。では今後10年でパフォーマーが仕事を奪われないためには、どうすればいいでしょうか。それには「機械の弱点」と「機械との共存」がカギになると考えています。

機械の弱点は繰り返しの弱さ

機械の創り出す壮大な演出は見る人を圧倒します。でも繰り返しに弱い。一度目は大感動です。二度目もまぁ良いとしましょう。けど10回も20回も見るとなると・・・さすがに飽きてきますよね。ここに機械の一つ目の弱点があります。

人間は厳密に完璧に同じ演技を繰り返すことが出来ません。同じ振付でも動きの細部が無意識や「揺らぎ」で変わっていく。また人間は内省ができます。ここをこうしたい、と試行錯誤ができます。観客には気付かれないかもしれませんが、こうした「細部の意図的な変化」こそが人間にしかできない領域なのです。

機械は繰り返すのは得意でも、自ら改善や変化ができない。こういう「半永久的に未完の演技」が機械だと創れないのです。観客がこうした変化を無意識に感じることで、同じ演技を繰り返し見たいと感じるのだと思います。

機械との共存で新たな表現の可能性

機械に組み込まれ没個性になった演技は好きじゃありません。ですが、人間を前面に出したまま表現の可能性を探ることもできると思うのです。

照明効果や音響効果は古くから使われている手法です。これらはパフォーマーを引き立たせる目的で使われ、表現の幅を広げてくれます。同じように機械の力を「引き立て」として活用するのは手だと思います。

おわりに

機械に取り込まれ演出の一部になるか、演技の演出として機械を取り入れるか。この二つが今後10年の分かれ目になります。

前者は映像技術の発展で、人間を締め出していく方向になるでしょう。3D技術が発達すれば、生身の身体と見分けのつかない映像も創れます。

後者は人間ありきで作られています。人間が居なくなれば存在が消えます。しかし「半永久的に未完の演技」という人間の特権がある以上、機械に仕事を奪われる心配はありません。

これから10年後、どのようなパフォーマンスが残っているか今から楽しみです。

(2015年9月4日「なわとび1本で何でもできるのだ」より転載)

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