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前田将多 Headshot

「米国は、トランプみたいなやつらが作ってきた」

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アメリカ合衆国大統領選挙が、十一月八日に迫ってきた。

歴史に残るのか、歴史に嗤われるのかはわからないが、民主党クリントン候補と共和党トランプ候補が罵倒のし合いというか、「お前のかあちゃんデベソ」寸前の罵り合いを展開している。

普通の感覚で言えば、相手の健康問題などは、攻撃するにしてもそれとなくオブラートに包んで「懸念を表明する」程度のイヤミに留めるだとは思うが、トランプ候補はお構いなしで、日本から傍観する身としては「おいおい、七〇才が六十八才をそんなに攻撃して大丈夫かよ。明日は我が身だぜ?」と心配したくらいだ。

トランプ候補の暴言の数々は今さらここで振り返るまでもないが、最も印象的だったのは「メキシコ国境に壁を建設して、その費用はメキシコが負担する」というものだろう。隣国との国際関係を顧みない、なんて自分勝手な主張、と多くの人が歯牙にもかけなかったことだろう。

しかし、アメリカ合衆国という国は、トランプ氏みたいなやつらが作ってきたのである。

一四九三年からのコロンブスによる第二回航海で、スペインから西インド諸島に持ち込まれてきた牛馬が新大陸でも順調に繁殖し、その後、畜産業がアメリカにも持ち込まれた。十九世紀半ばは、馬を使って牛を飼育するカウボーイたち全盛の時代であった。

まだ北米大陸の開拓が途上で、西部一帯がワイルドウェストと呼ばれていた頃のことである。当時は、広大な平原に多数の牛を放し飼いにして、持ち主の異なる家畜が入り混じっている状態であった。そこから生まれたのが、持ち主を明らかにするブランディング(焼印捺し)だ。現在の広告用語のブランディングの語源がこれにあたる。

さらに、一八七四年にジョセフ・グリッデンという男が「有刺鉄線」の特許取得に成功すると、牧場主たちはそれぞれの土地をフェンスで囲って、所有を明確にし始めた。グリッデン以前にも同種の有刺ワイヤーを発明した人物はいたが、安価で大量生産が可能な方法を編み出したグリッデンが「有刺ワイヤー発明の父」となり、巨万の富を得たのである。

「コルトと有刺鉄線が西部を開拓した」という言説がアメリカにあるように、フェンスで所有地を囲い、銃器でそれを防衛したというのが、アメリカ人のルーツにあり、そうして守ってきたものと築いてきたものが彼らの誇りでもある。

元々人が住んでいた世界を、「新大陸」だなどと呼んで簒奪を重ね、また東部や南部から西部の辺境へ原住民をあの手この手で追いやり、「ここからこっち、入ってくんな!」と大地をフェンスで区切る。元来はスペイン語(メキシコ語)のヴァケーロが語源のカウボーイを「アメリカの象徴」として扱い、メキシコを見下す。

アメリカはそうやって作られてきた国だ(もちろん、一面的な見方をすれば、という話だ。私個人としては、荒野を拓いて生きて、そして死んでいった人々には多大な敬意を持っているつもりだ)。

だから、トランプ候補がメキシコ国境に壁を造ると言っても、さして驚くには値しない。もし本当にやった時には、ため息くらいはついても、「信じられない!」と騒ぐほどのことではない。

だけど、それ以前にトランプ候補が大統領選に勝ったら、私は「アメリカ人、マジか!」と一回くらいはひっくり返るだろう。
いや、大統領選の予想などしない。私の今年の日本シリーズの予想は広島カープの優勝だったが、それは単に期待していただけだ。

日本への影響などを難しく論じるような立場でもないので、私ができることといえば、ひっくり返る時に頭でも打たないよう、準備運動をしておくことだ。