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アベノミクス再考

2014年11月12日 23時41分 JST | 更新 2015年01月12日 19時12分 JST
時事通信社

10月31日、黒田日銀総裁のハローインバズーカ砲第2弾は、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の年金資金運用上、株式への投資を倍増させるルール変更と相まって、株価を上げ、円安をもたらしました。

日銀は年60兆~70兆円のペースで増やすマネタリーベース(資金供給量)を、約80兆円に拡大することを決定。中長期国債の買い入れペースは年約80兆円と、現状の約50兆円から約30兆円増やします。GPIFが国債の運用比率を下げた分を、日銀が引き受ける形です。

結果的に、政府の発行する国債をすべて日銀が市場から購入することになります。これは、「財政ファイナンス」そのものです。円安はますます、国民の生活を窮乏化させます。株のバブルは必ず破裂します。

また、GPIFのガバナンスはひどくて、誰も運用の責任を取れません。ガバナンスの改革もせずに、国民の虎の子の年金資産を高いリスクにさらす運用変更をしてはいけません。GPIFの前身の年金福祉事業団は資産の自主運用事業を赤字で閉めました。累積の損失は約1兆8千億円に及びますが、誰も責任を取っていません。

この国はどこへ行こうとしているのでしょうか?

アベノミクスの評価に関しては、第一の矢はコスト先送りの異次元の金融緩和政策であり、第二の矢は需要先食いの財政のばらまき政策です。どちらも、第三の矢の成長戦略のための時間稼ぎの政策です。しかし、経済成長率のトレンドが上向くような状況には至っていません。

経済の先行きは不透明なままですし、昨年の経済成長は第二の矢の公共投資のばらまき政策によるものでした。円安にもかかわらず、海外生産への移行で、輸出は伸びませんでした。円安による輸入物価の上昇で消費者物価が上がり、実質賃金のマイナスにより家計部門の実質購買力が抑制され、消費は冷え込んでいます。企業の設備投資も出てきません。

日本経済の潜在成長率は、現在0.3%程度と推計されています。80年には5%、90年でも4%あったものが、95年には1.5%、2000年に1%とつるべ落としで落ちてきました。

その背景には、生産年齢人口の減少があります。足元の労働投入量はマイナス0.6%です。労働投入量が減っても、TFP(全要素生産性)や資本投入量が増えれば潜在成長率は上がります。しかし、民間投資から減価償却を引いた民間準資本ストックは2008年からずーとマイナスです。

民間準資本投資をまかなう国民純貯蓄が2009年度以降、これまたずーっとマイナス近辺で、もはや日本は富を積む国ではなく、国富を費消する経済になっているからです。その原因は、社会保障予算による政府の赤字です。金融緩和や財政のバラマキでは、解決できない問題なのです。まずは、社会保障分野のスリム化を行った上で、第三の矢の規制改革による魅力的な投資先をつくることしか解決策はありません。

その一方で、潜在成長率が0近辺なのに、財政のバラマキで、昨年度は2.3%の成長でしたから、既に完全雇用の状況です。完全雇用下の財政・金融政策発動もナンセンスです。このような場合、国民所得は増えません。それなのに、2%の物価上昇目標に固執するのは、いくら「期待」に働きかける作戦とは言え、国際標準のフレクシブルなインフレターゲティング政策とは異なります。

アベノミクスの出口戦略は、ますます難しく、針の穴にラクダを通すことになりそうです。