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3Dプリンターは日常生活に欠かせないツールになる

2014年01月22日 22時38分 JST | 更新 2014年03月24日 18時12分 JST

メディアラボの新所長のジョイ・イトーが、波頭亮さんとの対談の中で、 「メディアラボはMITの建築学科の下にあるので、どんな研究も実際に「モノ」をつくるんですよ」と語っていた。

初代所長のネグロポンテが「アトムからビットへ」と繰り返して止まなかったことを思い起こすと、この違いは際立って見える。同じMITに一歩遅れて開設されたニール・ガーシェンフェルドの「ビッツ・アンド・アトムズセンター」の目覚ましい活躍ぶりが念頭にあるのかもしれない。

ガーシェンフェルドに言わせると、これからのコンピューターはデジタル工作機械と一体化した「ファブリケーター」として進化していく。そして、大型コンピューターが小型化・低価格化してPC(パーソナル・コンピューター)になったように、「ファブリケーター」もやがてPF(パーソナル・ファブリケーター)になっていくのである。

それだけではない。コンピューターのPC化は、ソーシャル化の流れと結びついて「ソーシャルメディア」による「ソーシャルコミュニケーション」を普及させた。同様に、ファブリケーターのPF化も、やはりソーシャル化の流れと結びついて、「ソーシャル工作機械」による「ソーシャルファブリケーション」が普及する中で進んでいくだろう。

現在世界中で、かつてのインターネットに匹敵する勢いで爆発的な広がりを見せている「FabLab」こそ、「ソーシャル工作機械」による「ソーシャルファブリケーション」の最初の場に他ならない。

デジタル工作機械には「引き算」型のレーザーカッターやNC工作機械の他に「足し算」型の3Dプリンターがある。「ソーシャルファブリケーション」でとりわけ人気の的になっているのが、設計データをシェアして手軽に使える3Dプリンターである。ところがガーシェンフェルド自身は、2013年の5月に東京で行った講演では「私は3Dプリンターはあまり好きではない」という趣旨の発言をしたそうだ。

ガーシェンフェルドの狙いがフィギュアやマグカップ作りなどではなく、本格的な「機械」作りにあるとすれば、それは当然の発言だろう。また。今後の製造業の主流がデジタル工作機械を使った製造になるとすれば、そこでは3次元プリンターはどちらかといえば補助的な役割しか果たさないのも当然だろう。

しかし、ここで視点を生産者から消費者ないし生活者のほうに変えてみると、話は違ってくる。20世紀の第二次産業革命の中核は、自動車や家電製品のような消費者が買ってきて使える「耐久消費財」すなわち「消費者用サービス生産機械」の大量生産にあった。

その延長線上で考えるなら、21世紀の第三次産業革命の中核は、消費者(コンシューマー)用というかむしろ生活者(プロシューマー)用の「もの製造機械」の大量生産になりそうだ。

生活者が手軽に使える安価な「もの製造機械」といえば、これはもう3Dプリンターにとどめを刺すだろう。3Dプリンターの主要な用途が、工場での機械の部品や、製品のプロトタイプあるいは金型製造にあるとみなすなら、それが製造業で果たす役割は補助的ないし、限定的なものにならざるを得ない。

しかし、それが生活者の毎日の生活の場で欲しがられる様々なものの手っ取り早い製造機械として需要され使用されるようになるとすればどうだろうか。かつて双方向の通信装置として作られたラジオは、放送の受信機となることで大衆商品化した。 1方向の情報配信システムとして考案された電話は、双方向のパーソナルな会話の手段となることで広く普及した。

3Dプリンターも、「ソーシャルファブリケーション」の手段となることで、私たちの今後の日常生活に欠かせないツールとして進化していくに違いない。現在、 3Dプリンターに対して騒ぎすぎとも言いたくなるような注目が集まっているのも、その可能性がいち早く認められたためではないだろうか。