すべての子どもに家庭を!日本で里親委託が進まない残念な理由

本日は都議会議事堂の控室に、人権NGOの国際的組織である、ヒューマン・ライツ・ウォッチの土井さまたちがいらっしゃいました。

本日は都議会議事堂の控室に、人権NGOの国際的組織である、

ヒューマン・ライツ・ウォッチの土井さまたちがいらっしゃいました。

「すべての子どもに家庭を!キャンペーン」

という活動をされており、里親委託・特別養子縁組に対して

特に消極的と言われる東京都の対応について、様々なご意見を伺いました。

私が以前に書いていた児童養護施設のブログ記事を見つけ、

コンタクトを取って下さったということで、とても嬉しいことですね!

「負の連鎖」を断ち切るための福祉なら、倍額でも出すべき。児童養護施設で感じたコト

「ワーキングプアを量産する児童養護施設は、いますぐやめろ」論に反論してみる

前回の委員会では児童養護施設への投資と充実を訴えましたが、

日本の「社会的養護」は圧倒的に施設に偏り、諸外国と比較をして

里親委託がまったく進んでいないのが実状です。

可能であればやはり、すべての児童に家庭的環境を与えることがベストです。

特に乳幼児(0~2歳)の時期に、家族的存在から充分な愛情を受けなかった子どもは、

深刻な「愛情剥奪症」になることも指摘されています。

実際、施設出身者には問題行動が多く、生活保護へ転落したり、

社会生活が困難な人材になってしまいがちなことは、以前の記事で述べた通りです。

適齢時期を過ぎ、問題行動が起きてからの里親委託や養子縁組はなかなか難しく、

乳児の、それも早い段階でいかに素早く里親を見つけるかが重要なポイントになります。

ところが日本、特に東京都は、この里親委託に極めて消極的です。

厚労省の平成24年度データでは、東京都における社会的養護が必要な新生児において、

乳児院への措置が321件に対して、里親への措置はわずか14件

しかも、そのほとんどが1歳を過ぎてからの措置です。

乳児院退所後(3歳児以降)の行先も、同じく平成24年度のデータでは

児童養護施設が約65%と、三分の二を施設に措置していることになります。

そもそもユニセフが定める社会的養護における国際基準では、

施設への措置は「最終手段」とされており、その条件は

きょうだいが多く、全員一緒に育てた方が良い場合

10代後半で、自分の意思で施設を選ぶ場合

里親委託が何度も破綻した場合

のいずれかに当てはまる時のみ、施設措置を認めるとしています。

先進国ではこの方針に基づき、まずは里親委託先を探すのが一般的です。

ところが我が国では、多分に文化的な背景もあると思いますが、

「基本的には施設で、うまくマッチングした場合は里親に委託する」

という真逆の方針が全国的に強く貫かれています。

「どんな親であれ、親は親」

「つらいことがあっても、実の親の元にいるのが一番」

こうした日本人の感情はなかなか払拭しがたいものがあります。例えば、

養育能力のない実親から子どもを保護し、里親などの預かり先で事故が起こった場合、

マスコミや国民はその措置を行った行政を強く批判するのは容易に想像されることです。

児童養護施設に「仕方なく」入れておく分にはそれほど批判されないが、

積極的に里親委託を行って、事故などが起こったらとんでもない…

実親から裁判でも起こされたら、責任が取れない…

成功するより、失敗しないことを重視する日本行政の体質失敗しないことを重視する日本行政の体質が、

もっとも色濃く出ている分野の一つともいえるでしょう。

本日は実際に、何人もの児童たちの里親となり、

社会や親元に送り出してきた方にもお話を伺いまして、

「もう施設では手に負えないから、という段階でようやく里親委託のオファーが来る」

「もっと愛情を注げる年齢段階で話をくれれば、上手くいく場合がたくさんある」

とのことで、とにかく施設が「抱え込み」をしがちな現状や、

児童相談所の担当者個人の裁量で対応が異なり、消極的な方が担当者になると、

ほとんど里親登録者に委託提案が来ない現状なども把握できました。

行政(児童相談所)の構造的問題の他にも、

乳児院などの施設へのインセンティブ(補助金制度)の歪みなど、

いくつか政策で解決できそうなポイントがあります。

この点についてはまた次回、政策提言をまとめてご紹介したいと思います。

委員会や本会議の質問でも、必ず取り上げていきます。

何度も申し上げるように、未来を担う子どもたちへの投資、

「負の連鎖」を断ち切るための投資は一切惜しむべきではありません

適切な家庭環境さえ与えられれば、彼らは社会を担う人材へと必ず成長していきます。

里親制度の改善については行政財源の問題だけでなく、

我が国の文化的背景や国民意識にまで働きかけていかなければなりませんが、

理解が広がるように情報発信も合わせて心掛けていきたいと思います。

改めましてヒューマン・ライツ・ウォッチの皆さま、

本日は本当にありがとうございました!

それでは、また明日。

(2014年11月27日「おときた駿公式ブログ」より転載)