閉ざされる障害児を持つ親たちのキャリア...「児童発達支援事業」と障害児保育を考える

都内にある「児童発達支援事業所」に行ってきました。これは障害児たち対して療育や訓練を行い文字通りの「発達支援」を行う事業所です。

こんばんは、おときた駿@ブロガー都議会議員(北区選出)です。

今日はお誘いをいただき、都内にある「児童発達支援事業所」に行ってきました。

(個人的なツテでお邪魔したため、名前等は伏せたいと思います)

「児童発達支援事業所」という言葉自体、耳慣れない方が多いと思います。

これは2012年4月に児童福祉法の改正で規定されたもので、障害児たち対して療育や訓練を行い文字通りの「発達支援」を行う事業所です。

以前に障害児たちが学校が終わった後に通う

「放課後等デイサービス」

についてレポートしたことがありましたが、放課後等デイサービスが文字通り就学児の放課後をサポートするのに対して、児童発達支援所は未就学児が支援を受けて育つ大切な居場所となっています。

参考:

施設長に現場の状況についてお伺いしましたが、放課後等デイサービス同様、様々な課題を抱えています。

まず人員配置。

国の基準では、こども5人:スタッフ1人の割合になっています。

認可保育園などの基準と同等で、人件費の補助金もこの割合で支給されます。

ところが、実際に私も1時間ほど子どもたちと遊びながら療育の様子を拝見させていただきましたが、5:1とか完全に無理ゲーです。

知的や発達など様々な事情を持っている子どもたちなので、その行動はまさに予測不能。今日は5人来ていたお子さんに対して、スタッフの数は4名。

ほぼマンツーマンじゃないとまともな療育は難しいとのことでした。

そしてまたこれも放課後等デイサービスと類似の問題点として、介護などと異なり障害の度合いによって加配がつかないこと。

知的と発達が重複している重度障害児を受け入れても、比較的軽度な発達障害のみの子どもを受け入れても、事業者が得られる利益≒補助金は変わりません。

重度障害のお子さまを受け入れればその分、スタッフの配置を手厚くして対応しなければなりません。

その結果、どんなお子さんでも受け入れようと頑張る事業者ほど、収益が苦しくなって事業継続が難しいというジレンマを抱える事になります。

一方で、利用者サイドにも悩みは尽きません。

まず放課後等デイサービスとの違いは、就学児は特別支援学校に通っている時間がありますが、未就学児には学校がありません

そして障害児保育の分野に乗り出した社会起業家の駒崎弘樹さんが主張している通り、残念ながら我が国の福祉では、障害を持った乳幼児・未就学児を預ける保育インフラは極めて脆弱なものになっています。

通常の保育所や幼稚園では、軽度でも知的や発達の障害児は「うちでは対応できない」と断られるケースが大半です。

(区立幼稚園ですらも!)

そこで頼みの綱となる児童発達支援所ですが、子どもを預かってくれるのは長くて10時~14時のおおむね4時間程度。短い日は2時間となっています。

これではフルタイムで働くなど夢のまた夢です。

つまり多くの保護者(ほとんどの場合母親)は、子どもに障害が発覚したその瞬間にキャリアを閉ざされることになります。

(画像は障害児保育ヘレンHPより)

こうした状況を打破するために民間レベルでは、フローレンスさんが日本初の長時間障害児保育所を設立しましたが、本来であればこれは行政がもっともっと注力して行うべきことです。

「保育と療育は別物」

「障害児を長時間、保育所に預けるのはいかがなものか」

なんて縦割り行政や保守的な理想論を爆発させていないで、現実に即した政策的投資を実現していくべきでしょう。

特にこれから、発達障害児はますますの増加が見込まれます。

その保護者たちのキャリアを閉ざす損失を考えれば、この分野への投資は決して無駄にならないはずです。

その他にも障害児たちの成長過程において、就園・就学・就労のタイミングで行政支援が途絶えがちになるなど、縦割り行政の改善とトータルな支援の必要性など、様々な課題を改めて痛感しました。

まだまだ世間の理解も追いつかない・かつては今ほど問題になってこなかった障害児保育・療育の分野は、医学の発達とともにこれからますます大きな社会課題になることは間違いありません。

いままさに時代の過渡期にいる人々がもっとも苦しむことがないよう、早期の支援充実に向けて、微力ながらしっかりと政策提言していきたいと思います。

訪問を受け入れてくれた関係者の皆さま、本当にありがとうございました!

それでは、また明日。

(2016年3月30日「東京都議会議員 おときた駿 公式サイト」より転載)

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