傾いていなかった豊洲新市場の「疑惑の柱」。悪質なデマには、デマと丁寧に反証することが必要

中央区議会議員は、柱の写真に対して「目視で確認していない」と言い切っています。

こんばんは、おときた駿@ブロガー都議会議員(北区選出)です。

豊洲新市場について集中審議が行われる毎日ですが、委員ではない私は自分なりの働きをするために、早朝に三度目の豊洲新市場視察に入らせていただきました。

というのも先般、「豊洲新市場の加工パッケージ棟の柱が、大きく傾いてる!」という情報が画像とともに報道され、様々な憶測や不安を呼ぶことになったからです。

こうした報道が、できれば築地に留まりたいという純真な方々の気持ちを動かし、「豊洲新市場はもう無理だ!」という誤ったイメージが醸成されてしまうのですが、これはさすがにちょっと待ってほしいと。

なにせ論拠となっているのが、一枚の写真。しかもこれを提供した中央区議会議員は、BuzzFeedの取材に対して「目視で確認していない」と言い切っています。

フジテレビが1枚の写真で豊洲市場の柱の傾きを疑う→東京都は全面否定。フジテレビと専門家は...。

写真を提供した中央区の渡部恵子議員が、BuzzFeed Newsに語った経緯はこうだ。現場へは9月23日、床のひび割れを視察するために行った。床を写そうとiPadで撮った複数の写真のうち、1枚が今回の写真だった。


「床にずっと注目しており、柱の傾きは目視で確認していません」

視察後、写真を見ると、柱が傾いているように見えたので、知人にメールで送った。その後、フジテレビの「新報道2001」に検証を依頼しないか、とその知人から連絡が入り、承諾した。

(中略)

今回の報道を受け、渡部議員は「傾いていたら大変なことなので、傾いていないことを願う。今後は、都議に調査をお願いしたい」と話している。

...そうですか。では本人に頼まれたわけではありませんが、都議が調査に出向こうではないですか!

こちらが加工パッケージ棟4階の「疑惑の柱」。目視では特に傾いているようには見えませんし、上記の写真を見てもそれほど違和感を感じる人はいないと思います。撮影機材はiPhone6sです。

では同じスマホを縦にして、少しだけ構図を変えて上から撮ってみると、あら不思議!

柱が傾いているように見えるではありませんか!!

...まあこれでほぼ終了なのですが、一度思い込んでしまった人を説得するためには、やはり論拠となる数字が必要になりますので。

「下げ振り」という専用の測定器具と脚立を使って、測定を行いました。

重しがついた糸を垂らして、基準点となる上部と、下部の紐の位置(柱からの離れ距離)を測定すれば、その柱の垂直性が測定できるというわけですね。基準点となる上部での離れ距離は柱から5cmです

で、そこから約4m下では約4.5cm。およそ5mmの誤差があります。傾きにして1.25/1000程度ですね。

参考値として、国交省による「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」では、3/1000未満の傾きでは施工会社による瑕疵が存ずる可能性は低いとされています。

住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準

これは問題なく施工が行われていると断言できるでしょう。

以上、「豊洲新市場の柱が傾いており、安全性に疑問がある」という報道は、完全に誤りであることをここに証明させていただくものです。

私がほぼ同じ地点から撮った二枚の写真でおわかりの通り、撮り方で傾きが出ることくらいカメラ・画像の専門家がいれば即座に理解できることであり、なんらかの意図をもった報道であった懸念を拭うことはできません。

また、こちらの写真を撮影しメディアに提供したのは、自らも築地で仲卸を営み、築地市場の移転に極めて慎重な立場を表明している区議会議員(公人)の方です。

現場に足を運んでいたにもかかわらず、このような不確かな情報・画像を安易にメディアに提供したことは、仮に悪意や政治的意図がなかったとしても、公人としては著しく軽率・不適切な行為であったと言わざる得ません。

不安や懸念を煽るのは、簡単なことかもしれません。

「◯◯の可能性がある」

「✕✕という疑念は払拭できない」

という具合に断定系を避ければ、どんなことでも主張することができるからです(BPOされるかもしれませんけど)。

一方で、安全性を証明することは極めて困難です。実際に今も土壌汚染については、専門家会議の結論を待たなければ、軽々なことは言えない状況です。

しかしだからといって、雨後の竹の子のように沸いてくる不確かで不適切な情報を、なかには明確に「デマ」と断定できるようなものまで報道されている現状を、見過ごしてしまって果たして良いのでしょうか?

豊洲そのものや設計会社、施工事業者への風評被害を助長し、冷静な判断を狂わせているのは、一体誰なのでしょうか?

そして彼らの手口は、いつも一緒です。次なるターゲットになっているのは本格稼働前の「地下水管理システム」ですが、机上の空論で不安や懸念を煽るのではなく、まずは稼働後の実態を検証するべきでしょう。

私は面倒でも、馬鹿らしくても、このような不確かな情報は、その都度しっかりと検証・反証していく必要があると思います。大きな失点を続けている東京都ですが、情報発信体制を強化してきっちり対応を行うべきです。

「東京都の言うことなんて、もはや何も信用できない!」

そういった声があることも承知しています。だからこそ存在するのが、調査権をもったわれわれ都議会議員です。

一人の力でできることには限界はありますが、これからも出来る限り独自の調査を続け、都民の皆さまに正確な情報をお伝えできるよう尽力していきたいと思います。

それでは、また明日。

(2016年10月7日「おときた駿オフィシャルブログ」より転載)

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