築地市場で、まさかの土壌汚染調査義務を黙殺の可能性...。なにがどうしてこうなったのか、徹底解説します

都の中央卸売市場は、市場内で工事をする際は届出・調査の義務があったにもかかわらず、8箇所の工事でそれを怠っていたことが判明したのです。

こんばんは、おときた駿@ブロガー都議会議員(北区選出)です。

本日は約8時間におよぶ代表質問が行われたのですが、その裏で築地移転関連のビッグニュースが流れましたので、まずはこちらから触れたいと思います。

【豊洲問題】築地市場敷地も土壌汚染の恐れ 義務付けられた調査怠る - 産経ニュース

タイトルの通り築地市場の敷地内で本来、土壌汚染の可能性があるため事前に届出・調査が必要な工事が行われていたにもかかわらず、その届出・調査を実施していなかったことが発覚したという非常事態です。

なんですが実はこれ、2つ別の事象が混在しておりまして、ニュース記事だけ見ると非常にわかりづらくなっています。ちょっとどこまで噛み砕いて説明できるかわからないのですが、トライしてみましょう。

このニュースの元になっているのは、環境局・中央卸売市場という別々の部署から発表された2つの情報です。

まず環境局から、築地市場跡地で環状二号線の工事を行うにあたり、昨年3月の段階で建設局から「調査届出書」が提出されていたことが発表されます。

これは「都民の健康と安遠を確保する環境に関する条例」によって、一定の面積以上の土地を改変する際には、調査結果を届けなければならないと定められているためです。

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(土地の改変時における改変者の義務)

第百十七条

規則で定める面積以上の土地において行う土地の切り盛り、掘削等規則で定める行為(以下「土地の改変」という。)を行う者(以下「土地改変者」という。)は、土壌汚染対策指針に基づき、当該土地の改変を行う土地における過去の有害物質の取扱事業場の設置状況等規則で定める事項について調査し、その結果を知事に届け出なければならない。

2 知事は、前項の調査の結果、当該土地の土壌が汚染され、又は汚染されているおそれがあると認めるときは、土地の改変者に対し、土壌汚染対策指針に基づき、規則で定めるところにより当該土壌の汚染状況を調査し、その結果を報告するよう求めることができる。

3 土地改変者は、前項の調査の結果、当該土地の土壌の有害物質の濃度が汚染土壌処理基準を超えていることが判明したときは、土地の改変に伴う汚染の拡散等を防止するため、土壌汚染対策指針に基づき、規則で定めるところにより、汚染拡散防止計画書を作成し、知事に提出しなければならない。

4 前項により汚染拡散防止計画書の提出をした土地改変者は、前項の汚染拡散防止計画書の内容を誠実に実施し、汚染の拡散の防止の措置が完了したときは、その旨を知事に届け出なければならない。

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で、建設局から届け出があった資料の中には、すでに現時点で「土壌汚染の可能性が考えられる」場所として、築地市場内の以下の場所が指摘されています。

(赤マルは筆者による)

築地市場の土地は戦前、海軍や米軍によって利用され、実験場やガソリンスタンド、あるいはクリーニング場になっていたことは有名な話で、その代表的な場所に赤マルをつけてみましたが、その所在地は広範囲に渡っています。

これらの部分に関しては土壌汚染の可能性があり、調査が必要となるわけですね(ただし、あくまで可能性です)。

昨年3月に出されていた届出がなぜいま注目されたかというと、そもそもこの情報はあだち康史代議士の情報公開請求で明るみに出たようなのですが、これによってもう一つの事実が玉突きで明らかになります。

実は都の中央卸売市場は、建設局のように市場内で工事をする際は届出・調査の義務があったにもかかわらず、8箇所の工事でそれを怠っていたことが判明したのです。

そして8ヶ所の場所は、以下の地図の通り。

正確なところは図面を突き合わせてみないとわかりませんが、前述の建設局が出した「土壌汚染の恐れあり」の範囲と、かなりの部分が重複している可能性が高いと言えます。

少なくともその部分については、土壌汚染の調査をしなければ違法行為である恐れがあります。だって、都の別の部署が「土壌汚染の可能性が考えられる」って資料をつくって出しちゃっているんだから。

関係者は少し前から、この届出がなかった可能性に気づいていたようですが、今回建設局の資料が開示請求によって明るみに出たことによって、築地市場内に「土壌汚染の可能性あり」とされる資料を都が作成していたことと、その区画内ですでに別の工事が行われていた事実が突き合わされることが確実となり、他から指摘される前に観念して自ら発表したというのが今回の経緯と言えるでしょう。

非常にややこしい話で恐縮ですが、一部ネット上で不正確な情報が飛び交っていましたので、なるべく詳しい説明をさせていただきました。

ちなみにこの8箇所の工事がスタートしたのは、画像にもあるように平成13年から。条例自体が施行されたのがこの年からという理由ももちろんありますが、平成13年=2001年といえば、石原都政下で豊洲への移転が事実上決定されたタイミングです。

もはや豊洲移転は確実なのだし、築地の問題をわざわざ掘り起こす必要はない。調査をしてトンデモない結果が出たら、それこそ築地の営業に支障をきたしてしまう...もう、このまま逃げ切ろう!

中央卸市場サイドは単なるミスだと主張しているものの、こんな思惑があったように感じてしまうのは避けられません。築地への配慮だったのかもしれませんが、法令違反ですから当然、この不作為は厳しく糾弾されなければならないでしょう。

本当に先日の仮設申請を行っていたことといい、中央卸市場は不手際が目立ちすぎますので、改めて猛省を求めたいと思います。

営業している方々への配慮などでなかなか難しい面もあったことは事実ですが、いずれにせよこれによって、部分的とはいえ築地市場の土壌調査が行われる可能性は高いと言えそうです。

私自身はかねてから独自に築地市場の濾過海水の調査などを行い、築地の安全性についても警鐘を鳴らしてきた立場ですので、今回の件で土壌汚染調査が行われることは前向きに捉えたいと思います。

参考:豊洲新市場(地下たまり水)と築地市場(濾過海水)、独自調査では双方から環境基準値を超える汚染物質が検出も...?

ただあくまで現時点では、築地の土壌汚染については「可能性がある」だけに過ぎませんから、これをもって築地が汚染されているかのような風評が必要以上に立つことも望ましくありません。

どの程度の調査が行われるかも含めて今後の展開に注視し、正確な情報発信を心がけ、豊洲と築地を冷静に比較して判断材料にしていくことが期待されます。

また続報がありましたら、随時お知らせいたします。

長くなりましたが、それでは、また明日。

(2017年2月28日「東京都議会議員 おときた駿 公式サイト」より転載)

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