「燃えるゴミ」が燃やせない町・夕張に、暗い日本の未来をみた

いよいよ今回は、具体的な夕張の破綻について触れていきます。正直、何から話して良いものか...あまりにも衝撃的なことが多く、なかなか現時点でも考えがまとまっていません。

いよいよ今回は、具体的な夕張の破綻について触れていきます。

正直、何から話して良いものか...あまりにも衝撃的なことが多く、

なかなか現時点でも考えがまとまっていません。

「ここでは、視界に入るもののほとんどが市の持ち物です

という衝撃の一言から始まった夕張視察。

約5000世帯のうち、なんと3700世帯が公営住宅。

公衆浴場、スキー場、ホテルに観光施設など、箱モノはほぼすべて行政所有です。

「炭鉱の街」

として誕生した人工都市夕張は、

かつて住宅・光熱費・娯楽施設などをすべて炭鉱会社が面倒をみていたという

歴史的経緯から、稀にみる「大きな政府」による地方都市となりました。

そこに輪をかけて、「炭鉱から観光へ」の箱モノ投資は見事に失敗し、

市税収入は8億しかないのに、322億円もの負債を抱えて財政再建団体に転落

地方交付税などを活用しながら、平成37年まであと10年以上、借金を返済していくことになります。

とまあ、文章で書くとサラっとしてしまうのですけど、

これは思っている以上にヤバい状態です。

この借金返済期間は「必要最低限の行政」として、

住民サービスなども削れるだけ削減。職員の給与もカット、昇級なしです。

民間に雇用は少なく、街に活気など求めるべくもない有様です。

こんな状態があと、10年以上も続くことが確定しているんです。

すると、何が起きるか。

若い世代を中心とした、急激な人口流出です。

公務員も、若くて優秀な人からやめていくそうです。

最盛期に12万人を数えた夕張の人口は、先日とうとう1万人を切りました。

そりゃそうですね。

頑張っても絶対に給料は上がらない。行政サービスは近隣都市と比べて最低。

学校も小学校・中学校・高校それぞれ一校しかなく、子どもに良質な教育を受けさせられない。

自分が20代・30代の立場で移動の自由があれば、

イチもニもなく引っ越し・移住を検討するでしょう。

・負債を返済している間は、投資が一切できないので住民は夢も希望も持てない→人口が減る

・行政サービスを削りすぎて人口が減る→対策として、少しずつ行政サービスを復活させる

→借金を返す期間が長くなり、やっぱり夢や希望が持てない→人口が減る、の無限ループ

・かといって、地方債の信頼を暴落させないため、迅速な破綻処理は絶対できない=解決不可能!

国や北海道から税収の数倍となる地方交付金などの援助を受けながら

「究極の撤退戦」を続け、それが完了する平成37年に夕張の街に残るのは、

老朽化しきった箱モノと、ほとんどが高齢者となった5000人の人口...

これが、日本唯一の「財政破綻都市」の生々しい実態でした。

「夕張と国(日本)は違う。夕張は破綻しても、北海道や国が支えてくれる」

と、希望を込めるように職員の方々がおっしゃっていました。

しかし、夕張を日本、北海道・国をIMF・国連に変えれば同じです。

そして夕張の箱モノにあたるのが、我が国でいえば過剰な社会保障でしょう。

今回、もっとも衝撃的だったのは、

夕張のゴミ処理場の実態でした。

写真は焼却施設ですが、実は現在は使われていません。

老朽化によりダイオキシン対策基準を満たすことができず、

かといって破綻によって建て替えも取り壊しもできず、無残にその姿をさらしています。

じゃあ、夕張ではゴミはどうしているのでしょうか。

なんと、処理場にほったらかし

生ごみも、燃えるゴミも、燃えないゴミも。

あたりに一面に漂う異臭と、信じられないほどの数のカラスたち。

おと「これって、一杯になっちゃったらどうするんですか?」

職員「幸い人口が減っているので、あと5年くらいは持ちそうなんです」

おと「じゃあ、その後は...??」

職員「・・・」

放漫経営のツケとして、後世に莫大な借金とゴミの山を残す。

これを人の罪と言わず、いったいなんと表現すればいいのでしょう。

これほどまでに、「決められた金額の中で行政運営をする」、

プライマリーバランス(財政収支)を均衡させることは重要なのです。

福祉という名目で無尽蔵に借金(国債発行)を繰り返し、明白な破綻へ向かって

突き進む国の一員として、夕張を他人事のように責め立てることは、到底できませんでした。

夕張の今と日本の未来を重ね、

なんだかどっと疲れた二日間の視察でした。

「夢も希望もない」とまでは言いたくありませんが、

やはり明るい未来が描けなければ、人間はパワーなんて出ないですよね...。

夕張の行政サービスのカットや教育政現場から、

個別に政策提言できそうなことも複数発見されましたので、

またそれは折をみて発信させていただきたいと思います。

「目先の娯楽施設や観光施設に投資したなんて、大バカだ」

そう夕張を笑うのは簡単です。

でも、彼らも生きるために必死でした。

その時は確かに、市民からのニーズがありました。

今のわが国や東京都の過剰な高齢者福祉や医療への税金投資は、

これと比べていかなる理由で正当化されるのでしょうか。

皆さまも、そんなことを少しだけ考えていただければ幸いです。

それでは、また明日。

(2014年11月15日「おときた駿公式ブログ」より転載)

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