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協力者の気持ちが萎える瞬間  ~「声を集める」ときにやってはいけない3つのポイント~

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企業が何らかの経営課題の解決に取り組む際には、その課題に関連する社内外のステークホルダーの声を集めることが欠かせない。インナーブランディングの推進においても同じだ。

私たちがインナーブランディングを目的とする調査やワークショップを行う前には、コミュニケーションの対象となる社員の現状に対する仮説を立て、気持ちを想像しながら設計を進めていく。しかし、私自身は大企業に勤務したことがなく「調査やインタビューをされる側」になったことがなかった。だから、忙しい仕事の合間を縫ってアンケートやヒアリングに協力してくれる社員の気持ちを本当の意味では理解していなかったかもしれない。...この先に書く出来事を体験するまでは。

縁あって今年度から、地元自治体が開催するとある会議に市民委員として参加することになった。企業ではないが、ひとつの大きなコミュニティの課題を解決するために、「当事者の声を届ける」ステークホルダー側の立場だ。まだ委員になって2カ月なのだが、「声を集める側」である市役所とのやりとりにおいて、早くもモチベーションが急降下する出来事がいくつかあった。自分が逆の立場になったとき同じ轍を踏まないように自戒を込め、「やってはいけないポイント」として3つのエピソードを紹介したい。


1.相手の都合を考えず、直前になって依頼する

たまたま興味のある分野の会議だったことと、市役所内に勤める知人の推薦もあり、市民委員に応募した。しばらく経ったある日、私が応募した会議の告知が市の広報紙に掲載されているのを見つけた。「会議の日程が決まっているのに市から何の連絡もないということは、委員の選考に落ちたのかな?」と思っていた数日後、会議の事務局から電話があった。

「●月●日に初回の会議があるのですが、出席いただけますでしょうか?」―――。連絡が来た時点で当日まで1週間もなく、会議は平日の日中。出席するには仕事の都合をつけて休暇を申請する必要がある。

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たまたま会社が社員のプライベートな活動にも理解があり、その日に動かせないアポイントも入っていなかったので都合をつけることができたが、この時点で、かなり、ガックリきた。


2.対象者の中の特定の層のみがアクセスしやすい条件で声を集める

会議自体は白熱して、実りのあるものだったと思う。しかし、参加者の年齢層が全体的に高く、偏った印象を受けた。

ある日事務局から、会議に関係したテーマで週末に行われるイベントの案内を受けた。「週末のイベントなら、もっと色々な立場の人、若い人とも意見交換できるかもしれない」と期待した。しかし、その日は夫が不在で、小学生の娘たちを預ける先のあてがない。イベントには保育サービスがついていたが「1歳半から就学前までの子ども」が対象で、利用できない。そこで、子どもたちを一緒に連れて行こうと考えた。

昔からボランティアの会議や勉強会などに子連れで行くことが度々あり、子どもたちも場慣れしている。会場の隅で宿題か読書でもさせておけばいいだろう。念のためその旨を事務局にメールで連絡してみたところ...

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以下の理由から、お子様の同伴は、これまでご遠慮いただいております
・他の参加者の集中力を欠く
・イベント参加者の定員を設定する際に、使用する会場の定員を考慮している
いただきましたご意見のとおり今後のイベント開催の際には、検討すべき課題の
一つとさせていただきます。
なお、今回のイベントにつきましては、事前周知をしておりませんので、お子様
の会場内への同伴はご遠慮いただけますと幸いです。
ご無理を申しまして、誠に申し訳ございませんが、当イベントへは、何卒ご参加
の程、お願い申し上げます。
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といった、事務的な返信が送られてきた。あまりに硬直した対応に、うすら寒い気持ちになった。イベントのテーマは「女性の活躍」。それなのに「子どもは迷惑」といわんばかりの対応で、子育て層の勇気を挫いて何か良いことがあるのだろうか。

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暗澹とした思いで愚痴を漏らしていたら、夫から「女性の活躍がテーマのイベントなのだから、娘たちも当事者だ。同伴者ではなく参加者として扱ってもらったらどうか」というアドバイスをもらった。イベントの案内を見ると、参加条件に年齢制限は書かれていない。建設的な解決策に勇気を得て、再度事務局にメールを入れたところ...、翌日こんな電話が入った。

「このたびは大変ご心配をおかけし申し訳ありません。大人の目があるところで、小学生のお子さんたちに過ごしていただけるよう別室を確保しましたので...」

がっかりして泣きたくなった。ちがう、そんな特別待遇を求めていたわけじゃない。イベント会場の隅っこに座らせてもらうか、保育室で小さな子たちと一緒に過ごさせてもらえればそれでよかったのだ。

案の定、イベント参加者の年齢層は高く、運営スタッフを除いて50人程と思われる参加者のうち、自分と同世代か、もっと若い世代に見える人は、片手で数えられるほどしかいなかった。「さまざまな状況の人がいて当たり前」という多様性を受け入れる環境があれば、誰でも気兼ねなく参加でき、さまざまな世代の声を反映することができるはずなのに。


3.取り組みの意味合いや協力するメリットを対象者にちゃんと説明しない

そんなこんながあって、数年前に行政の同じセクションが主催するイベントに参加したときのことを、ふと思い出した。

やはり「女性の活躍」をテーマとした講演会だった。登壇したのは、元スポーツ選手の女性。それまで男性中心だった競技で、様々な障壁に立ち向かいながら女性が活躍する道筋を切り拓き、後続のために今も解説者として活躍されている方だった。いま将来について考えている学生たち、社会人として男性社会の中で戦っている女性に聞かせることができたら、どれだけ勇気づけられるだろう、と思えるようないい話だった。

ところが、会場には空席が目立ち、座っているのは高齢の方ばかり。参加者の平均年齢は60歳を軽く超えているだろうと思われ、パートナーに誘われて気の進まない中ついてきたのであろう、話に関心のなさそうな男性や、居眠りをしている人も多かった。講師の方に申し訳ない気持ちになるとともに、自分たちの税金がどれだけ見当はずれな施策に浪費されているのかと腹が立った。

内容が良いのにそれがちゃんと告知できていない。何のためのイベントなのか、誰に向けられたものなのか、参加するとどんな良いことがあるのかがアピールされていないために、本当に来てほしい人に対して情報を届けられていなかったのである。

私の参加する会議にしろ、イベントにしろ、未来を担う若い世代や、現在困難に直面している若い社会人や子育て世代が、違和感なく、不便なく参加できなければ、目的を果たせないのではないだろうか。しかし、場の設定自体がそれらの層の人々にとって参加しづらく、情報にアクセスしづらい状況になっている上に、そこに関わるメリットがわからない。

ただでさえ仕事や育児で忙しい人たちに「参加したい」「協力したい」という気を起させるには、その取り組みが何を目指していて、そこに参加することが相手にとってどんな意味を持つのか、明確にしなければ無理だろう。

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これら3つのがっかりエピソードは、ステークホルダーの声を集める主体が「役所」ということもあり、極端な事例だったかもしれない。さまざまな制約の中で、できるだけ公平に・平等にふるまうことを求められる行政の職員には、企業に勤める人には想像できないような苦労もあるだろう。

しかし、少なくとも私は、これらの体験を通して「もしかして行政は、現役世代の声を聞く気なんか、最初っからないんじゃないかなー」という疑念が心に沁みついてしまった。

さて、同じことが企業の取り組みで起こらないと言い切れるだろうか。社員アンケートの締切が、営業部門の社員が忙しい月末に設定されていないか。製造ラインや店舗など、普段の業務でPCを使用しない社員が多いのに、意見を受け付ける場所がイントラネットだけになっていないか。取り組みの説明がすべて経営目線で「社員の幸せにどう寄与するのか」ということがないがしろにされていないか。

信頼関係がなければ、相手に心を開いてはもらえない。信頼関係のないまま進めた調査の結果は、現状をちゃんと反映したものにならないかもしれない。自分が反対側の立場に立ってみて、あらためて、相手の立場や気持ちをよく考えることを、決して忘れないようにしたいと思った。

Text by seo
Sofia コラムより転載