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ワークとライフを越境して得るものは?

目的意識が、あらゆる経験を学びに変える

2017年10月25日 17時14分 JST | 更新 2017年10月25日 17時14分 JST
© oka

本業以外での経験が、ミドルマネジャーの成長につながった

先日、組織開発実践者のコミュニティであるODネットワークジャパンの全国大会が行われた際、法政大学の石山恒貴教授による「越境学習」に関するセッションに参加した。そこで、ミドルマネージャーの育成を目的としたギャップジャパン株式会社によるプロジェクトが紹介されていた。

それは、希望者が通常業務をしながら、業務時間外に社外のNPOが実践する「社会課題の解決」の取り組みに携わるという3ヵ月間の研修プログラムだ。あえて畑違いの組織に飛び込み、問題解決に取り組むというのは一見、本業に対しては負荷しか与えないように思う。しかし研修の参加者はこの研修を通した自らの成長を実感しており、大変な好評を得て希望者が増え続けているという。

研修参加者が得たものは、普段かかわることのない世界、会社とは異なる組織の中で人間関係を構築し、リーダーシップを発揮し、問題解決に取り組むという経験だ。普段の仕事とは直接かかわりのない経験を通して、あらためて自分の会社や職場、業務を見ることで、今までとは異なった視点を獲得し、自分のキャリアや組織の未来に向けた意識を持つことができる。いま、人材育成の分野で「越境学習」が注目されているのも、「仕事以外の場での経験」が実はとても貴重で、そこから得られるものを仕事に生かすことができるということに、多くの人が気づき始めているからではないだろうか。

ワークとライフの融合に、現状をより良く変えていくカギがある

だとしたら、ワークとライフはどうだろうか。会社で働きながら業務時間外にNPOで社会課題を解決することと同様に、仕事をしながら家庭で育児や家事を担うことは傍から見るととても大変そうに見える。

私事で恐縮だが、自分のことを例に紹介したい。

ある金曜日の夜、同僚から「土日は休めるのか?」と訊かれた。あらためて、共働きで保育園児の子どもがいる自分の生活を振り返ってみると、平日の朝は子どもを保育園に送り、夜は帰宅してから家事をして眠る日々だ。土日は終日、子どもと一緒に家事をしたり、遊んだり。その合間に、平日にできなかった家事を挟み込む。実際にやっていることや比重は異なるが、妻も同じような生活をしている。

そんな話をしたら、「一体いつ休むのか?」「自分の時間はあるのか?」と根ほり葉ほり訊かれた。たしかに一週間はあっという間で、自分だけの時間はとても貴重で、確保するには周囲の協力が必要だ。時間の感覚は、一人暮らしの時とも、子どもがいない時とも変わってきている。ただ、このような生活は共働きをしながら幼い子どもを育てている夫婦にとっては珍しいことではなく、各家族で時間の使い方、認識の仕方は十人十色だと思う。

そして、この生活の中で得たものも、とても多い。たとえばお客様の会社で起きていることを考える上で、「子育てをしている人がどのようにキャリアを築いていくのか」「周囲の人との関係性はどうなるのか」などと、考えるヒントを得ている。そして、時間に対する認識は精度が増してきているので、仕事の生産性は上がってきている(と自分では思っている)。

さらに、コントロールできない幼子の存在によって、対人関係についても少しずつ辛抱強く、柔軟に、いい意味であきらめる(受け入れる)ことができるようになってきている。例えば「聞きたくないことには、全く関心を示さない」「気分によって、突然態度を180度変える」「こちらのスケジュールお構いなしに、自分の事を挟み込んでくる」そんな人がもし自分の職場にいたらたまったものではないが、「仕事だから」とドライに割り切れるかもしれない。しかし、それが自分の子どもなら放り出すわけにもいかず、日々、どう付き合うか考え向き合うことになる。そして、子育てを通して学んだことは、仕事における人間関係にも応用できることに後で気付く。

逆もしかり。子どもに何か教えようとしたときに思い出すのは、研修などでも扱っている「育て方・教え方」のことだし、夫婦で連携して生活をしていくためには、職場と同じように報連相が欠かせない。

ワークとライフを別々のものととらえてバランスを取ろうとすると、どうしても間に境界ができてしまう。しかし、その境界を飛び越えて、ワークとライフそれぞれの場での経験をもう一方の場に活かすことができれば、自分の人生に相乗効果を生み出すことができる。「ワークライフインテグレーション」という言葉もあるが、そんな風に、自分の毎日を少しだけ大きく捉えてみると、実は現状を変える、より良くしていくためのヒントはまだまだたくさんあるのかもしれない。

目的意識が、あらゆる経験を学びに変える

一見関係のなさそうな経験を別の場で生かすためには、どのような環境であれ、そこから「何かを得る」「何を得られるかはわからないが、経験を次に活かす」という目的意識を持つことが最も大切だ。そのことを私は、育休を経験した妻から教えられた。

妻は育休を取った際、1年間、仕事から離れることが最初とても不安だったという。自分は1年後、仕事ができるのか。足手まといにならないか。未知の生活への不安は尽きない。しかし、育児をしながら、育休中にしか会えない人と会い、さまざまな人と話をする中で「育児の経験が職場でも活かせるかもしれない」ということに気付いた。育児の中で起きるさまざまな予測不可能な出来事、それにどう対応するか?そんな日常を頭の中で「職場で起こることと、それに対する対応」に変換しながら、1年間の育休を使い切った。意識は常に、「何かを得る」「育児から得たものを仕事に生かす」という事に向けられていたため、試行錯誤はとても回転が速く、いつも楽しそうであった。

冒頭で紹介した越境学習の研修も、もし強制的に参加させられたのならただの苦行にしかならず、会社にとっても、参加者を受け入れるNPOにとっても時間と労力の無駄になっていたかもしれない。「何かを得たい」という意識を持って手を挙げた人が取り組んだからこそ、多くの気付きと学びを生んだのだろう。

今、自分が関わっている社会や環境、人間関係に対して、どれだけ主体的に関わろうとしているか。そしてどれだけ俯瞰的に自分のことを捉えられているか?そんなことを意識するだけでも、まだまだ、自分の毎日を楽しいものに変えていけるチャンスは生まれてくると感じている。
(Takahiro Furukawa)

2017年10月19日「Sofia ブログ」より転載