アジア初の同性婚容認、台湾の大きな前進を祝福したい

まだまだ日本では同性婚についての議論が十分にされているとは言えません。

台湾で、同性婚が認められていない現行の民法は「違憲」と判断され、2年以内に修正することが命じられました。

以前、明治大学で開催されたワークショップ「台湾における婚姻平等化に向けた法改正の動き」の内容をここにまとめましたが、その最後に「司法院大法官が3月に憲法法廷(口頭弁論)を開き、憲法解釈を行うことを決定しました」と書きました。その憲法法廷で5月24日、同性婚が認められていないことは「違憲」と判断されたことになります。

また、立法機関が2年内で法律の修正または制定をしなかった場合、民法の婚姻は自動的に同性にも適用され得ることになるそうです。

AFPBBの報道よると、今回の判断は14人の大法官のうち10人以上の賛成が必要でしたが、反対に回ったのは2名のみだったそうです。

■婚姻は子どもを産むことを前提条件としていない

今回の大法官(憲法裁判所)意見の要旨をEMA日本がまとめてくれています。

「同性婚を認めたとしても、異性婚を前提としてきた社会秩序が変わってしまうわけではない。むしろ、婚姻の自由を同性カップルにも広げることで、社会の安定が強化されるであろう。同性愛者であれ異性愛者であれ、愛する人と肉体的にも精神的にも一緒にいたいと思う気持ちやその必要性は変わらない。婚姻は人間の尊厳を擁護し、健全な個性を育むために重要である。

我が国(台湾)においては、同性愛者は社会から否定されてきた。それゆえ、彼らは社会から隔離され、孤立し、事実上および法律上の差別に苦しめられてきた。また、社会の偏見により、彼らが民主的な方法で法的な不利益を改めることも困難であった。

民法の婚姻規定は、子どもを産むことを前提条件とはしていない。婚姻した一方が子どもを作れないからといって婚姻が無効になることもなく、離婚の理由にもならない。子どもを産むことが婚姻の基本的な要素であるとは全く言えない。ゆえに、自然な妊娠によって子どもを授かることができない同性カップルについても、そのことを理由に婚姻を認めないことは、合理性を欠く。

同性婚が認められても、同性カップルは異性カップルと同様、婚姻中も離婚後も権利と義務を負うのであり、社会の基本的倫理は不変である。社会的倫理に影響することを理由に同性婚を認めない、つまり同性カップルの人たちに異なる扱いを認めることは、全く合理性を欠き、憲法の定める平等の原理に反するものである。」

すばらしい意見です。

■誰もが平等に婚姻制度を利用できるために

婚姻の平等化に関して、具体的な行動が起きたのは1986年。あるゲイカップルが立法院に対して婚姻制度の創設を請願した所、「同性愛は公序良俗に反するので認められない」と回答されたそうです。

そこから31年、アジア初の婚姻の平等化に向けて、台湾はまた大きく一歩を踏み出しました。

同性婚が認めれらていない現行の民法が違憲とされたことで、台湾は次のステージに進んでいきます。前回のイベントで登壇されていた許(キョ)さんは「同性婚」という言い方ではなく「婚姻の平等」を目指すとお話ししていました。

「同性婚という言葉を使うと、同性以外の性別を排除するかたちになってしまいます。同性の婚姻ではなく、婚姻の平等に力点を置きました。」

今回の憲法解釈では"同性カップルが現行の民法では法的に保障されていない"ことが違憲という判断でした。今後は、セクシュアリティにかかわらず、誰もが平等に婚姻制度を利用できるための法整備が進んでいくことになると思います。

■日本でも議論を加速させていきたい

日本を見てみると、朝日新聞の世論調査では、同性婚を法律で認めるべきかについて、「認めるべきだ」が49%と、「認めるべきではない」の39%をやや上回っています。

また、女性では「認めるべきだ」が54%と過半数を占めていたり、18~29歳、30代では容認派が7割に達しています。(60代では「認めるべきだ」「認めるべきではない」がともに42%、70歳以上では「認めるべきではない」が63%と、年代のギャップが大きく出ています)

あるテレビ番組で同性婚について取り上げられた際に、出演していたデヴィ夫人が「愛し合うのは認めますよ。結婚は自然の摂理に反すると思う。結婚は子孫を残すことですから、それに反します」と同性婚に反対したことが報じられました。

今回の台湾の憲法解釈の中にもある通り、「結婚は子孫を残すためのもの」という考えは、子どもを持たない・持つことができない異性カップルはどうなるのかとか、シングルで子どもがいる人、高齢で結婚した人、いろんなものを見落とすことになります。婚姻した一方が子どもを作れないからといって婚姻が無効になることもなく、合理的ではありません。

また、「自然の摂理」という話もよく出ますが、自然界ではライオンやキリンやイルカなどなど、数多くの動物で同性愛関係が確認されています。例えば雄同士のペンギンで子育てをしていたり、性的指向の話ではありませんが、ファインディングニモでおなじみのカクレクマノミは雄から雌に性別が変わったり、自然界でも「性のあり方」は様々なのです。

まだまだ日本では同性婚についての議論が十分にされているとは言えません。

アジア初の婚姻の平等化を目指して、台湾の大きな前進を祝福すると共に、日本での議論も今後もっと加速させていきたいと思います。