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東京オリンピックに関わる企業「LGBT施策」が必要な理由

2017年04月18日 22時34分 JST

先月だけでも「KDDIが社内の同性パートナーを配偶者と指定できるようになった」とか、「キリンがトランスジェンダーの社員を支援し、性別適合手術などのために最大60日間の有給休暇を取得できるようにした」「日本オラクルが同性カップルや事実婚カップルにも異性婚の場合と同等に慶弔金や育児・介護休暇、傷病休暇などの福利厚生を適用する」など、企業のLGBT施策のニュースを見ることが多くなりました。

2020年東京オリンピック・パラリンピックを前に、こうしたLGBTに関する企業の施策が今後もっと増えていくことになりそうです。その理由のひとつは、3月24日に東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が策定した「調達コード」です。

■ オリンピック憲章「性的指向による差別の禁止」

「調達コード」とは、東京オリンピック・パラリンピックに関係する物品やサービスなどをどこから調達するかというガイドラインのようなものです。

調達する先の企業もこのガイドラインに沿っている必要があり、その「企業」というのは、商品を製造していたりサービスを提供している企業だけでなく、例えばその材料を作っている企業や、ライセンスを受けている企業まで、いわゆるサプライチェーン全体に関わってきます。

では何故、その調達コードが企業のLGBT施策に関わってくるのでしょうか?

それは国際オリンピック委員会が定めるオリンピック憲章に「性的指向による差別の禁止」が明記されており、オリンピックの開催国はこれに準ずる必要があるからです。

3月24日に承認された「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会 持続可能性に配慮した調達コード」では、性的指向や性自認に関わる部分として以下の記述があります。

「組織委員会は、「このオリンピック憲章の定める権利および自由は、人種、肌の色、性別、 性的指向、言語、宗教、政治的またはその他の意見、国あるいは社会のルーツ、財産、出自やその他の身分などの理由による、いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない」というオリンピック憲章の理念を強く支持する。」

○差別・ハラスメントの禁止
サプライヤー等は、調達物品等の製造・流通等において、人種、国籍、宗教、性別、性的指向・性自認、障がいの有無、社会的身分等によるいかなる差別やハラスメントも排除しなければならない。

○社会的少数者(マイノリティの権利尊重)
サプライヤー等は、調達物品等の製造・流通等において、民族的・文化的少数者、性的少数者(LGBT等)、移住労働者といった社会的少数者(マイノリティ)の人々の権利を、他の 人々と同様に尊重し、それぞれの特性に応じたプライバシー保護にも配慮しつつ、これらの 人々が平等な経済的・社会的権利を享受できるような支援に配慮すべきである。

○雇用及び職業における差別の禁止
サプライヤー等は、調達物品等の製造・流通等に従事する労働者について、人種、国籍、 宗教、性別、性的指向・性自認、障がいの有無、社会的身分等による雇用や賃金、労働時間その他労働条件の面でのいかなる差別もしてはならない。

つまり、東京オリンピックに関わる物品やサービスなどを調達(購入)する際は、この基準=調達コードを守っている、性的指向や性自認による差別・ハラスメントを禁止している企業から集める必要があります。

しかも、製品を供給している企業だけでなく、その材料を作っている企業やライセンスを受けている企業など、関連企業全てに当てはまります。

具体的にどういうことが必要になってくるかを考えてみると、例えば性的指向や性自認に関わる差別を禁止することを就業規則に明記したり、社内でLGBTに関する研修を実施したり、業界内でガイドラインを整備などが挙げられます。冒頭のKDDIやキリン、日本オラクルといった企業のような施策もこれからどんどん増えていくでしょう。

2017年2月に出された経済同友会の「ダイバーシティと働き方に関するアンケート調査結果」では、対象の903社のうち、LGBTに対する施策を実施している企業は39.7%でした。実施している企業では、「相談窓口の設置」、「社内研修・勉強会の実施」 「差別禁止規定の明文化」等が特に効果を発揮した施策として挙げられています。

最近は塩崎厚生労働大臣も、差別をなくして働きやすい職場環境が大事だとし、ハラスメントをなくしていくべく努力する旨を国会で述べています。

東洋経済は毎年CSR調査でLGBTの取り組みに関するアンケート調査を実施していたり、こういった調査も増えていくでしょう。今後、他の経済団体の動向も注目です。

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■ 東京オリンピックに関わる企業だけの問題ではない

今回の「調達コード」は、もちろんLGBTだけでなく様々な「持続可能性」に配慮した基準が示されています。また、今回はあくまでも東京オリンピック・パラリンピックに関わる企業が対象となるため、関係のない企業は特に調達コードを守る必要がないことになってしまいます。

LGBTは日本の人口の約8%、日本の6大名字「佐藤、鈴木、高橋、田中、渡辺、伊藤」ぐらい多いと言われています。この名字の人たちと出会ったことがない人はおそらくいないですよね。つまり、普段見えていないだけで、企業が提供するサービスを受ける人や、その企業で働く人、そこに関わる人の中にLGBTは必ずいます。

東京オリンピックの調達コードによって、業界を引っ張る企業が性的指向や性自認に関わる差別を禁止し、様々なLGBTに関する施策を実施して他の企業に良い影響を与えていくと良いなと思います。

しかし、意識のある人や企業に期待し、待ち続けている間にも、当事者の中には就職活動で傷つけられたり、職場で不当な扱いを受けて苦しんでいる人がいます。

日本にはまだ性的指向や性自認に関わる差別やハラスメントを禁止する法律がありません。職場や学校、医療など、あらゆる場面でそういった差別・ハラスメントを包括的に禁止する法律が求められます。